プロローグ
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今から約500年前。
暴虐の限りを尽くす魔王を討つため、我々「魔導国家アステリオン」の魔法使いは異世界より勇者を召喚し、共に魔王を討ち滅ぼした……かに思えた。
肉体が崩壊する最中、魔王は自身の魂を108個に分裂させ、並行世界を含む様々な世界へと散っていった。いつの日か復活し、再び世界を混沌の渦へ引き込むために。
魔王の魂から生まれた瘴気は負のイメージによって実体化し、魔物となって他の世界の生命体を傷つけ、さらに増殖していく。元は我々の世界の問題。看過する訳にはいかない。
我々アステリオンの民は魔王の魂が辿り着いたと思われる数多の異世界へ繋がるゲートを設置し、遣いの者を送った。魔王の力の危険性を知らせ、我々の持つ魔導技術を提供するためだ。
それらの異世界の一つ、人間界。その中でも「日本」という国は我々がもたらした技術に上手く適応し、魔法使い・魔導士の養成学校まで作り上げてみせた。現在では、そこに通う生徒もベテランと共に前線に立ち、魔物を討伐してくれている。
また、逆にこちらの世界へ赴き、魔王を完全に消滅させるための研究に協力してくれている者も多い。
元魔王領の一部を支配し「百合の魔王」「大百合天魔導王」と自称する少女、三瓶ときわもその一人だ。
◆
「三瓶さんっ、そちらへ向かいました!」
「任せろですの! ビーム瓶・殺滅!」
魔法には「炎」「水」「風」「雷」「地」「氷」「光」「闇」の8つの属性があり、どの属性にも分類されない固有魔法も存在する。その中でも水属性と闇属性に適性のある三瓶ときわはビール瓶のような形状の魔法具「ビーム瓶・殺滅」等を介することによって、彼女自身の持つ魔力をビールへと変換し、攻撃に転用することができる。戦闘能力を持たない一介の研究員である私をかばうように魔物達の前に立ちはだかると、絞り出すように彼女は言った。
「魔王は……この世に私一人で十分ですの……!」
『ときわ! オープニング!』
彼女がビーム瓶の口に栓抜きを模した魔法具をあてがうと、ビーム瓶から起動完了を知らせる音声が鳴り響いた。
「とくと味わいやがれですの」
『クラフト・ビーム!』
「爆牙発砲……!」
ビーム瓶の柄を握り、その底部を魔物の軍勢へと差し向ける三瓶ときわ。今から放たれようとしているのは、全8階梯のうち第6階梯級の威力を持つ必殺のビーム魔法。発射待機を知らせる警報が、急かすようにビーム瓶から発せられる。
『飲んで飲んで~! はいイッキ! イッキ! イッキ! イッキ!』
「ときわ式! 一番搾りスプラッシュ!」
ビーム瓶の底から黄色と紫色が入り混じった魔法陣が展開され、そこから濁流となって解き放たれた、ビールのビーム。それはいともたやすく魔物らの身体を貫き、押し流し、その肉体を塵へと変えてしまった。
「……乙女の力に酔いしれるがいいですの」
今回紹介するのは「ビーム瓶・殺滅」!
魔法使いの一人、三瓶ときわが使うビール瓶型の魔法具だよ!
水属性と闇属性の魔法を得意とする彼女とは相性抜群! 闇の水といえばビールだよね!
必殺の威力を誇る光線技「ときわ式一番搾りスプラッシュ」でどんな魔物も一掃だ!
ちなみに彼女が生み出すビールの度数は5パーセントらしいよ!