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お嬢様

ムゲンサイド


兄さんが囚われた私を取り戻そうと必死に追いかけてくれる。


兄さん、世界で一番かっこよくて、強くて、優しくて、おちょこちょいでたまに私のわからない言葉をはしてくる世界一の兄さん。


今の私はさながら囚われたお姫様、兄さんは私を奪還するために数々の試練を乗り越え、私たちは最後には結ばれる運命。


そしたら兄さんって呼べなくなちゃうな。

ユウトさん、ユウトくん?呼び捨てでユウトって呼ぶのも悪くないわね。


それとも、あなた、お父さん?でも夫婦になる前のカップルでいる時間はとても大事っておばさんたちも言ってたしそれはもう少し先のお楽しみに取っておこう。


はやく、兄さん私を迎えにきて。

あのバカの現状次第では死ぬすん前までボコった後に王都の最高級ホテルで2人で最高の一夜にしましょう。


私がとても素晴らしい妄想に耽っているとコツンと固い金属が私の頭を叩く。

軽い痛みが頭に伝わり、現実に戻ると私の頭を叩いた張本人いや張本球のラプラスが何かを訴えている。


「なに?ラプラス。いいじゃん別に妄想くらい好きにさせてよ。え?下を見ろって兄さんが私を助けるために必死で発してるじゃない、ん?そっちじゃないって?」


私は別の方向に目を向けると遠目から見ただけでもわかるほどの煌びやかに塗装された高級そうな馬車が魔人の集団らしき物に襲われている。

2人の騎士らしき装備を纏った人たちが必死に戦っている。


「別に大丈夫でしょう、見た感じ最低級の魔人、ゴブリンの集団みたいだし、数は7ぐらい?馬車の護衛の騎士さんたちも強そうだし。痛い痛い、頭をこんこんと叩かないでよ!私も応戦すればいいんでしょ。あーあ、せっかく楽しい妄想にトリップできてたのに。あとで兄さんになでなでしてもらお」


私は持っていた杖を鳥型の魔獣に向け、火炎魔法を発動する。

一点に炎を集中させそのまま、鳥型魔獣に向けて発射する。


炎は鳥型魔獣を貫き、体の維持ができなくなった鳥型魔獣はそのままチリとなっていった。

必然私を空に浮かばせていた対象はいなくなったので私はそのまま地面へと真っ逆様に落ちていった。


ラプラスにキャッチしてもらうことも可能ではあったが何せいたい。

鳥型魔獣に空中を運搬されている時も実は結構体が痛かった。

落下するにしてもどうせなら少しででも柔らかい場所がいいと思い、自由落下ちょうど馬車の屋根があるところに落ちる。


魔法を使って体を頑丈にしたのでノーダメージ。

馬車の方もいい作りなのか壊れることなく、屋根が少し凹んだ程度である。


私の落下のの音を聞いてこちらに振り向く騎士たち。


あ、これはまずいやつだ。


普通の生物なら反射的に大きな音がすればそちらに気が逸れたり、萎縮したりする。

だが、魔物には感情がない。


故にいきなり落ちてきた私に警戒することはあっても、落ちてきた音で怯んだり気が逸れることは一切ない。


騎士たちの無防備になった姿目掛けて魔人、ゴブリンたちの持っていた棍棒が騎士たち目掛けてフルスイング。

やば、間に合わない、なんてことはない。


私の魔法の発動よりもゴブリンが棍棒をフルスイングするよりも早く、槍のような形状になったラプラスがゴブリン共を貫く。


あっけに取られ声も出ない騎士たちだったが、残りのゴブリンも私の火炎魔法にて焼いておく。

もちろん、騎士の人たちは燃やさないように最新の注意を払って。


「これにておしまい。さ、魔石だけ回収して兄さんと合流しよ?」


馬車から飛び降りて、魔石を回収しようとすると馬車の扉が勢いよく開く。


「この度は助けていただき、ありがとうございます!あれほどの卓越した火の魔法。高名な冒険者様ですか?あちらの黄金に輝いている球は貴方様の魔法の一つなのでしょうか?ぜひ、お礼がしたいので我がお屋敷に!」


「え、いやぁ、そのぉ」


中から出てきたのはいかにもお嬢様って感じの女性だった。


私、ムゲンは昔から村の中で生きてきた。

だから初対面という感覚があまりなく、たまに村の外から来る人たちもいたがそういった人たちと喋るのはなんとなく苦手だった。


兄さん曰く、こういった体質のことをコミュ症というらしいのだが今目の前にいる、お嬢様を前に私は声がですにいた。


「ありがとうございます!実は馬車の馬が先ほどの戦闘で逃げてしまったので歩いてになるのですが、申し訳ありません。マジックバックは大丈夫でしたので道中のお食事はこちらでお任せください我が領にある屋敷までおおよそ3日ほどですが大丈夫ですよね?さぁ行きましょう!」


私が了承してないのにすごく話が進んでいらしゃる!


