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神聖国にて case-4

男は警告を繰り返した。

我々はもう一度魔族の脅威を知るべきである。

この国では魔族や亞人共との共存を考える人間が増えてきている。


この状態は枢機卿として見過ごすわけにはいかない。

今となっては、我々枢機卿の中にもそんなことを考えるものがいる始末。


このままではこの国は疎か、人類全体が神に顔向けができなくなってしまう。

我々は知らなければならない。

魔族の恐ろしさ。いや、かつて"魔物”と呼ばれたものの恐ろしさを。


「神よ。このネフィリムめが、貴方様の偉大なる力をもう一度愚民共に教育いたします。

今一度の猶予を我々人類に。」

彼は闇に向かって呟くが、その声を聞いているものはいなかった。


-------------------------



パプリカは授業を受けていた。

普通の人間とは色々と事情が異なる彼女も、ここで受ける授業には新しい発見がある。

流石は歴史ある場所。


人類にとっては、謎が多く一般の人間が知るよしもないことが授業では披露される。

魔族と人類の歴史。滅びた魔物について。奇跡と魔法にはどのような違いがあるのか。

そして亞人とは一体なんなのか。等々。


パプリカには一部、この教会にとって都合の良い事実の曲解部分があると感じたが体系立ててこのように学ぶのは初めての経験だった。


内容も専門的で非常に興味深い。それゆえにパプリカは勉強しないと授業についていけなかった。


「どうしていつもこうなっちゃうんだろう。」

授業が終わると消耗していることに気がついた。今更どうしようもないのだが。

暗殺以外の部分でも生活に溶け込んでしまうのが彼女の悪癖である。


「パプリカ。ねえ、パプリカ。」

後ろから声をかける者がいた。


「ねえ、わからないところは私が教えるわよ。」

シルファだ。修道服に身を包んでいるのに溢れ出る豊満なボディ。パプリカは彼女がどうして親切にしてくれているのかを計りかねている。


「シルファ。ありがとう。でも悪いわ。」

パプリカはあまり借りを作らない主義だ。シルファには悪いが、長くこの場所に留まるわけでもない。

閉鎖的なこの空間では、どうしても存在感がでてしまう。あまり目立つわけにはいかないのだ。


「遠慮しなくていいのよ。」

シルファはパプリカの反応が遠慮からくるものと感じたらしい。


「シルファ様。こんなやつ放っておきましょうよ。」

貴族の生徒が話しかけてくる。


「そうよ。こんな愛想のないやつ。」

取り巻きたちもパプリカを良く思っていないようだ。


「でも、彼女熱心だわ。」

シルファはそう言ってパプリカを庇うが、パプリカは一連の会話を無視して出て行ってしまう。


「ちょっとパプリカ。」

シルファは後を追おうとするが皆に止められる。


「シルファ様、それよりも今日は私の家でパーティーがあるのよ。おいでなさらない?」

パーティのお誘いのようだ。


『貴方たち、お祈りは?』

シルファは、喉元までお祈りを軽視する彼女たちへの文句が出てきたが、言葉にするのは躊躇った。


「そうね。ありがとう。お祈りを済ませてからお伺いさせていただこうかしら。」

シルファは至って冷静に対応をした。この国で生きていく上では、ある意味では生涯関わっていく間柄である。無下にはできない。


「あら、シルファ様が来てくれるならお母様たちも喜ぶわ。」

彼らはシルファの参加が意外だったらしい。いつもお祈りばかりで真面目すぎるからだろうか。


「それではまた後で。御機嫌よう。」

彼女たちは去っていった。


「パプリカも誘ってみようかしら。」

シルファは頓珍漢なことを考えたが、揉め事の匂いがするので自重した。


--------------------------


「違うわ。良く狙わないとダメ。」


「こうかな。」


「いえ、それだと的まで届かないわ。」


「じゃあこれは?」


「他よりはマシ。ただ、力が入りすぎてる。」


パプリカは少年たちに弓矢を射るコツを教えていた。彼女は約束は守るのである。

こう考えると悪魔みたいだが、約束したことは必ず遂行する。どんな些細なことであっても。


「おねえちゃん。そんなのいいからこっちでおままごとしようよ。」


「パプリカはね。ペット役なの。」


「猫なの。ゴロゴロいうの。」


皆思い思いにはしゃいでいるようだ。パプリカは取り合わない。


「コラコラ、獣人だからってそんなふうにいっちゃダメですよ。」

シンシアは子供たちを宥めている。


「シンシア。」

パプリカは改まってシンシアを見る。


「どうしたの?」


「ここらへんって出るの?」


「ふふっ。なんのことかしら。」


「魔物の気配がする。」


「ふむ。流石は兵士長様ね。

ここら辺の森にはまだ魔物が住んでるって言われているわ。

本来なら魔族の生息域にしかもう居ないはずなんだけどね。」

シンシアは丁寧に答えた。


パプリカは黙っている。


「心配することはないわ。私が小さい頃からそう言われてるけど誰も見た人はいないの。」


「そう。」

パプリカは遠くを見る。


「それに、もしもの時は宗教騎士団が私たちを守るわ。」


「宗教騎士団?」


「あら、まだ勉強してなかったの?

宗教騎士団っていうのは、この国の騎士たちよ。

全員が奇跡を使えるからかなり有名なはずなんだけど。」


「それなら知ってる。」


「だから大丈夫よ。彼らよりも強い魔物なんて1000年以上も昔に滅んじゃったんだから。」

シンシアは誇り高そうにしている。


それもそのはずだ。かつて人類を滅亡寸前まで追い込んだ魔族と魔物たちは、奇跡を使える様になった人間たちに逆に侵攻されている。

そして、その奇跡を最初に授かった人間の一人が、この国の初代の王ヌーフと言われているのだから。

パプリカは歴史の授業にでてきた彼の挿絵を思い浮かべた。

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