4話:レンくん、裏垢始めるってばよ
続きます。
前回のあらすじ。
美女の残り湯を飲んだ。
窓から入る陽の光が眩しくて目が覚めた。閉めとけばよかった。クソが!許さんぞカーテン!
仕切り直して。
今日はバイト探しをしようと思う。できれば接客のバイトがしたい。なぜって?もちろんチヤホヤされたいからだ。考えてもみてほしい。つい最近までそこらへんに転がってる石ころレベルの価値だった男子高校生が、急にレアメタルへとメタモルフォーゼしたのだ。これで承認欲求を満たしたくないなんて言うやつは逆に信用できないね。
と言う訳で、現在は新聞と一緒に挟まれている求人広告を取り出している。
昨今は新聞を取らない家庭が増えているとかなんとか。僕の家は昔から新聞で情報を得る家庭だったので実感しずらい。が、確かに思い返せば中学生の時に気象の授業で、新聞の天気予報欄の切り抜きが必要だと言われた時にクラスの半分以上が新聞を取っていない家庭で大変だったとかがあった気がする。
上の世代はともかく、若い世代は、Twitterやヤフーで流れてくる誰かの不祥事や熱愛報道を見て好き勝手言うくらいが楽しいのだろう。
と、上から目線で語ってるが僕はクソリプすら送れない。ハートはチキンだ。名古屋コーチンが食べたくなってきた。
閑話休題
求人広告を見ている……わけだが肉体労働系ばかりで、なかなかこう、華やかというか楽しそうなものがない。僕は男ゆえの体の強さを見せつけたいわけではないので、他のものを探す。だがない。良いのがない。
仕方ない。月菜さんにでも相談するか。そう思い顔をあげるといつの間にか月菜さんがいなくなっていた。
「あれ?もう仕事に行っちゃったのか?」
広告を見ている間に仕事へと行ったらしい。机に置いてあるメモ用紙に、「朝ごはん→ご飯と鍋に入ってる味噌汁 昼ごはん→机の上に置いてるチャーハン」と書かれていた。ちゃんと全部手作りのところにできる嫁感を感じる。
そんなこんなでこの日はすることもなくなったので、街をぶらぶら探索することにした。
ここが東京であるということは分かったが、だからといって何かできるわけではない。東京に住んでいたわけでもなければ来たこともなかった。完全にアウェーだ。気分は異世界に迷い込んだラノベ主人公だな。
時計を見ると午前9時半。まだお店が開店するには少し早い時間帯だ。
取り敢えず外に出るか。昨夜、これ使っていいからと渡された服に袖を通す。女性用だが男性が着てもそこまで違和感がないものを選んでくれたおかげでバッチリだ。モデルのように美しい。
☆†☆†☆†☆†☆†☆
マンションの外に出て東京の空気を吸ってみる。昨日は気づきもしなかったが、正直言ってくそまずである。関西圏でいうと大阪もなかなかだったが東京はそれを上回る不味さ。
昔、母親が都会は空気がまずいから住みたくないと言った時は空気に美味いもクソもねぇだろなどと思っていたわけだが、実際に経験すると実感する。不味かったです………。
まあこんなものは慣れだと思うので気にしないほうが良いだろう。
今日は金曜日。平日ということもあり、中高生とは出会うことがない。ただ、ランニングをしている大学生だったりウォーキングをしているおばあちゃんだったりとすれ違うことはよくある。すれ違うたびにギョッとされるのでニコッとゼロ円スマイルをプレゼントしておく。
「それにしても流石東京。お店がたくさんあるぞ」
田舎者の感動ポイントだ。
☆†☆†☆†☆†☆†☆
とまぁこんな感じで特に変わったこともなく東京散策は終わった。思ったよりはやく帰ってきたがどうしようか…。手持ち無沙汰になり、なんとなくポケットに入っていたスマホを取り出す。スマホがあって本当に良かった。が、気づく。え?これなんでスマホ使えるの?そもそも誰が月額の通信料払ってるんだ?
次から次へと出てくる疑問たち。だがこのまま考えていても答えなど得られるはずがないと悟り一旦考えるのをやめる。
よし!たぶんご都合主義的ななんかでいけてるんだろう!
日課だったTwitter巡回をしようとして、その瞬間にナイスアイデアが、まさに天啓が降りた。
裏垢やってオフ会やればオタサーの姫みたいなやつになれるんじゃね?
天才だ。僕の頭はこんなにも良かっただろうか。もしかしたら顔だけでなくIQまでもが向上しているのかもしれない。
そうと思い立ったら、すぐにアカウント作成を始める。
通報用垢というカスみたいなアカウントを量産したことがあるので、アカウント作成はお手の物だ。
アイコンには自撮りを使う。かなり盛れてるだろう。我ながら見惚れるほどのイケメンだ。
例えるならBTSのジンみたいな見た目だろうか。
さっき外に出たときにユニクロで買ったかなり大きめのTシャツを着る。ちなみに店員さんはめちゃくちゃ驚いた顔をしていたが、店員としてのプライドなのかしっかりと対応してくれた。
大きめのTシャツを着たため、斜め上から自撮りするとまぁまぁ胸が見えてしまう。しかしこれはわざとである。裏垢として活動するのだからこれくらいのサービスはあって然るべきだろう。
この自撮りと、裏垢はじめましたという一文だけを載せたツイートをする。一体どれほどの反響があるのか楽しみである。
数分後。僕はニヤニヤが止まらなかった。
なんとツイートは一瞬で拡散され20万リツイートに35万いいね。昼時にツイートしたから昼休憩の学生たちも見ているのかもしれない。
リプ欄には、「エロすぎる」、「結婚してほしい」、「彼女いる?」、「年齢は?」など様々な反応が見て取れる。質問が多かったので、質問箱でも作るか。そう思い、質問箱を作ると「誰でも匿名で質問送ってください。毎日夜9時から質問返しします。」というツイートをする。
するとさっそく質問が送られてくる。ちょっと先に見ちゃおうかな。
だが読めども読めども、送られてくる質問は下ネタ系ばかり。いや、良いんだけどね。裏垢だから。でもさぁ、もうちょい普通の質問も送れよ!
そう嘆いたところで変わるわけもなく、送られてくる変態質問の数々。
え?これ答えるの?でもやっぱりこういう小さなところからコツコツやっていくのが成功への近道………だと思う。
なろうの1話平均文字数くらいは書きました。たぶん……。