『パンは4個までと言ったな?アレは嘘だ。』
『続きを書こうと編集を開く→矛盾とかないか確認する為に投稿済みの話を読み直す→気になる点を見つけて修正する→以下無限ループ』なのを、早くなんとかしたい作者です。
前回投稿からかなりの日が経ち、気がつけば年が明けてしまっていました。
すでに3月ですが、今年もゆっくりと投稿していきますのでよろしくお願いいたします。
『… 。』
「待て、待ってくれ!
まだ話したい事が沢山あるんだ!!俺達にはこれしか道がないのか!?本当に、彼を救う方法はないのか!?」
『…… 。』
「俺は諦めないぞ。
絶対に…諦めるものか。
二度も、彼にあんな辛い思いをさせたくない。」
『… 、 。
。
… 。 』
「待っ…
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:
暖かくてふかふかなベットの上で、俺は目を覚ました。
外からは子鳥達の囀りと、街行く人たちの話し声が聞こえてくる。
そんな清々しい朝とは対照的に、思考には濃い霧のようなモヤがかかっている。
(えっと…ここは宿のベットの上か。
俺は…
…ああ、そうだ
確か、報告を終えてからソフィア達と別れて、宿屋に帰ってきたんだ
そして…それから…)
濃霧の中で道を探るように、朧げな記憶を少しずつ思い出していく。
(『償い』…そう、ギルドマスターから受けた提案について考えていたんだ。
そして…
…………。
…だめだ、思い出せない。)
ベットに寝転がって色々と考えを纏めようとしていた所まではなんとなく覚えているのだが、そこからの記憶がすっぽりと抜け落ちている。
(状況から鑑みるに、あのまま寝落ちしてたって事か…
自覚がなかっただけで疲れが溜まっていたんだな。
…昨日は色々な事があったし、無理もないか。)
考えをまとめる前に寝てしまった事を少し悔やむ。
(でも、そのおかげで今日は早く起きれたな。)
早い時間に寝落ちしたのが功を奏したようで、ソフィア達との約束の時間前に目覚める事ができたのは不幸中の幸いだろう。
朝に弱い俺が目覚ましも無しに起きられる事など滅多にないので、少しの感動すら覚える。
(…こんな事で一喜一憂できるなんて、我ながら単純な人間だな。
とりあえず無事に起きれたし、さっさと準備してソフィア達と合流しよう。)
そうして朝の身支度を終えた俺は、受付で座っていた給仕さんに今日は朝食は必要ないと伝えて、宿の外に出る。
「二人ともおはよう。
待たせちゃったかな?」
「おはようございますアキラさん!
ちょうど私達も今来たところですよ!
ね?ソフィアさん。」
「…ええ。」
キースは変わらず明朗快活だ。
しかし、やはりというべきかソフィアのテンションが低い。
一晩休めば少しは落ち着くのではとも考えていたのだが、むしろ昨日よりも顔色が悪くなっているようにすら見える。
(もしかしなくても、昨日の出来事が原因だろうけど…)
声をかけたいが、どんな言葉を投げかけるべきかわからない。
不用意に投げかけた言葉が、彼女を更に苦しませてしまう可能性だって十分にある。
(今はそっとしておくべきか…
…いや。)
「…ソフィア、急だけど聞いてほしい。」
「……。」
依然として、ソフィアは下を俯いたままだ。
「…!?アキラさん!突然どうしたんですか!
…はっ!?
もしかして、愛の告白!?
きゃー!!!」
「キース。悪いけど真面目な話だから静かにしてて。
…ソフィア。
昨日の事は、あんまり気に病まないで欲しい。」
「………。」
わかってはいたが、ソフィアは変わらず俯いている。
優しく、責任感の強い彼女の事だ。
『無事だったから大丈夫』なんて言葉をいくら投げかけても意味はない。
…でも
「ソフィアは、命懸けで俺を助けようとしてくれた。
…俺は、ソフィアに心から感謝しているんだ。
…それは、きちんと分かっておいてほしい。」
「………。」
相変わらず沈黙し、視線を合わせてくれないソフィア。
だが、ほんの少しだけ。
僅かに、肩を震わせているように見えた気がした。
「…あの〜。」
突然、バツが悪そうな様子のキースが手を挙げながら口を開く。
「このタイミングで言うのは本当に、ほんとーに申し訳ないんですけど…
そろそろ、パン屋に行きませんか?
ほら、周りの視線が…ね?」
周りを見渡すと、俺たちを囲むようにして人だかりができ始めていた。
(えっ?
