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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉


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第1話 はじまり

本編はじまりはじまり~

 目を開けると明るい場所にいることが分かった。


 周りを見渡せば『白一面』と表現すればよいか、文字通り『何もない空間』と言えばよいか迷うところであるが、とにかくだだっ広い場所にぽつんと立っているのは理解できる。


「ようこそいらっしゃいました。」


 そう声をかけられて、声のしたほうを向くと一人の女性が佇んでいた。


「いきなりこんな場所に来られてさぞ困惑されていることでしょう。ここは転生の間と呼ばれる場所であなた様のいた世界とは隔絶された異空間となっています。

 急にお呼びだてしたことはお詫びいたします。しかし、これからお伝えする話は死んでしまったあなた様にとっても良い話だと思います。」


「えっ!?死んだんですか、ぼく!?あなたと話しているのに?」


 驚きのあまり目の前の女性を責め立てるように大声を出してしまう。それも自分で引くほど間抜けな声で。


「えぇ。そんな反応になってしまうのも無理ありませんね。順を追ってご説明します。」


 そう言いつつ女性は手を翳すと女性の目の前に光る盤面のようなものが現れる。どうやらそれが資料のようでつらつらと記載事項を読んでいく。


「あなた…幸瀬柊ゆきせしゅう様は会社の帰り、一人迷子になっていた子供を交番へ届けた帰りに通った公園で突然刺され、それが原因で死亡しました。」


 …………そうだ。

 あれは会社で上司に叱られた後だったからよく覚えてる。というか、こっちからしたら今さっきのことだ。覚えていて当たり前というものだろう。


 そして、あのときはひどく落ち込んでいたのも一緒に思い出した。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 僕は入社して少し経った頃から自分をリーダーとしたプロジェクトを任されていた。新卒で入社した会社だったため社会人一年目にしての大抜擢といえば聞こえはよいが、他の会社ではまずありえないことだろう。それでもこれも上司からの期待の表れだと思いがむしゃらに仕事をこなし、任されていたプロジェクトはうまく進んでいた。


 もう少しで大口の受注が決まると思っていた矢先に上司からプロジェクトの担当変更を言い渡された。元々は先輩のプロジェクトだったものが頓挫しかけていたタイミングで僕と交換されたのだ。それで失注したのはお前のせいだ!と激怒されても困ってしまう。


 僕が進めていたプロジェクトはその失注の原因となった先輩へと振られた。そして、僕が進めていたはずのプロジェクトは本年度の最高収益をたたき出すことになる。これによって僕の評価が上がればまだよかったのだが、実際には先輩の評価だけが上がり僕はというと失注した出来損ないというレッテルだけが会社内に広まっていた。


 そこに追い打ちをかけて、今日の帰り際の上司からのお小言である。落ち込むのも無理もないことだった。


 そんな中で自宅までの帰り道を歩いていると向かいの歩道を一人で歩いている少女が目に入る。その少女はキョロキョロと何かを探すように歩いており、不安を隠すことなく今にも泣きだしそうな顔をしていた。誰の目から見てもこれが迷子であることは明確だった。


 周りに助けられる人間が誰もいないことを確かめると僕は向かいの道へ渡り少女へ声をかけた。聞けば少女は親の帰りが遅いので探しに出たは良いものの、自身も帰り道が分からなくなってしまったとのことだった。


 これでは少女宅まで送り届けることも難しいと考えた僕は我が家からは少し遠のくが、ここから最寄りの交番まで連れていくことにした。思えばこの選択が今に繋がっていたのだろうが、それでも不思議と僕に後悔はなかった。他人とはいえ、小さな子供が僕のような目に合わなかっただけでも行動した甲斐があったというものだ。


 話は戻るが、無事に少女を交番へ送り届けると少女の両親が迎えに来るまで待ってから帰路へつくことにした。


 慣れない道を歩きながらも僕は達成感のようなものを感じていた。あれだけ叱られたあとではあったが、良いことをしたという思いが自尊心を回復させていたのもある。それがなければ、或いは今の状況も回避できていたのかもしれない。


 進むにつれて街灯の明かりが段々と無くなっていき、真っ暗な公園に差し掛かったころに真向いから人が歩いてくるのがわかった。暗がりであったことと別のことに思考が傾いていた僕はその人物が鈍い光を放つ何かを持っていたことを見落としてしまう。


