表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

勇者の悪評の真相を確かめに

『ピックアップ!巷で話題の勇者のクズすぎる行動集!』


今回我々記者が取り上げたのは巷で噂になっている勇者のクズな行為についてである。


勇者、それは勇者紋の模様を体に刻まれた選ばれた人類。様々な種族の中でも人族にのみ現れ、世界で必ず4人だけその紋章を持つものが存在する。


そんな勇者の1人にして現在はこのハジマリーノ王国のクズ勇者の記者が直に見てきた愚行をあげていこう。


まず初めに様々な女性関係。

若い女性はもちろんのこと、貴族のご令嬢やお付き合いしている人がいる女性、夫がいる女性でも誰かまわず手をつける好色家。

日々、別の女性と肌を重ねる。


飽きたらすぐに捨てて目をつけていた次の女性に手を出すという手癖の悪さ。

おかげでどれほどのカップルは別れ、婚約破棄の者たちが現れたか、この記事を書いている私も嫁に勇者と浮気され家庭は崩壊の危機である。

勇者許すまじ。


勇者は勇者であることで王宮内でも王に次ぐほどの発言力と権力を持っているためほとんどのものは何も言えない。

昔、勇者のあまりにも横暴な態度に一言物申した当時王国最強と言われていた旧第2騎士団団長はフルボッコにされて遠い辺境の地へととばされて以来勇者に何か言うものはいなくなってしまった。


以来勇者は増長し続け、食事をしても何かしら文句をつけて無銭飲食に気に入った武器があれば勝手に持っていく。

ストレス発散ということで市民への暴力も日常茶飯事。

勇者で強者というだけでここまでのクズ行為を我々王国民は許しても良いのだろうか?


このままではこの国は魔族による侵攻ではなく勇者への不満にて破滅する日も近いかもしれない。


・・・

「なぁに、やってんだ。あのバカ」


俺は行商人のおっちゃんからもらった、王都で発行されている情報誌のゴシップ欄に小さく書かれていた勇者のゴシップ記事に目を通して呟いた。


勇者紋、俺の幼馴染であり弟分であるあいつが勇者になってこの村から王都に旅立ってはやく3年がたつ。

この3年間一向に手紙もよこさないであいつに対する情報はこの情報誌くらいのものだった。


こんな辺鄙な村では滅多に手に入らないものなのでたまに行商人のおっちゃんに頼んで届けてもらっているが最近勇者のことが記事にならないと思ったらこんなことしていたとは。

一度くらい里帰りでもしてげんっきな顔を見せやがれっての。お前の両親結構心配してるんだから。

特に15歳の成人祭の時くらい顔出せっての、そんなに窮屈なのか勇者ってのは。


ゴシップ記事なので全部を鵜呑みにするわけではないが、火のないところに煙は立たないっていうしな。

はてさてどうしたもんかねぇ。


「情報誌をじっと眺めてどうしたの兄さん?・・・ってうわぁ、なぁにやってんのあのバカ」


全く俺と同じ感想を述べたのは全くもって見た目が似ていない妹の、ムゲンだ。

サラサラのストレート銀髪で少し未発達な体。胸も尻も強調しているところはまだない。

まだ16歳ということもあり幼さは残る顔立ちだがこの世界では立派に成人している1人の女性である。


見た目が似ていないのは血が繋がってないから当たり前なのだがその話は長くなるのでまたおいおい。


「そうなんだよ。かといってこの話をおばさんたちにするわけにもいかなんだし、ってちかい!お前も去年成人したんだからもうちょっとお兄ちゃんとの距離感考えなさい」


自分の顔を俺の顔にピッタリと引っ付けて体を寄せてくるムゲンを引き離す。

引き離されたムゲンは少ししょんぼりした様子で俺の隣にある椅子に座りべったりと俺の体に寄りかかる。


オシメを変えたことある妹に対して特に欲情したりもせんがこの距離感はどうかね?

今世ではもう成人しているとはいえ、ムゲンはまだまだ前世の観点から言えば子供だ。

まだ誰かに甘えたい盛りなのかもしれない。前世のきょうだいもずっと俺にひっつき虫だったし。


「どうするの兄さん?このゴシップ記事を信じるならあのバカ相当やらかしていると思うけど。こんなことおばさんたちに知らせるわけもいかないもんねぇ?」


「そうだな。ここから王都までだと大体一ヶ月くらいだったかな?ことの真相を確かめるついでにあのバカへの成人祝いの品でも届けにいくとするかね」


ムゲンはともかく数年前に俺はある理由で何度か外に出たことあるから旅には慣れている。

せっかく王都に行くんだし観光も兼ねて二ヶ月ちょっとの長い旅行と洒落込みますかね。


「わーい!兄さんと初旅行だぁ。やったね、ラプラス!私、この村から出たことないから楽しみ!」


ムゲンは立ち上がり空中にふわふわと浮いている謎の金の玉『ラプラス』とハイタッチして喜びを表す。


何回かムゲンと勇者の両親と一緒に勇者を見に王都に行く計画を立てていたのだがそういう時に限って何かしらのトラブルが起きたからな。


「それじゃあ、準備していくとしますかね。準備は怠るなよ?しおりに必要なもの書いてあるからそれを見て忘れ物がないかチェックだ、妹よ!」


「しおりって何?兄さん」


ムゲンは聞いてきたがそもそもしおりなんてないことに気づいた俺は黙々と旅行の準備を始めたのだった。


妹と行く初の異世界旅行。

思い立ったが吉日だ。

面白おかしく旅立とうではないか!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