なんでこんなに人が集まって…
……あっ。)
王都のギルドから来たA級冒険者のソフィアが、朝から宿の前で人を待っていた。
それだけでもかなり目立つのに、肝心の相手は有名な冒険者でもない、まるでよくわからない無名の男だった。
しかも、あろうことかその男はタメ口、呼び捨てで彼女と会話している上、捉え方次第では意味深に聞こえるような会話をしている。
何も知らない通行人が足を止めるのも無理はない。
(…かなりまずいな、これは。)
合流した時は、通行人はせいぜいこちらを一瞥してから通り過ぎる程度だった。
きっと、『ソフィアのそっくりさんがいる』ぐらいの認識でチラッと顔を見ていたのだろう。
だが、俺が『ソフィア』と何回も呼んだ事で本人だと確信に変わったらしい。
「ほら、やっぱり見間違いじゃなくて本物のソフィア・アルファードだよ!あの有名な『緋色の魔女』!すげー!本物初めて見た!」
「まじか!王都ギルドのエースがこの街に来てるとは聞いていたけど本当に出会えるなんて思わなかったぜ。」
「てか、隣の男誰だよ。冒険者か?」
「知らねえよ。でも防具は着てるからそうなんじゃねーか?さしずめ、後輩の冒険者とかその辺りだろ。」
「でもよぉ?なんか馴れ馴れしく話してなかったかアイツ。
あの『緋色の魔女』を呼び捨てにする仲みたいだし、俺が知らないだけでそれなりに腕が立つ奴なのか?」
「よく聞こえなかったけど、あの人達さっき『愛の告白』とか『真面目な話』とか『知ってほしい』とか話してたわよ?」
「「「はぁ!?」」」
(…なんか、良からぬ誤解を生んでる気がするぞ。)
「と、とりあえず!
行きましょう!ね?ね?」
「あ、ああ。」
「………。」
慌ててその場を後にしようと、三人で目的のパン屋まで歩き出すが…
「あっ!『緋色の魔女』が何処かに行くぞ!
てか、もう一人女がいるじゃねーか!」
「あれは誰だ?冒険者か?」
「あー。
あの子は昔、ワシが一目惚れした初恋の子でな…」
「おいおいジーさん、まーたボケてんのか。
あんた、もう今年で79だろ。家でゆっくりしとけよ。」
「そこのジジイがボケてるのは今に始まったことじゃねーだろ!
あの女が誰かはこの際どうだっていい!今は『緋色の魔女』とよく分からんあの男だ!」
どんどん増えていく人だかりで、下手に動くのも難しくなってしまった。
「わぁ…アキラさん、どうしましょう。
このままじゃ人気のパンが売り切れちゃいます…」
「少なくとも、今俺たちが気にすべきはそこじゃないと思うぞ。」
とはいえ、これでは埒があかないのも事実。
何か打開策はないかなと、悩んでいたところで
「皆様方、如何いたしましたか?」
「そりゃ、あんた。
かの王都ギルドの『緋色の魔女』様が…
って、ええっ!?」
周囲に動揺が走り、自然と人だかりが割れていく。
そして、向こう側から一人の男性が歩いて来た。
その男は灰色のローブを身に纏った紺色の髪の男性で、見るからに魔術師のような風体をしている。
「あっ!ベルさん!
おはようございます!」
「ええ。おはようございます、キースさん。
それにソフィアさんも…
……ん?」
キースにベルと呼ばれたその男は、どうやら二人の知り合いらしい。
しかし、何というか…
(なんか、黙り込んでこっち見てるんだけど…
あれ?俺、この人とは初対面だよな?)
俺とは初対面のはずなのだが、キースやソフィアに向けていた好意的な表情とは異なる、怪訝な眼差しを向けられていた。
が、すぐにその表情は先ほど同様の柔らかな微笑みに戻る。
「……キースさん。
失礼ですが、こちらの黒髪の男性は?」
「あ!そう言えばお二人とも初対面でしたね!
こちら、つい先日冒険者になられたササキアキラさんです。
今から私とアキラさんとソフィアさんの三人でパン屋さんに行く予定だったんですけど、ソフィアさん目当てに通行人の皆さんが集まってきてしまって…」
「…なるほど。
……わかりました。
お集まりの皆様方!失礼ですが道をお譲りくださいませんか?