 そして、すれ違い様にその人物は僕へぶつかり駆け足で去っていった。初め何も感じなかった僕は数舜して体が生暖かいことに気づく。


 徐に自分の体を見てみると暗がりでもわかるほどに赤い液体が体から流れていた。そのことに気づくと同時に激しい痛みで立っていられずその場に倒れこんでしまう。


 そうして意識が朦朧とする中でこれまでに頑張ってきたことや嬉しかったこと、家族の思い出が蘇る。これが走馬灯というやつか、と考えながら、先ほど別れた際に見せた少女の笑顔を思い出したところで意識は完全に途切れた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「幸瀬様はこれまでに数々の善行をなさっています。

 いじめられていた同級生を助け、重い荷物を運ぶご老人の代わりにご自宅まで運んであげ、パンクして困っていたご婦人の自動車のタイヤを交換して差し上げました。

 学生時代にはご自身が恋心を抱いていた女性を親友が好いてしまい、身を引くどころか親友との仲を取り持っても差し上げていますね。」


 …………やめて。もう、やめたげて…………。聞いてるこっちが恥ずかしいから。

 なんか黒歴史聞いてるのと同じ感覚になっちゃってるから。というか、今あげた項目って善行に入れていいんですかね?


「幸瀬様がなされた数々の善行を鑑みまして、神はチャンスを与えてくださいました。」


「…………チャンス、ですか。」


「はい。幸瀬様には、別の世界へ行っていただき世界の救世主となっていただきます。」


「…………。…………はぃ?」


「ですから、世界を救っていただくと言ったのです。聞こえなかったのですか。耳くそ詰まってるんじゃありませんか。」


「や…………いや、聞こえました。聞こえましたが、意味が分かりません。なんですか、世界を救うって。僕、運動もそこそこの一般人ですよ!?」


「そこは問題ありません。これから行く世界では幸瀬様の能力は常人よりも優れたものとなりますし、幸瀬様しか持っていない特別な才能も与えられるのですから。」


「特別な才能…?」


「そう。異世界から転生された皆様にはもれなく神からのギフトが与えられます。これによって転生者は富と名誉を欲しいままにしているのです。

 さぁ!幸瀬様も伝説の一歩を踏み出すのです!もし私の味方になるなら世界の半分をお前にやろう!というやつです。」


「いや、最後のはラスボスが言うダメな誘惑ですから!というか、何で僕が異世界に行くこと決定!みたいなノリで話してるんですか!?」


 僕がそう言うと女性はあからさまに落胆の色を醸し出しながらイラッとした表情を浮かべてため息を吐く。そんな表情も妙に整った顔でされると何故か魅力的に感じてしまうから不思議だ。


「幸瀬様。これはチャンスと言いましたよね?私言いましたよね。耳くそが詰まってるだけでなく脳みそに酸素が行き渡ってないんですか。それともあれですか。叱られるためにわざとやってます?ドMですか。幸瀬様はドMでしたか。」


 ストレスを発散するかのように美女が捲し立てる。

 そんなことを言うあなたはドSですか?と聞きたくなったが、余計に話がこじれるのでやめておいた。


「いやいやいや!?いきなりこんな場所にきてそんな話をされれば誰でも戸惑うでしょうが!ちょっと整理するので待ってくださいよ。」


 美女を茫然と眺めながら僕は動揺していた頭をゆっくりと落ち着かせていく。


「チャンスですか。あなたが言っていた別の世界へと行くことによって僕に何のチャンスが生まれるんですか。」


 美女はようやくそこに気づいたか、と言わんばかりのドヤ顔を浮かべながら答える。


「今回、神は善行を成し遂げた幸瀬様に対し感謝の意を込めて、元の世界へ戻るチャンスを与えたのです。」


「元の世界、というと僕がさっきまでいた世界のことですか。」


「そうです。不幸なことに亡くなってしまった幸瀬様ですが、魂はまだ生きています。なので、幸瀬様の魂を一時的に別世界へ移すことによって魂を保護し、別世界で偉業を成し遂げることで元の世界に生き返るエネルギーを蓄えるのです。要は別世界でも善行を重ねればよいのです。」


 美女の言うことはなかなか頭に入ってこないが、善行を重ねれば刺される前に戻れる、ということだろうか。先ほど連ねた善行とは規模が全く違う気がするが気のせいだろう。そう、きっと気のせいだ。


