第3話 続・初めの一歩
出鼻をくじかれました。
そっと扉を閉じると先ほどまで座っていたベッドまで戻って静かに座りなおす。
「…………。えぇぇぇぇ!?どういうこと?山小屋でホッとさせておいて落としてくるタイプ?やっぱあいつドSだったんじゃないか!?
ぽつんと立たされてなくてラッキー♪なんて、思っていた数分前の自分にあいつの見た目には騙されるな!と声をかけてやりたい!」
その後、しばらく山小屋で一人悪態をつくことになる。疲れていたんだな、きっと。一頻りストレスを発散させたところで現実に帰ることにした。
まぁそもそも街中に転生させるなんて言われてないし?最悪、村でもいいか、なんて甘い考えをしていたのは自分だし?…………。だからってこれはひどくない!?やばい、泣きそう…。
「せめてヒントみたいなのはないのか?
そうだ、きっとここに転生させた意味があるはずだ。」
そうして山小屋の中をこれでもか!というほど探してみるが、結果としては何もないの一言に尽きるのであった。
「あぁ…。これは遭難と同じなんじゃないか?食料らしきものもないし、一度死んで出直してこい。みたいな?すでに死んでますけどね、一度…………。」
途方に暮れる中、自虐を言いつつ、熱くなった頭を冷ますことにする。そう、これは頭を冷やすための儀式である…とほほ。
「せっかく異世界にきたのにな。」
と、ぽつりと小言をこぼしながら我に返ってみて、初めてこの世界に来る前までの恰好と違うことに気づいた。
新卒で新調したスーツはそこになく、革を鞣したような生地の服を着ている。ただ、申し訳程度にズボンにポケットがついているくらいのもので、これといって目新しさはなかった。そこそこ整ってはいるが現代人の僕としてはTシャツにスウェットを着るほうがまだ文明的だ。
革靴は靴底が木でできているものの、現代的なスタイルではなく雨が降るとすぐにビショビショになってしまうような作りをしている。
「これがこっちの人たちの普段着なのかな。」
と、思いつつ徐にポケットに手を入れてみると何かが入っていたことに気づく。手に取った感触的にどうやら紙が入っているようだ。
それをポケットから取り出し、折りたたまれた紙を開いてみると、そこには何やらメモ書きがある。言語の自動変換が効いているせいなのか、文章はすべて読めるものであった。
「【異世界の心得】。もしかしてこれからの行動のヒントを書いてくれてるとか?
さすがはガイド様!持つべきものは優秀なガイドだね。」
現金なものである。
そんなことわかってる!なんて一人ツッコミを入れつつ、手に持った紙を読んでみることにした。
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【異世界の心得】
一、ガイドのことは疑わないこと
一、ガイドの言うことには歯向かわないこと
一、一日一回ガイドを褒めること
一、頼れるガイドが説明した通り言語の自動変換は文字にも適用される
一、補助機能にはステータスと鑑定眼が備わっている
一、自身のステータスを確認する場合は『ステータス』と唱えること
一、鑑定眼を使用する際は『ルックアップ』と唱えること
一、その他の備わっている能力はステータスを確認すること
一、何もかもガイドに頼らず開拓する精神を持つこと
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なんか半分くらいガイドのことについて書かれてるな。
まぁこの八方塞がりを打開するにはこれに頼るしかないんだ。何もかも頼るな、とは書かれているがここは頼らせていただきます!そう思いながら【異世界の心得】に書かれていたステータスを見てみることにした。
「〈ステータス〉」
すると目の前に文字盤のようなものが浮かび上がる。まるでARのようだな、なんてことを考えながらその内容を確認する。
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名称:幸瀬柊
称号:駆け出し一般人
能力値:
身体 100
技能 80
幸運 30
才能:
火魔法Ⅳ
水魔法Ⅳ
風魔法Ⅳ
土魔法Ⅳ
陰陽法Ⅱ
隠遁Ⅴ
俊足Ⅴ
気配察知Ⅴ
黒魔術Ⅱ
白魔術Ⅱ
占星術Ⅹ
特化:なし
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おぉ、才能は結構潤沢に揃ってるみたいだ。ネーミングから何となく内容も察しが付くし、使いようによってはここで暮らす手助けになるかも。
それに比べると能力値はシンプルなんだな。などと、考えながら指でなぞってみるとそれぞれヘルプのような説明文が現れた。
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【身体】
基礎能力の総合値。
腕力・知性・俊敏に分かれる。
【技能】
才能を使用する際に影響する。
値が高いほど才能の威力が高まる。
【幸運】
高ければ高いほど良いことが起きる。
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なるほど。ということは、僕の身体は平均30、技能はそこそこ、幸運は残念って感じかな?
え?幸運は残念って、ここでも自虐ですか?
…………。まぁ何段階評価なのか分からないが、これだけ才能が揃っていれば何とかなるだろう。
とりあえずここから外に出ないと飢え死にである。兎にも角にも行動を起こす。思い立ったが吉日、これが僕の座右の銘だしね。
「そうと決まれば外に出てみるか。」
そうして意を決して改めて扉を開く。
これが僕にとって、本当の初めの一歩であった。




