神聖国にて case-14
「シルファ、今よ。」
パプリカはタイミングを見計らう。
魔獣の突進に合わせて、結界を部分的に弱める。
弾かれることを想定していたのか、結界の中へと収納された魔獣は一瞬油断する。
すかさずパプリカは攻撃に入る。パプリカとモニカが近づくと魔獣は大きな爪を振り上げて威嚇したが、パプリカは意にかえすことなく、急所を目掛けて杖を振るう。
「ローズマリー、今。」
「はい。」
ローズマリーはそう言われると香料を魔獣に投げつける。拡散する香料。悶絶する魔獣。
パプリカは続けて打撃を喰らわせ魔獣を転倒させる。モニカは手斧で転倒した魔獣の首筋に止めを刺す。
「案外楽勝かもな。」
モニカは目の前の魔獣が絶命したのを確認すると 皆の方をみてそういった。
「確かにこれなら持ち堪えられるかも。」
シルファも同調しているようだ。
撃退作戦がうまく作動したことにより、一同の中に安堵が広がりつつある。
その後、彼らは同じ方法で魔獣たちのしかばねを増やし続けていったが魔獣たちの襲撃は一向に止む気配はない。
「おかしい。」
パプリカは呟いた。
足元には十を超える魔獣の数。
魔獣たちの攻撃はどれも喰らえば致命的になる。各が紙一重の連携を繰り返してなんとか今の状態を保持している。当初、パプリカは自分たちがそれなりの時間粘れば勝手に他の獲物を探しにいくものと考えていた。しかし、現実はその逆でむしろ自分たちに固執するような素振りを見せている。
「捕食が目的でないということ...?」
パプリカは皆の疲労具合をみて、一度迎撃をすることを取りやめた。
幸いシルファの奇跡はかなり頑丈なものであったし、本人曰く持続時間もまだまだ問題ないとのことである。
「八方塞がりね。」
シルファは弱音を吐く。
「なんてしつこいやつらなのかしら。」
ローズマリーは恐怖を通り越して、悪態をついている。
モニカは一人折れた手斧を見つめている。
一度は盛り返した皆であったが、限界が近そうだ。このままではジリ貧である。
「皆、話がある。私が助けを呼んでくるわ。」
パプリカは皆の様子を見てから切り出した。
「パプリカ、冗談はやめて頂戴。」
普段は朗らかな雰囲気のシルファも彼女の物言いに対して強く反対した。
「そうだ。お前がいくら優秀でもこの包囲を突破するのは無理だ。」
とモニカ。
ローズマリーとキャロラインも似たような反応を見せる。
「でもこのままこいつらと戦っていてもジリ貧じゃない。」
「それはそうだけど、頑張って耐えていたら助けがくるかも。」
「そんなはずはないわ。課外授業中は誰もこの森に近づかない。聖女たちの神聖な儀式だってこの国中触れ回っているから。」
「あなたが危険を冒すことに反対だっていってるの。」
シルファは譲らないようだ。
「何も無策ということはないわ。ここには彼女もいるし。」
パプリカはそういうとキャロラインを見た。
「インビジブルの奇跡でどうにかしようって魂胆なのかもしれないけど、それは無理だってあなたが...」
キャロラインは普段の威勢を失って久しかったが声を振り絞っていった。
「ええ、あなたの奇跡では姿が見えなくなるだけであいつらを誤魔化すには不十分だわ。」
「だから、どうしようもないんじゃ。」
キャロラインは嘆いている。
「私に考えがある。」
パプリカは半信半疑の皆に言い聞かせるように作戦を語る。
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「パプリカ、本当にいいのか?」
モニカはパプリカを案じる様子。
「私、あなたのことを誤解していたわ。皆のために己を危険にさらすなんて簡単にできることではないもの。影で獣くさいと呼んでいたことを詫びるわ。」
とローズマリー
「本当に任せていいの?」
シルファは最後までパプリカの作戦には反対だった。しかしながら、この状況下ではパプリカが提案した方法が一番皆の生存確率を高める方法だと割り切る頭脳もあったようだ。
パプリカは小さく頷くとキャロラインに告げた。
「では手筈通りに。」




