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転生冒険者がゆく異世界冒険譚  作者: カニ玉380円
第二章・転生冒険者とゴブリンロード
59/81

『ベリタス』

『生活習慣の乱れがひどいのそろそろなんとかしなきゃ』と思う今日この頃。


「いやー、ごめんって〜

謝るから機嫌直してよ〜」


反応すらせず再度帰ろうとした俺の様子をみて、少し慌てた様子のベリタスが止める。


「謝ると言うのなら、少しくらい申し訳なさそうにしてもいいと思うぞ。」


「反省してまーす。ごめんなさーい。

はーい。ちゃんと謝ったし、機嫌なおして早く来てよ〜」


ベリタスは相変わらず小馬鹿にしたような口調でそう言うと、怪しげな店が並んだ通りを進んでいく。

一々相手にしても疲れるだけだろうし、次からはスルーするようにしよう。


「…ところで、ここら辺の店は君の管轄下とか言ってたけど…」


「君じゃなくてベリタスだよ〜

ちゃんと名前で呼んでほしいな〜」


「俺のことサササって呼んでる人がそれを言うか…」


「む〜。確かにそれは言えてるけど…

でも、サササって呼び方気に入ってるからな〜

()()変えるのはちょっと…」


どうやら、サササ呼びをすっかり気に入っていたらしい。

逆に言いづらいような気がしてならないが、どうなのだろうか。


「…わかった。じゃあベリタス。

さっきここら辺の店はボクの管轄下にあるって言ってたけど、本当なのか?」


「そうだよ〜

ここら辺で商売をしてる人達はみんな『ワケアリ』だからね〜

色々あって、ボクが面倒見てるって感じかな〜」


ベリタスの言い分が本当だとしたら、ここら辺の店全体の取り締まり役が、自ら物を買うよう客を勧誘してきていると言うことになる。


それも常連でもなんでもない初対面の俺に対して、だ。

どう考えてもおかしい。


(店の売り子とかならともかく、店舗を取りまとめている程の人物が俺に物を買うように催促するか普通?)


そもそも、ベリタスの素性は未だによくわからないし、何なら急に現れたのでどこから出てきたのかすらわからない。


(…まさかとは思うが、店に入ったらコワモテのお兄さん達が出てきて『この契約書にサインを』みたいに脅されて、なんて………ないよな?)


さっき鑑定で見たマンドラゴラの説明に、高価な物と書かれていたのを思い出す。

ああいった()()()()を買うよう脅されて、無理やり契約書とか書かされるのではなかろうか。


不安になった俺は、再度ベリタスに質問する。


「…なぁ、ベリタスって一体何者なんだ?

あと、なんでわざわざ俺にこだわるんだ?他の客だっている………いないわけではないだろ?」


他の客が沢山いるだろうと言いたかったが、周りにそれらしき人影がなかったことを思い出して咄嗟に言い換える。


「もー、ボクはボクだよ〜

それ以上でも以下でもない。

サササにこだわってるってのは…

まあ…気分だよ。」


大事な事をはぐらかされているような気がしてならないが、おそらくしつこく問い詰めた所で話そうとはしないだろう。

コイツはそう言う奴だと、出会ってからの短いやり取りでなんとなく理解できる。


(まあでも、無理矢理契約書とかを書かされる可能性は低そうだよな…)


と言うのも、俺の金目当てであれば声をかけずに拉致でもした方がよっぽど効率的な筈なのだ。


しかし、わざわざ声をかけて俺が買おうとしている(武器)を売ると言ってきた。


人から金を搾り取る事が目的の人間が、わざわざこんなに回りくどい事をしてまで店に連れ込んで契約させようとするのか。


(第一、こんなに人が少ない通りなんだから拉致するなりなんなりできただろうしな…

まあ、だからといってベリタスが純粋な善意からこんな行動を取っているとも思えないけど…)


それにしても、さっきベリタスが一瞬だけ悲しそうな表情をしたような気がするが、ただの見間違えなのだろうか。


「よーし!ついたよ〜

ここがボク一押しの、選りすぐりの武器が揃ったお店だ!」


ベリタスが立ち止まり、ジャジャーンと言いながらこっちを向いて両手を大きく広げる。


俺は歩みを止め、店の方に視線を…


…………。


「…おい。」


「んー?どしたの〜?何かあったの〜?」


惚けた(とぼけた)ように聞き返してくるベリタス(店の管轄者)