やめて!そんな真っ直ぐな瞳でこちらを見ないで。

断りずらいから!

ラプラスに助けを求める目線を送っても、どすすればいいのか分からず球体の体でオロオロしている。


さっきの鳥型魔獣に襲われている時以上の危機感を感じる。

兄さん早くきて!

体が震えてすごいことに、あれ?これ地面が揺れていない?


揺れている地面から巨大な手が生えてきて、お嬢様を鷲掴みにする。

騎士の人たちがお嬢様を助けようと駆けつけるが生えてきたもう一方の手で簡単にいなされる。


大地から迫り上がってきたその魔獣の巨大な体が地面から迫り出した。


「ガイアゴーレム」


その巨体さも厄介であるが、固い岩に覆われた高い防御力を持つ体。

私が持っている魔法ではだいぶ相性の悪い魔人である。


「アンナ!レテシーナ!ぐう!」


吹き飛ばされた騎士たちを心配するお嬢様。

ガイアゴーレムは握る力を強くしたのか辛そうな声をあげる。


待ち伏せされていたのか、たまたまガイアゴーレムがいた場所でゴブリンに襲われていただけか。

前者の方が可能性が高く、もしそうなら厄介なことに上級魔人クラスの司令塔がいることになる。


「コノ、ムスメヲタスケタケレバ、ソノツエヲコチラ二、ワタシテモラオウカ」


握るてを強くしているのかお嬢様のうめく声が段々と強くなる。

かといって素直に杖を渡せばその瞬間にお嬢様を握りつぶす可能性もあるし。

渡さないなら渡さないでお嬢様に価値なしと判断してそのまま握り潰すかぁ。


「ソチラノ、オウゴンノタマ、モヨケイナコトハスルナヨ?」


聞き取りづらい言葉で発するガイアゴーレム。

さっきのゴブリン戦を地面から見てやがったなこいつ。

私とラプラプが厄介だってこときちんと学習してる。

魔人ってこういうところが本当嫌になるわね。


ということは私大ピンチ!

かっこよく私を助けてくれるだろうから、シチュエーションは大事だよね。


「わかったわ、私がこの杖そっちに投げたら、お嬢様を解放してね」


「イイダロウ」


私は思いっきりガイアゴーレムの顔面に目掛けて杖を投げた。


「ライト!」


ありったけの魔力を注ぎ込んで低級魔法のライトでガイアゴーレムの視界に眩い光を放つ。

ガイアゴーレムは怯み、そのままお嬢様を手放してしまった。


そのまま地面に叩きつけられるお嬢様。

いったそう、後で治癒力向上魔法かけてあげよう。


怯んだのも束の間ガイアゴーレムの巨大な拳が私に襲いかかってくる。


杖のなくなった私なんてただの非力な女の子。


迫り来る巨大な岩の拳が私を叩き潰そうと迫ってくる。


「きゃー、助けてヒーロー!」


ヒロインである私はとてもピンチだ。ピンチな私には何もできる術がなくその場で尻餅をついた。


岩の拳が私にぶち当たりそうになった直前、私の前にはヒーローが立っていた。

黒髪、黒目ですらっとした体つき。

見るもの全てを魅了するようなその姿。


何より目を引くのは黄金色のガントレットに包まれた、その右腕である。


ガイアゴーレムの拳をその右腕で殴る。

たった一発、その一発でガイアゴーレムの拳は粉々に砕け散った。


そしてそのまま、ガイアゴーレムの顔面目掛けて、黄金の右腕による拳骨を叩きつける。


「俺の妹に怖い思いさせてんじゃねーよ。木偶の坊」


ガイアゴーレムの顔面は酷く陥没し、肉体が維持できなくなったのかそのままチリとなって、魔石だけがその場に残った。


「うわーん、兄さん、クゥわかったー」


私は兄さんに抱きつき、その胸に顔を埋める。

兄さんは優しく私の頭を撫でてくれる。


ピンチのヒロインを救ったヒーロにはこれくらいのご褒美は必要だよね。

兄さんの右腕についているラプラスが何か言いたそうだけど、気にしない気にしない。

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