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観察記録3

 朝食を済ましてしばらく経った頃、ようやくルルセラに呼ばれた。

 

 服も髪も、整えられていて、見た目は噂通りのお嬢様に戻っている。表情は、ムスッとしているが。 

「さっきのは……たまたま、疲れて座ってただけです」

 

 急に、言い訳をされた。実は、内心ではよほど恥ずかしく思っていたのだろうか。

 

「それと、前任者が急に辞めて、引き継ぎ資料がありません。私は、進捗を確認してから後任者を探すつもりだったのに、お父様が勝手に早々に後任者を決めてしまったので」

 

 ルルセラは、腹立たしそうに言った。それから悩ましげに眉を寄せる。

 

「いや、こんなこと言われてもあなたも困るでしょうけど……でも事実、今あなたに振れる仕事がありません」

 

 困る、というかなんというか。そもそもこの流れは全て、マスターによって仕組まれたものだ。困っているのはルルセラの方だろう。で、昨日は仕方なく俺を追い出した。……そして元凶たる俺は、それを見て、性格の悪い女だなあ、と思った、という……。

 

 だけど、一つ言い訳をするなら、引き継ぎ資料がないのは俺たちのせいじゃない。進捗確認を怠った上官にも問題があるのかもしれないが、それより何より、当人の怠慢のせいだ。どこまで進んでいるか傍目にわからないなんて、どういう仕事の仕方をしているんだ。

 

「でも、前任者に振っていた仕事の内容は、把握されているのでしょう?」

「それは、もちろん」

「であれば、進捗は私の方で確認しますから」

 

 そう言って微笑んでみせると、「え、そう?」と言って急に申し訳なさそうな顔になった。

 

「じゃあ、お願いして良いですか?」

「もちろんです」

「わからないことがあったら、聞きに来て下さいね?」

「はい」

「前の人、本当に、急に急に辞めてしまったから……」

 

 さっき聞いた話を、念押しのように繰り返された。そんな風に言い訳するなんて、相当ひっちゃかめっちゃかな状態なのだろうか。それで、俺が怒ると思っているのだろうか。あるいは、俺以外の誰かが……?

 

 いや、余計なことを考えるのはよそう。今は、仕事だ。一番重要なことだ。今の関係上、仕事の良し悪しこそ、信頼を築く上で最も重要なことだ。

 

 

 

 

『ホサギョウム カイシ』

 

 一応、マスターに一報を入れておく。

 

 別に報告する程のことでもないし、どうせ返事もないだろうが、後でああだこうだと文句を言われても困る。

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