青い海、青い空、虹の向こう
ここはね、すべての色が1番美しい場所なんだよ
車椅子の男の子レンは、真っ白な病室というアトリエの窓から
外を指差し笑った
窓の向こうは、どこまでも続く青い空と青い海が広がっている
レンは、生まれつき体が弱く自由に歩く事もできません
でも彼の指先から生み出される絵の具の色は誰よりも自由で
力強い生命力に満ち溢れてました
僕が死んだらね、あの空と海が溶け合う虹の向こうへ行く
んだ。そこには痛みも悲しみも何も無い。だから僕が居なく
なっても誰も泣かなくていいんだよ
それから間もなく向日葵が咲き誇る夏のある日、レンは静かに
皆の見守る中で旅立ちました。12歳というあまりに早過ぎる別れに
母親ミサコは、悲しみの中へ突き落とされました
どうしてレンが・・・あんなに優しくて一生懸命生きてたあの子が
何故・・・
主を失った車椅子がミサコを見つめ、見守っています。それは
すぐそこにレンが座っていても不思議に思えない程の自然さ
ある雨上がりの午後、ミサコはレンの書き掛けのスケッチブック
を見つけました。レンが亡くなる直前まで描いていた大きな虹の
架け橋。優しい眼差しでスケッチブックと向き合うレンの姿は
ミサコの胸に焼き付いてました
溢れた涙を拭った指先でページを捲ろうとしたその時です
涙に濡れた絵の具が灰色から鮮やかな青色へと姿を変えた
のです。レンが好んで使っていた特殊絵の具がミサコの涙と
体温で灰色だったキャンバスがみるみると青色へと姿を変えて
いったのです
キャンバスのその青い空の下、車椅子に座るレンの小さな背中が
遠くを見つめるかの様に描かれてました
レンは、分かっていたのね。もう長くない事を
あの大きな虹を渡る日が近づいてきてた事を
賢かったもんねレンは
ミサコが窓から外を眺めるとレンが描いた虹そのものがソコに
掛かっていました
レン、天国では元気いっぱい走り回れるね
その虹の向こうで待っていてね
お母さんもいつかレンの虹を渡るよ
その時は、力いっぱいお母さん抱きしめてね
溢れ落ちる涙にもレンの虹が反射していました
その中にミサコはレンの笑顔を見た気がしました。
どんなに悲しい出来事の先にも必ず空と海を繋ぐ美しい虹が掛かります
大切な人は、形を変えて今もあなたの進む道を温かく見守っています
それはいつか再会できるという約束




