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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Salò

「あまり面白く無かったね」


弟が白く細い指で握ったペンで、一覧の『万引き』の項目に横棒を重ねる

僕たちは春休みを利用して、この世の総ての罪を実践しようとしていた


「予測にはなるけど」

僕は、ずれていた眼鏡を直しながら言う

「万引きは『行為』よりも、その時の精神状態を楽しむ事を重んじるんじゃないのかな?」


弟はつまらなそうに「次は何をやるの?」と僕に向き直る


一覧の「殺人」「食人」 の欄には既に横棒が引かれている

妹の部屋からは、今でも部屋を埋め尽くす量の蝿の羽音が聞こえていた


「次は、『喫煙』『飲酒』辺りかな…」


「一度にやってみる?」


僕はにっこりと弟を視た

弟の表情はそこまで面白そうでは無かったが、反対もしなかった


僕はシャツの胸ポケットから紙煙草を取り出すと、それを咥えて軽く息を吸い込みながら、テーブルの上に有ったマッチで火を付けた


理由は解らないけど、マッチで付けた煙草が一番美味しい

久しぶりだったから少し頭がくらくらした


眼を閉じてゆっくりと煙を吐き出したあと、僕は煙草を弟に手渡した


「吸い込みながら肺に入れるんだよ」


弟が、気難しい表情で煙草に唇を合わせる

深呼吸の様に小さな喉と胸が動く

そして彼は、泣きながら激しく咳き込み始めた


「初めての時はそんなもんだよ」


僕は、躰を『くの字』に曲げて苦しむ弟の背中をさすった

弟の躰は熱く柔らかく、丸まって泣きじゃくる姿は猫の様に可愛かった


一通り涙と唾液を吐き終えると、弟は腹立ち紛れに煙草を床に叩き付けた

さっきのマッチも火が付いたまま床に捨てていたので、僕は「この部屋はいつか燃え始めるかもな」と他人事の様に考えていた


「よし、次は飲酒だね」


僕はズボンのポケットからラムの小瓶を出すと、蓋を外して勢い良く飲んだ


度数は50近く有るから、通常ならこんな飲み方をしたら無事では済まない

でも、舌に乗せず直接喉に流し込めば一気飲みが出来る事を僕は知っていた


「飲んでみて」


弟に瓶を渡す

飲酒をした事が無い弟は、水でも飲む様な勢いでラムを飲み干して倒れ込んだ


弟の胸に耳を当てる

素人判断にはなるけど、中毒を起こしたり失神している訳ではない様だった


僕は弟の口元に耳を近付ける

「お前、まじでさあ…」弟が、息も絶え絶えな掠れた声でそう言っているのが聞こえた


「可愛い…」

思わず僕は、弟の唇に自分のそれを重ねていた

抵抗されるかと思ったけど、弟は眼を閉じて躰を震わせながら「んっ…」と吐息を洩らした



「まだリストにも書いてない事、してみようよ」


倒れた弟の頬に手を当ててこっちを向かせながら、僕は言った

弟が濡れた瞳で視線を逸らす


僕は部屋の戸棚から、瓶を取り出した

中には事前にパッケージから出し終えていた、市販風邪薬の錠剤が隙間無く詰められていた


「一緒に、これ飲んでみようよ!」


弟が僕を視て「お前、まじでさあ…」と言う

アルコールのせいか、顔が赤かった

床の焼けるぱちぱちという音が聞こえる

僕はとても愉しかった

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