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神聖国にて case-7

それから毎晩シンシアとパプリカは話した。


シンシアはパプリカにとっても非常に興味深い体験をしている。


「それで、パプリカちゃんはいつ私に目的を教えてくれるのかしら。」

シンシアはそう言ってたびたびパプリカを困らせたが、シンシアが話してからパプリカも話すといってどうにか誤魔化している。


「それで旅の目的は?」

パプリカはシンシアに尋ねた。


「布教と修行よ。」

シンシアは平然と答えた。


「私は奇跡が使えない。そして母も祖母もその母も。

何百年も教会に仕える我が一族から奇跡を使えるものがでない。それがこの国で何を意味するかわかる?」


「侮蔑。軽蔑。疑念。」

パプリカは手短に答える。


「そうよ。我らの一族はこの国でも有数の古参の貴族。それなのに奇跡をつかえるものが一族から一人も出ない。他の家では最低でも何代に一度かは奇跡が仕える子供が産まれる。


奇跡は魔法と異なって、遺伝するものではないと言われているけど、経験論的に奇跡を使える者の血統を取り込んでいけば確率は高まっているはずよ。


私の家は長い長い奉仕と祈りのため、当時でもかなりの権力をもっていたけどそのせいで枢機卿にまではどうやったって上り詰められなかった。


だから私は旅にでることにしたのよ。あることのためにね。」


「シルファから聞いたわ。シンシアが昔は天使様の末裔だって言われていたことを。」


「この齢でそんなふうに言われると恥ずかしいわ。」


「すごい偉業よ。誰もが尊敬すること。」


「必死だったの。必死に人の役に立ちたいって考えたのよ。」


「それが今の医療と呼ばれるものの基礎になった。」


「ええ、その功績が認められて...」


「枢機卿になった。」

パプリアはシンシアに被せるように話した。


「もっと詳しく教えてほしい。それが今回私がここに来た理由に繋がるはず。」


シンシアはパプリカを見つめる。


「少し長くなってしまうわ。」


------------------------------------


シンシアは情熱と信仰に満ちた少女だった。

彼女の理発さに周囲の人間は期待を込めて、一族の悲願である奇跡の発言を家族の誰もが期待したのである。


「シンシア、お祈りはもうよいのかしら?」

シンシアは日課のお祈りを済まして、勉強していると祖母に話しかけられる。


「ええ、お婆さま。」


「それで何か変わったことは?」

祖母はシンシアの奇跡の発現を最も願っていたうちの一人といっても過言ではない。


シンシアは一族のことは知っていたし、それを差し置いても神の存在を信じ、生まれながらに厚い信仰心をもっていた。


「ごめんなさい。お婆さま。今日も特に変わったことはなかったの。」

シンシアは申し訳なさそうに答える。祖母は高齢だ。もしシンシアに能力がもたらされるのであれば、自分の目が黒いうちにということなのだろう。


「いいのよ。毎日お祈りを欠かさずにいれば、きっと神様が見ていてくださるわ。」

彼女はそういうと重たい足取りで自室に帰っていく。


シンシアは奇跡についてかなり勉強した。

なぜなら、このお婆さまのことが好きだったからである。


なぜ奇跡は人間に発現するようになったのか。魔族の魔法とは何が違うのか。

どのような原理でその能力は発動するのか。

そして、その能力は他の事象で代替できるのものではないのか。


数多くの文献を読み漁り、人類にとって奇跡が発現したとされる魔族との戦争についても詳しくなった。


彼女は勉強と社会への奉仕に明け暮れて日々を過ごしたが、いよいよお婆さんが亡くなる時までシンシアが奇跡を授かることができなかったのである。


おばあさんの遺言はこうだった。

「我が一族からも栄えある枢機卿を。いつの日か。」


その日から、シンシアの目標は単に奇跡を使えるようになることでなく、教会の中枢権力のトップである枢機卿になることになったのである。

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