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共和国にて case-11

王アリヤバンは普段の執務を終えると幾人かの護衛を連れてお忍びで闘技場に来ていた。



時期が近くに迫ったこの闘技場でのイベントは自分の求心力を高めるチャンスだ。

共和国はここ数十年で非常に広大になった。これは、誇らしいことではあるが統治する側の人間にとっては必ずしも喜ぶべきことではない。



それは大きくなりすぎた領土を治めるためにはさらに多くの人間を従える必要があるからだ。

現に共和政をとっているこの国は王であっても絶対の権力者としては足り得ない。



貴族たちの存在と服従させてきた他国の民たちが原因である。

アリヤバンは危機感を感じていた。貴族たちや街の有力者が集まり、政治的なことを話し合う元老院では常に参加者がお互いの利権や権力を守るために発言をしている節がある。



共和政といえば聞こえはいいが、かつてこの国の最大の強みであった革新性と実行力の両方が失われているのが現状だ。


彼は初代の王、サトゥーがどのようにこの国を建国したのかを歴代の王たちよりもより深く研究していた。

この国が王政であったのは彼の王が存命の時代のみである。



「まずは人気を集めなければなるまい。」

アリヤバンは自身が王政を敷くために民からの人気を極限まで集めなければならないことを熟知していた。

それはかつての王サトゥーのように民に支持されて王政を敷かなければなんの意味もなさぬことを知っていたからである。



腹心の部下からは剣闘士に混じって闘技場で戦うのはやりすぎではという意見もでたが、このくらいのインパクトが必要なのだ。それに手は打ってある。私が剣闘士との戦いで死ぬことはない。



この国をさらに発展させ、邪魔な貴族等を一掃するためにアリヤバンは力を尽くす。


---------------------------------------



二人は近くの喫茶店に来ていた。”共和国のあるき方”にのっていたカフェテリアである。



「今回の戦いの内容が発表されたでござるよ。」

セイフォンは剣闘士としていち早く情報を手に入れるとパプリカの元に急いだ。



「大規模な海戦とタッグバトルによる決勝戦ね。」

パプリカはその内容にびっくりした。なにせ海戦である。



「昨年、この国が戦った魔族の軍団との戦争を再現するのが目的でござる。民衆に兵の精強さをアピールするのが目的でござるな。」



「そして、アリヤバンがでてくる決勝戦はタッグバトル。」



「正確には決勝トーナメントという形になるみたいでござるよ。海戦で一通りの人数をふるい落としてから、腕利きの者や人気の者にタッグを組ませて戦うらしいでござる。」

セイフォンはだるそうにしている。



「貴方はどうなるの?」

パプリカは意外そうだ。



「それがしの階級までは海戦に参加する必要があるでござるよ。それがし、海は嫌いでござるのに。」



「そんな弱点が。」

パプリカは先ほど頼んだ飲み物が届くとそれを優雅に楽しんだ。



「パプリカ殿は、能力者たちに接近しているのでござったな。」

彼女はつい先ほど届いたパンケーキのようなものを頬張りながら言った。



「それよりも耳に入れておきたい話があるでござる。」

セイフォンはパプリカに寄ると周囲を気にしながら耳打ちした。



「何。」

パプリカはそういいながらも耳を傾ける。



セイフォンはあたりを気にしながらいった。

「この前話した剣闘士たちの反乱の話はおそらく本当でござる。」



「それで?」

パプリカは興味を示す。



「それがしのところにも案内がきたでござるよ。いかがいたそうか?」



「いかがっていうのは?」



「運営側にこのことを伝えた方が良いのかという意味でござるよ。」



パプリカは少し考えてから、

「何故貴方に?」


「それがしが戦う時にはいつも峰打ち故、取り込み可能じゃないかと勘違いされたのはないかと。」


パプリカは飲み物を啜りながら頷いた。


「それで首謀者にも?」


「それが何やらテレパシーのようなもので問いかけられておりましてな。首魁の姿は確認しておらぬでござる。」


「そう。」


「私たちの任務は反乱の鎮圧でも首謀者の逮捕でもない。だから、この件は放っておいて良いのでは?」



セイフォンは難しそうな顔をしているが、パプリカがそう言うとそれに従う素振りを見せた。



「触らぬ神に祟りなし。それがしは保留の姿勢にて対応するでござる。」



「それで結局、戦いには参加するの?」

パプリカはセイフォンに尋ねた。



「そうでござるな。ただタッグバトルというのが少し...」

セイフォンは頭を悩ませている。



「アリヤバンは大貴族階級の有力な剣闘士をタッグにするはず。臨機応変に対応するには貴方もそれなりのパートナーを見つけなければ。」



セイフォンはパプリカをチラ見した。


「私は無理よ。」



「左様でござるな。とにかく自分で伝手を探してみるでござるよ。」



任務遂行の日は刻一刻と近づいている。セイフォンが剣闘士として内部に侵入していることは大きい。

有力な参加者の情報や闘技場内部の裏事情。果てにはこの国の貴族への仕官の情報まで入ってくるらしい。



それほどにこの国では剣闘士としての階級を上げて、人気者になるというのは凄まじい効力を発揮するのである。

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