第5話 星のお告げ
それから二週間が経った。
山小屋のベッドは思いの外気持ちがよく、ぐっすりと眠ることができた。
伸びを一つすると起き上がり、山小屋の近くの小川に行き掬った水で口を湿らせる。本当は生水は怖いのだが、火魔法は加減の仕方がよくわからないうちは封印することにしているので我慢だ。ここ数日、量を制限しながら慎重に飲んでいたからか、幸いにもお腹を下すようなことは起きていない。
気づけば朝起きたら小川に行き、両手に掬った水を飲んでから水浴びをするのが僕の日課になっていた。
なお、髪は風魔法で乾かしている。
試しに〈エアブロー〉と唱えたところ頭が吹き飛びそうな勢いの風が掌から出てきて焦ったが、風を送り出す位置を調整してなんとか髪なら乾かせるようになったのだ。ちなみに体は完全に自然乾燥だ。日差しが強いから意外と乾くの早いんだよね。
「しかし、ここにずっと居ちゃジリ貧だよな。」
そう。初日は運よくラドという食材にありつけたものの、その後はラドどころか動物に出くわしていないのだ。まさか小川にも何の生物もいないとは…。
そのため、現在の主食はそのままの状態で食べることができる木の実や果物となっている。新生活二日目で偶然ラズベリーの群生地を見つけたのは大きかった。
二、三日はラズベリーで栄養を確保し、探索を続けて梨やクルミを見つけては食べ、騙しだましやってきていたがここ最近はそれも見つけにくくなってきていた。
何より温かいご飯と安心して飲めるものでお腹を満たしたいというのが本音でもある。文明がある場所にさえいければ火を使った料理にも出会えるはずだった。
やはりここは人が住んでいる場所へ行くべきだろう。しかし、マップもない中どうやって進んでいくか。
…………。そういえば才能の中に占星術っていう項目があったな。初めはペケっていう意味かと思っていたけど、よくよく考えてみたらこれって十ってことじゃないか!?何段階評価かは未だにわからないが、これが本当に十としたなら実は結構な習熟度なんじゃないだろうか。
「よし。ここは一か八かこいつに頼ってみるか!」
意を決して占星術を唱えてみることにした。
「…………。どうやって?」
占星術を使うにもどうやって使えばいいかわからん!!これはいよいよ終わったか、と思い始めた矢先に思い出す。
「ステータスのヘルプ機能に書いてるかも。」
実はこのステータス画面。ヘルプ機能がついてはいるものの、その内容は簡潔にしか書かれていないため不明点も多かった。そのため最初のほうこそ真剣に読んではいたが、四属性を見たところで飽きて確認をやめていたのだ。
とりあえず初日に試して分かったことは各項目の文字を読み上げても呪文として認識しない、という点。例えば火魔法なら『ファイアーボール』、風魔法なら『ウィンドカッター』などのより具体的な内容を声に発しないと発動しなかった。
本来ならガイドが教えてくれるのだろうが、生憎と僕のガイド様は絶賛引き継ぎ中らしく一向に姿を見せない。なので現在は、ありがちな技名やイメージしやすい単語を組み合わせるなどして試行錯誤している最中というわけである。
そんな数日間の苦労を思い返しため息を一つ吐くと、僕は『ステータス』を唱えて自身の占星術の項目をタップしてみる。
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【占星術】
今後の行く末を占う。
稀に向かうべき方向を示してくれる。
習熟度が高まるほど信頼度が増す。
使用するには『星の民に導きを』と唱える。
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なるほど、なるほど。使用方法はとりあえず分かった。善は急げ、ということで早速唱えてみることにした。
「〈星の民に導きを〉」
するとステータス画面と似たものが出てきて、今後を占った内容が浮かび上がってきた。
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【星のお告げ】
吉兆は南西にあり。
扉を出てひたすら真っ直ぐに進みなさい。
さすれば次への扉はすぐそこに現れるでしょう。
寄り道は厳禁。不穏な陰りあり。
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一部不吉な内容もあるが、とりあえずお告げはでたな。吉兆は真っ直ぐに進むこと。
日の出から日の入り、水浴びの最中や探索から帰ってきた際など、山小屋を軸として事あるごとに日の動きは観察していた。地球と同じだったら、が前提であったが、山小屋の扉が南西を向いている可能性については気づいていたので、このお告げの信頼度もそこそこ良さそうだ。
それに行き詰っている僕にはこれを信じてみる外にないというのもある。幸い朝ということもありまだまだ日は沈むことはない。思い立ったが吉日。善は急げと、探索する際と同様に樹木にマーキングしながら扉を出て真っ直ぐに進んでみることにした。
次は進展があるといいな…。




