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侵掠者(シンリャクシャ)

 わたし達の暮らしているこの世界は、常に魔物の恐怖に晒されている。


 無限に湧いて、わたし達の町を踏み荒らしていく。そんな魔物に対抗できるのは、一部の通常兵器と、魔導国家アステリオンからもたらされた魔法を扱える魔法使い達だけ。


 こっちは有限の戦力。相手は無限の戦力。当然、救えなかった人達も多くいる。そんな人達は最悪命を落とすか、もし生き残れたとしても住む場所を失ってしまう。


 家を無くした人々のために、わたし達魔導高専医療科の教師及び生徒は地域の組合と連携して、頻繁に炊き出しを行っているのだ。


 今日のメニューは雑穀米と、地下プラントで育てられた野菜を使った味噌汁。


「お姉ちゃん、ありがとう……!」


 わたしから味噌汁の入ったお椀を受け取った小さな少女は、か細くもそうお礼を言ってくれた。

 この子も、魔物に家を壊されたのだろう。

 そんな人達の身体状況や生活環境を少しでも良くするために、わたし達はここにいる。わたし達が笑顔でいないと、みんなから……笑顔が消えてしまうから。




「おやおや、こんなに人間が沢山。どうやら良い狩り場を見つけてシマったようですねぇ」


 妙に場の空気から浮いた、余裕のある男性の声。少女から視線を逸らすと……二足歩行の「何か」が居た。


 魔物だ。


「カッカッカッ! せっかく見つけたんだ。ここにいる奴ら全員、家畜か奴隷にするシカねぇよなァ!」


 人々がお椀を捨て、悲鳴を上げて逃げ惑う。わたしを含めた医療科のメンバーは瞬時に避難誘導を開始する。

 もちろん、ここにはわたし達しかいないわけがない。直ぐに警備士の人達が駆けつけてくれた。


 紺色の制服に身を包んだ警備士の人達と、周囲の警戒にあたっていた強襲科の面々が、魔物を取り囲む。


「動くな! チミはかぁんぜんに包囲されている! 大人しく投降しろぉー!」


 ピストルを構えた警備士長さんが、魔物へ向かって威圧する。


 白黒の縦縞模様を持つ左半身と、肩から大きな角が飛び出した茶色い右半身を持つ、一体の魔物。全方向を囲まれたことを把握してもなお、動揺している様子は無い。


「チミは何者だぁ! 名をぉぉぉ……名乗れぃ!」


 魔物に頭部はあれど、顔は無い。けれど……笑ったような、気がした。


「これはこれは失礼。大量の獲物を前に挨拶を忘れてシマっていました。……申し遅れました。私は魔王様の忠実なるしもべにして『石頭の投球馬鹿』の異名を持つ誇り高き戦士。名をディアホース・バー……と、申します。左半分が私です」

「そして右の俺が、ディアホース・カー!」

「「二人併せて、ディアホース・バーカー!」」

「以後、お見知りおきを」

「知ったところでどうにもならねぇけどなァ!」

「ディアホース・バーカー……! その名、チミの墓に刻んでやろう! 者共、かかれぇい!」


 バキューン、バキューン。いくつもの銃声が鳴り響いた。


 刹那の沈黙。


「……おや? せっかくの銃撃も、徒労に終わってシマったようですねぇ」

「まだだ! お前を倒して、切美きりみと百合百合な結婚式を挙げる! 喰らえ! 『ウルトラ・スーパー・スペシャル・ビーム@アット水属性』!」

「ああ! 拓兎たくと! 君と私は死ぬまで一緒だ! 『かぜpresents.ドット超強いざん』!」

「なら一緒に死ぬシカねぇよなァ!」


 沈黙を破り、特攻を仕掛けた二人の少女達。同時に刀とキャノン砲を突き出すも……あっさりと攻撃は躱され、隙だらけの顔面を両手で掴まれてしまった。


「「馬鹿になるがいい」」


 呪文……? 魔物がそう言うと、二人は共に力が抜けたように、武器を落とした。


 ……いや、落ちたのは……武器だけじゃなかった。


 二人の首に沿うように黄色い魔法陣が描かれた直後、首から下が……重力に従ってボトッ、ボトッ……っと鈍い音を立てた。

 その魔法陣は……ギロチン、だったのだ。


「「石頭、二つ、捕球……! フンッ!!」」


 あまりにも瞬殺にしてあまりにも残酷な光景を前にただ固まるしかなかった強襲科のみんなと警備士さん達は、連続で投擲された二つの「少女の頭だった石」を避けることなど到底できなくて。


 投げられたそれらは魔物の魔力が込められていたらしく……命中、着弾ののち……爆発した。


「み、みんな……」


 ようやく自分の口からひねり出せた言葉は、それだけだった。


「ぐっ!」


 意図せず、声が漏れた。

 何かが額に当たったんだ。


 反射的に、当たった物が何かを確かめるために地面を見やった。


 人の……耳。

 人の……生え際。


「あっ……、……」


 まるで石膏像のような砕け方をした……誰か、もしくはどちらかの頭部の破片だった。


「ひいい、もう駄目だぁああああっ!」


 炎の中から警備士長さんがわたし達に構わず逃げ出していくのが、遠くに見えた。


「……私としたことが。せっかくの奴隷をあんなに殺してシマうとは」

「……っ!」


 目の前に……居る。

 あいつが。

今回紹介するのは、人の言葉を話すことができる魔物「ディアホース・バーカー」!

シマウマの左半身と鹿の右半身を持つ、半分こ怪人だ!

地属性の魔法を好んで使い、人間の頭を瞬時に石化させる能力を発揮する恐ろしい魔物だぞ!

冷静な「ディアホース・バー」と好戦的な「ディアホース・カー」のコンビネーションは馬鹿にできないね!

さらに「エクスドリーム!」と叫ぶことで、コアである魔核が体の中心に露出し「エクスドリーム・バーサーカー」にパワーアップすることができるんだ!

みんなは一体、どうなっちゃうの!?

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