「言いたいことはわかりました、とは完全には言えませんが何となくつかめたような気がします。」


「よろしい。本来であれば転生神様が直接説明される内容ですが、諸事情で留守にしているためガイドの私からこれからのことをご説明しましょう。」


 どことなく偉そうな態度になったガイド様は続けて今後のことを話し始めた。


「幸瀬様にこの世界で成していただくのはバグの修正です。」


「…………バグ?」


「コンピュータでいうところのバグですよ。世界は多岐にわたり展開されていますが、それを管理している神々も暇ではないので世界ごとにシステム化がなされています。そのシステムの中でも世界を滅ぼしかねない存在、それがバグです。端的に説明すると魔王討伐ですね。」


 さらっととんでもないことを言うガイド様を見ると言うことはすべて言い尽くしたような顔つきをしていた。しかし、僕としては不平不満を述べたいのも無理ないところだ。


「軽くバグの修正って言いましたけど魔王討伐って命かけるんですよね!?そんなの絶対嫌ですよ!」


「生き返るためのエネルギーがそんなに簡単に溜まると思っているのですか。謂わばこれは等価交換なのです。命をかけるのも当然じゃありませんか。

 それに、ただの一般人を修羅へ解き放つわけではありません。先ほど申し上げた通り、幸瀬様には常人離れしたスペックと特別な才能が与えられるのですから魔王討伐も言っちゃえば楽勝ってもんです。」


「そういえば気になっていたんですが、さっきから言っている特別な才能って何ですか。」


「幸瀬様専用の能力のことですよ。能力は大きく分けて二つあり、補助機能とメインスキルが付与されることになります。

 補助機能はこの世界になじむための機能で、具体的には言語の自動変換と転生者専用スキルが主な内容になります。言語の自動変換は文字を含めた文化の解釈を自動で行い、幸瀬様が慣れ親しんだ言語へと変換する機能です。

 転生者専用スキルとは言語変換では得られない情報を補う機能であらゆる場面で役立ちます。そして、メインスキルはまさに幸瀬様専用のもので転生者が望んだ機能を一つだけ選べる、というものになります。

 ちなみに転生特典として、転生者には個別に『ガイド』という存在を与えられます。どうですか?至れり尽くせりでしょう?」


 またしても美女のドヤ顔を見つめながら、息つく暇もなく説明された内容を僕は頭の中でかみ砕いていく。


「なるほど。説明の終わりに『ガイド』が付くと言ってましたけど、それってもしかしてあなたのことですか?」


「チッ…君のような勘のいいガキは嫌いだよ……驚かそうと思ったのに…。」


 小声だったが確かに聞こえた。

 完全に悪態付きましたよね、あなた。というか、絶対ジャパニーズカルチャー好きですよね。


「そうです。本来『ガイド』というのは小動物などの形で転生者をサポートしていく存在ですが、幸瀬様は神が見込んだ存在ということで特別に私自らがサポートさせていただくことになります。

 喜んでいいんですよ?というか歓喜しなさい。」


「もはや上から目線をこれ見よがしに出してきましたね。

 だけど、いきなり命を懸けろと言われても悩んでしまいます。そもそも戦うなんて恐ろしいですし。少し考える時間をくれませんか。」


「そんな時間は皆無です。幸瀬様が転生するのは確定事項なのでさっさと決心して世界を救ってきてください。」


 ぶっちゃけやがったな、こいつ!とはいえ、ここでいくらゴネてもこの空間から出られる確証はない。彼女の言うことを信じれば一度はすでに死んだ身なわけで、背に腹は代えられないというのもあった。


「わかりました。あなたの期待に応えられる自信は正直ありませんが、善処はしたいと思います。」


 僕がそう言うと向かいに佇む美女は自然な笑みを浮かべる。

 それは女神かと見まがうほどに魅力的であった。


「ありがとうございます。それでは早速転生の儀を始めます。

 ちなみに私は引き継ぎがありますので、後から追いかけることになります。とりあえず目覚めたあとは幸瀬様の思うままに世界を回ってみてください。」


 そう言うと美女は僕のほうへと手を向ける。すると自分の足元から淡く輝く円形の光が浮かんでくるのがわかった。いわゆる魔法陣というやつか、と不思議とすんなり納得しながら光に包まれて何かに引っ張られる感覚を感じた。


◇◇◇


 そうして、一際光が強くなり空間全体が光に満ち溢れると白一面の空間から幸瀬柊は消えていった。


「どうか、この星と星の民をお救いください。」


 一人残った美女がつぶやいた祈りの言葉は幸瀬柊に届くことはなかった。

ドSガイドとドM主人公…?

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