我々、これより『他言無用』の用事がありますので。
…くれぐれも、尾行などはしないでいただけると助かります。
よろしいですね?」
穏やかだが、それでいて圧を感じる物言いに、群衆はざわめきながらも散っていく。
まさに鶴の一声と言うべきか。
「……あなたが、あのアキラさんですね。
…初めまして。
お噂は予々伺っております、ええ。
私はベル・ラフターラ。
この街でA級冒険者として活動していまして、ソフィアさんとは旧知の仲です。
どうかお見知りおきを。」
笑みを浮かべながら自己紹介をしてくる。
どうやら、この人もA級冒険者らしい。
(ん?
…あの?)
少し引っかかる表現があったような気もするが、俺は自己紹介を始める。
「初めまして。
俺は佐々木明です。
ソフィアに森で助けてもらって、そこから色々あってE級冒険者をさせてもらってます。
よろしくお願いします。」
俺が自己紹介をしている間も、ベルの表情はにこやかなままだった。
…ソフィアの名前が出た瞬間、一瞬眉がピクリと動いた気もするが、きっと見間違いだろう。
(そう言えばさっき『あのアキラさん』って言ってたような…
でも初対面なのは事実だし、俺の考えすぎ…だよな?)
「はい、よろしくお願いします。
…さて。
話は変わりますが、お三方は今、パン屋に向かわれているとのことでしたよね?
ここで会ったのもきっと何かの縁、私もお店までご一緒させていただけませんか?」
「はい!私は全然構いませんよ!
さっき助けていただきましたし!」
キースの返事を聞いたベルは笑顔でうんうんと頷いた後、俺の方を横目で見る。
ベルの表情は確かに笑顔だ。
…笑顔なのだが、目は笑っていない。
「…アキラさんも、それで構わないですか?」
「…ア、ゼヒゼヒ!
イッショニキテクダサイ!」
考えすぎ…じゃないかも
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:
その後、無事に目的のパン屋に着いた俺たちは、各々が自分の食べたいパンを選んでいた。
好きなパンを選んでトングのような物で取り、木製のトレーに乗せていき、選び終えたら店員のいるカウンターでお金を払う。
と、日本の一般的なパン屋とほぼ同じ販売スタイルのようだった。
(なんか、見慣れた場所に来たみたいで懐かしい気分になるな。)
焼きたてのパンが並べられている陳列棚を眺めながら、かつての思い出に浸る。
(放課後に友達と駅前のパン屋に行って、買い食いしてたなぁ。
漢気ジャンケンで誰が買うか決めたりしてたっけ…
…………。)
俺が殺されたあと、家族や友達はどうなったのだろう。
(……………。)
「アキラさん、どうしたんですか?
さっきからぼーっと堅焼きパンを見つめて…
味が気になるんですか?」
「…あ、ああ。
ちょっと考え事してた。
…このパン、美味しいの?」
目の前に並んでいる、小さめのフランスパンのような見た目をしたパンを指さしてキースに尋ねる。
「もちろんです!
特に焼きたては中はふかふか、外はカリッとしていてすごく美味しいんですよ!
あ!でもこのパンは冷めると外が硬くなっちゃうので、食べるなら早めにしたほうがいいかもしれませんね!」
「へー、そうなんだな。
ありがとうキー……ス?」
お礼を言いつつ、隣でパンを選んでいたキースの手元を見た俺は、思わず絶句した。
「ん?
アキラさん、どうしたんですか?」
「いや、あの。
そのパンの山は一体…」
彼女のトレイの上には、様々な種類のパンが積み上がった山が出来上がっていた。
パッと見ただけでも、10個を優に超えているのがわかる。
「えっ?あっ!
いやー、えへへ。
今日はいつもよりも品揃えが多かったので、せっかくなら普段は買わないパンも食べてみよっかな〜みたいな…ははは。」
「…昨日、パンは4個までにするとか言ってなかったっけ?」
「………。
まっ、まあ!たまには我慢せずに沢山食べてもいいかなーって!
ほら!!昨日は大変だったじゃないですか!
沢山動いた分、いつもより多少多めに食べても大丈夫です!そう!大丈夫なんです!!
……ちょ、ちょっと!!
やめてください!そんな目で見ないでください!!」
果たして、キースのダイエットが終わる日は来るのだろうか。
答えは神のみぞ知る。
序盤のよくわからない穴ボコの会話パートは誤植とかではないです。
書いてる時に気になって調べてみたのですが、トングの歴史はかなり古いそうで、紀元前には既に原型となる道具があったみたいです。
燃えている薪など、素手で持てない物を掴むために作られたのだとか。
特に描写してないですが、ギルドに着いた時点で明君は『ウォッシュ』で綺麗になってます。
なので、汚い格好のまま寝たりはしてません。




