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神聖国にて case-17

パプリカがシルファたちを視認したのは、シルファの奇跡が砕け散ったタイミングとほとんど同じタイミングだった。


ボス級の魔獣の遠吠えを聞いたパプリカは、スリングショットを懐から取り出して大きく引き絞る。


遠吠えから一拍を置いて、一斉に飛びかかった魔獣たちは、局所的には結界に行手を阻まれるが先程のような効果はない。


先頭で奮戦するモニカにその牙が届こうとした時、パプリカの攻撃が魔獣をとらえる。


「間に合った。」

パプリカの攻撃は正確無比である。


「パプリカ!」

パプリカの間一髪の登場にシルファは思わず、大声で叫んだ。


赤髪の男も手慣れた対応で魔獣を相手取っている。


「危なかったな。嬢ちゃんたち。」

先頭に立っていたモニカを庇うように前に立つとじろりとボス級の魔獣を睨みつける。


「こんなところでお前に会うなんてな。」

男は因縁深そうな執着を見せると槍を中段に構える。


魔獣は男と反時計回りにゆっくりと動き、まるで品定めでもするかのようにじっくりと男の動きを観察している。群れの魔獣たちもボスの動向を気にしているようであり、張り詰めた空気が流れる。


勝負は一瞬だった。


男の槍が飛び上がってきた魔獣の目を抉り取る。魔獣の攻撃と男の攻撃は交差するような形になる。


「外したか。」

完璧なタイミングでの攻撃だったが、魔獣が空中で体を捻ったことにより、急所への攻撃には至らなかったようである。


手傷を負った魔獣はこちらを威嚇する素振りを見せたが、群れを率いて退却をしていった。


シルファたちは助かったのである。


「パプリカ。ありがとう。」

シルファは疲労困憊の様子だったが、命の恩人であるパプリカに礼を言わずにはいられないのだろう。


「貴方もありがとう。助けてくださって。」

赤髪の男にも感謝を示している。


「パプリカ、さっきのスリングショットもお前だろ?あれがなきゃ死んでたよ。」

モニカはパプリカを抱きしめんばかりの勢いで感謝を告げた。


残りのメンバーも恐怖からなのか疲労からなのか分からないが非常に慇懃な態度を示した。


「それにしても嬢ちゃんたち、ブラッディウルフの群れに出くわすなんて運が悪いな。」

赤髪の男は同情するように言う。


「あれはブラッディウルフ?」

パプリカは不思議に思った。


「ああ、それに最後に俺が戦った個体はブラッディダイヤモンドウルフだ。本来はもっと森の奥深くに入らないと姿を見せないはずなんだがな。」

男も不可思議そうにしている。


「皆を助けにいかないと。」

シルファは、窮地に立たされてもなお同輩たちのことを思いやる気持ちが残っているようである。


「そのことなんだけど。」


「ええ。」


「狼系の魔物は群れで行動するから、こっちに群れが集まっていたから他の皆は大丈夫だろうって彼が」

パプリカは端的に述べた。


「それは本当?」

キャロラインが割り込んでくる。


「本当さ。奴らは群れで狩りを行うから、さっきパプリカちゃんに聞いた話であれば問題ないはずだ。

岩場がある方角と群れが逃げていった方角は逆方向だからな。」

男がそういうと皆安堵した。


「俺からも質問していいか?」

男は一同に尋ねた。


「ええ、貴方は命の恩人よ。なんでも聞いてちょうだい。」

シルファは答える。


「どうして魔の森なんかで授業なんてやっている?本当はどこの誰なんだ?」


「どこの誰って、この制服を見てもわからないの?」


「ああ、残念ながらさっぱりだよ。」


「この森で課外授業が行われるのは私たちの学校にとっては数十年続く伝統的な慣わしなんだけど。」

シルファは自分たちの所属にピンときていない男を訝しがった。


それも当然であろう。彼女らが属している聖女を育成する学園は国の重要な機関であり、宗教的にも政治的にもかなり大きな意味を持った場所だからである。


神聖国の中枢を担う人材の育成を行なっており、神聖国でまともに生きていれば必ず何かしらの形で関わりがあるはずであった。


「そう言われてもな...その戦闘力でこの森に入るなんて自殺行為だってその学校では教えてもらえなかったのか?」

男は本心から彼女たちを案じている様子だ。


「何かすれ違いがあるのかも。先に他の生徒と合流しなければ。」

途中まで会話を聞いていたパプリカはつぶやいた。


「それもそうね。急ぎましょう。」

シルファたちはそう言うとキャロラインの指示に従って、他の生徒たちが隠れる場所へと急いだ。

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