第6話 第一村人発見?
目標:人と会う・文明を感じる・温かい食事を食べる
星のお告げに従い、山小屋の扉を開けて真っ直ぐに進んでいく。
だが、実際に直進しているかは怪しいもので右も左も同じような森の景色の中、方位磁針もなく進行方向をつかむことは一般人の僕には不可能に近かった。
唯一の救いは遭難の危険性を軽んじずに常にマーキングをしながら進んでいた点だろう。これによって山小屋に帰る、という選択肢を捨てずに済むのは精神的にも大変ありがたいものだった。
「どのくらい歩いたかな。ここら辺りで誰かに遭遇できないと結構キツいわけだけど…。」
山小屋を出てからすでに体感で四時間程度が経過していた。そろそろ次の方針を固めないと日が沈む前に拠点の山小屋へ戻れなくなる。などと思いながら進んでいると、少し先からせせらぎのような音が聞こえてくる。
音の聞こえるほうへ行くと湧き水が岩の亀裂から細々と流れ出していた。
「とりあえず今後の方針を整理する必要もあるし、休憩ついでにここで水を確保しておくか。」
〈ボックス〉を唱えると山小屋にあった水差しを取り出す。
じつは二週間の実験を重ねた結果、ボックスを開いた状態で物を触れると自分の意志で触れたものをボックス内に入れることができるということが分かったのだ。しかも水差しに水を入れてボックスに仕舞うと水を保存可能。ナイスな便利機能である。そこでナイフとフォーク、コップと水差しを持ってきていたというわけである。
ただし、ベッドや書斎机は入らなかった。容量か何かの制限があるみたいだが、深く考えてもわからないことは時間が浪費していくだけなので仕方がないと割り切ることにしていた。
まぁ制限がなければ、そもそも山小屋をボックスに入れていけばよいという発想は誰でも思いつくことだし、あの人が言っていた世界を管理するシステムに関わってるのかもしれない。
頭のリフレッシュにそんなことを考えながら湧き水を汲み、水差しをボックスに仕舞うと今度はコップで湧き水を汲み、くいっと飲む。
湧き水とはいえ、安全なものかは鑑定しても『湧き水』としか出てこないため分からない。なので、小川のときと同じようにあまり多くの量は口に含むことはせずに飲み込み、手頃な岩の上に座る。
「ふぅ。この数日で体力が付いたとはいえ、さすがにここまでの遠征は初めてだな。日が落ちる前に余裕をもって帰ってこれるように探索していたし、夜の森がどんな感じなのかわからないことが一番の懸念か。
野宿云々の前に夜行性の肉食動物なんかがいて襲われでもしたら一巻の終わりだよな…。やっぱりここは山小屋へ戻るほうが無難か。」
と、何気なく俯いていた視線を上げると森の奥で何かが煌めいているのが見えた。
何があるか分からない森の中。それも異世界の森の中である。叩きすぎくらい石橋を叩いて渡っていっても大げさにはならないだろう。
どうするか逡巡したあと、意を決して警戒しながら確かめてみることにした。息を潜め、なるべく日陰を通りながら光のほうへと足音を殺して近づいていき、幹に背中をつけながら木陰からそっと覗きこむ。
そこには湖があった。それも鬱蒼とした森の中でここだけ別空間に迷い込んだかのような幻想的な風景があったのである。風で揺れる水面が木々の間から差し込む日の光で煌めき輝き、雄大で静かな湖にわずかな動きを与えていた。
周囲の木々はこれまで歩いて見てきた森の木々よりも一層青々と茂り、そこに意思が宿っているかのように生命の伊吹を感じさせる。対岸は霧により良く見えないものの、その霧がより一層この湖畔を神秘的な雰囲気にさせていた。
葉の擦れ合う音と肌を包むようにして当たる風がとても心地よい。
しばらく何も考えず景色を眺めながら癒されていると突然何かの気配を感じる。気配を察した瞬間、再度幹に隠れて様子を窺う。
緊張しつつも二週間のうちに練っておいた獣に襲われた際の対処法を頭の中で反芻しながら周囲を警戒していると、湖の向こう岸から何かが迫ってくるのがわかった。
霧の中から現れたそれは、僕が知っている人間のようでその人間とは異なり、耳が尖り透き通るような白い肌に白金髪をした女性だった。
その美しさは筆舌しがたいほどに魅力的で思わず見入ってしまうほどであった。
ぼぅっと立ち竦んでいると女性はこちらに気づいたようでハッとこちらを見てくる。いや、見てくるというよりかは睨んでくるが正しかった。
見惚れるまではよかったが、まずかったのは女性の姿であった。女性はなんと裸で水浴びをしている最中だったのである。
「…………。殺す!」
…………。えぇぇぇぇ!?
切り良くするために2/28 2:00amに次回【第7話 続・第一村人発見?】を連続投稿します。




