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神聖国にて case-18

その後、彼らは男の推測通りすんなりと再開することができた。


「シルファ様、ありがとうございます。」

皆、助けにきたシルファたちに感謝の意を示したが、シルファは特別皆から尊敬を集めている。


「いえ、貴方たちが無事なのも、私たちが無事なのもパプリカのおかげよ。」


彼女がそういうとパプリカは注目を集めたが、普段パプリカに対して差別的な対応をとっている子たちのグループだったために、罰の悪そうな雰囲気がでている。


「パプリカ...ありがとう。」

キャロラインだけは、直接パプリカにお礼を言った。彼女の活躍を側で見ていたからだろう。


「いえ、当然のことをしただけよ。」

パプリカは毅然と答えた。


一同が安堵すると赤髪の男がパプリカに尋ねた。


「おい、最初はなんの冗談かと思ったが、本当に団体さんだったんだな。」


「最初からそう言っている。」


「お前たちはそのなんとか学園だか、学校の生徒だってんだろ?」


「ええ、貴方は本当にこの国の人間なの?」


「ああ、正真正銘生まれも育ちもこの森の近くだぜ。」


「そう。」

シルファは二人の会話に耳をすませていたが、タイミングを見計らって今後の話をし始めた。


「皆よく聞いて、私たちは実習のために課外授業にでたけれど、魔獣に遭遇するなんてのは想定外よ。

だから本来はルール違反だけど、皆で森をでましょう。」


皆はその意見に賛成した。こんな場所にこれ以上居たくはないのだろう。


「ねえ、貴方お名前は?」

シルファは赤髪の男に尋ねた。


「俺はジークハルトだ。ただのな。」

なにやら含みがありそうな様子だったが、あまり構わずに通した。


「ジークハルトお願いがあるの...私たちを街まで護衛して欲しい。

幸い私たちはかなり裕福な家庭の出身だわ。お礼ならかなり弾ませてもらうから。」

シルファは自分の立場を十分に利用した交渉にでる。


ジークハルトはシルファからのお願いを聞くと小さく鼻を鳴らして答えた。

「バカいっちゃいけねえ。俺はこんなところに女子供を置いていけるような男じゃねえよ。

みくびってもらっては困るぜ。」

シルファのような女性に頼られたのが嬉しいのか。彼は少し上機嫌になっているようだ。


「だが、移動は明日からだ。森を抜けるには二日はかかるからな。」

彼は至って冷静らしい。皆が落ち着きを取り戻すと疲労困憊の一同は小さくまとまって眠りについた。


「なあ、起きてるんだろ。」

ジークハルトは皆が寝静まったのを確認するとパプリカにのみ話しかけた。


「ええ。」


「お前たちは本当は何者なんだ?」


「学生よ。」


「そうかい。あくまでシラを切るってんだな。」


「...本当に学生なのよ。どうしてそうも疑うの?」


「何故かって?」


「ええ。」


「それは、俺が生まれてこの方この国に学校なんてものができたことは一度もないからさ。」


「そうなの。」


「まあいい。話題を変える。お前はこの中でも異質な存在だろう?獣人だし、身体能力や戦闘能力も段違いだ。どうしてなんだ?」


「貴方見かけによらず詮索好きなのね。」


「嫌な言い方をするやつだな。」


「人には知られたくないことの一つや二つはあるでしょ?」


「こちらの事情もお見通しってわけか?」


「今日はもう休みましょう。疲れたわ。」


ジークハルトはそれ以上は何も言わなかった。少しだけ早い就寝ではあったが、パプリカも警戒心を少しだけ緩めて微睡んだ。


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学長室に課外授業に参加した生徒たちの親が怒鳴り込んできたのは、生徒たちの失踪が判明してから、すぐのことであった。

ほとんどが由緒正しい家か権力を持つ家の子なだけあって、只事ではない様子である。



「ネフェリム学長、説明を求めます。娘はどこに消えたのですか?」

学長に詰め寄っているのはローズマリーの母である。普段は淑女然として、取り乱すことはない彼女であったが、一人娘の失踪に非常に動揺をしているようである。


「現在、宗教騎士団が全力で捜索にあたっていますから、心配しないでください。」

ネフェリムは動揺を宥めるようにそういった。この国での宗教騎士団の存在は非常に大きい。

なにせ皆が奇跡を使用することが出来、外国の戦争に手を貸した場合には必ず勝利を携えて凱旋してみせる

からである。


実際、生徒たちの失踪が判明してから、ネフェリムに苦情を言いに来た者の多くが、宗教騎士団が捜索にあたっているというだけで、踵を返したほどである。


「それに、あの森はサバイバルをするには少々手強いですが、特に危険な魔獣や生物が存在しているわけではありません。本来の対象範囲から生徒たちが外れたところにいるだけです。」

ネフェリムは丁寧に彼女を諭す。その後、2.3のやりとりを経て、彼女も夫に支えられて帰っていく。



学長室に静けさが戻ってから、独り言を呟く。


「奥さんあんたが正しい。いかに宗教騎士団といえどもみつかるはずがないさ。だってあの子たちは...」

そこまでいうとネフェリムはお気に入りの葉巻を取り出すといつも以上にゆっくりと煙を楽しんだ。


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