「…これ、どう見ても『呪いの装備』だよな?」


店先に置かれた、黒い鎖で雁字搦めにされている明らかに()()()()()黒い大剣を指さす。

何かの甲殻や鱗のようなモノで作られた剣身には、所々血管のような赤い線が走っていた。

さらには禍々しく蠢く黒いオーラのようなモノまで放っており、所々人の頭蓋骨のような形に揺らめいている。


そんな、『ザ・呪いの魔剣』みたいなおどろおどろしい大剣が堂々と店先に立てかけられていた。


「なあ、これって明らかにヤバい奴だよな?」


「……ンー、ヨクワカラナイデスネ〜

サササクンノ、キノセイトカジャナイカナー?」


「ベリタスさーん。カタコトになってますよー。」


日本語習いたての外国人のように、不自然なカタコトで返事を返すベリタス(悪質商法の容疑者)


「キノセイダッテバー

……それよりも、ほら〜

よーくその剣を見てみてよ〜

細かい所まで手が混んでて、すごくカッコいい剣でしょ〜?」


「わーほんとだー。

この剣の赤い模様、よく見たら本物の血管みたいに脈打ってる〜。

剣だから生きてるわけでもない筈なのに、すごいなー。

それにしても、なんでわざわざ鎖で厳重に縛られてるんだろうなー

この鎖、持ってるだけで魂とか吸われそうな剣の見た目と何か関係があるのかなー

どうなんだろうなー、ベリタス。

んー?あれー?

おーい、なんで目を逸らすんだー?」


図星と言わんばかりに目を逸らすベリタス(確信犯)


(…曰く付き(いわくつき)どころか、持っただけで呪い殺される系の代物だろコレ。


下手に触ったり近づくだけでも魂とか吸われるんじゃないかって心配になるレベルだぞ…)


試しに鑑定で見てみようとも思ったが、それで呪われたりしたら嫌なので留めておく。


何より、俺たちが剣に近づいてから放たれてている黒いオーラが一段と強くなっているように見えるあたり、本当に魂とか吸われていそうで怖い。


「まあ、この剣は流石に()()()()()よね〜」


「違う違う、そうじゃない。

…てか、他のもこんな風に呪われた武器ばっかりなのか?

いくら武器が欲しいとはいえ、呪われている装備とかごめんなんだけど…」


「大丈夫!中に置いてある武器は()()()()()()()()ないから!

それに、サササなら装備しても問題なしだよ!

君ならできる!自信を持って〜」


もはや呪いがあるという事を隠す事すらやめ、『呪いの武器でもお前なら使える!』と開き直るベリタス(悪徳商人)


「いやいやいや!問題しかないだろ!呪いの武器を装備するとか絶対嫌だからな!」


「チッチッチ〜、サササはわかってないね〜

呪いの装備()()()()()カッコいいんじゃないか〜」


「俺はカッコ良さを命より優先する程命知らずじゃないんだよ!

もう帰る!」


呪いの装備が強そうでカッコいいという感性は分かる。

そう、確かに分かるのだ。

だが、だからと言って命懸けで身につけるほど俺は馬鹿ではない。


「カッコいいって所は否定しない辺りやっぱ好感持てるよサササ〜

でも、本当に何も買わなくていいの〜?

もしかしたら、『呪われてない装備』だってあるかもしれないよ〜?」


「その言い方をするって事は全部呪われた装備って事だろう?」


もう、確認しなくてもなんとなくわかる。

コイツ(ベリタス)がそんな風な言い方をしている時点で、呪われていない物はないのだ、と。


「ぐっ…勘が鋭いな〜…

で、でも、サササにだけ使いこなせる『呪いの武器』がないとは言い切れないだろう!

店の中を少し見るだけでもいいからさ〜

だから〜、ね?お願い!」


上目遣いでこっちを見ながら、ベリタスがそう提言してくる。


(…少しだけ、気になるのも事実なんだよな…)


この気持ち(好奇心)も、もしかしたら目の前の剣の呪いのせいなのかもしれない。


「…はぁ。

わかった。見るだけ見てみるよ。」


「おっ!ボクの今の表情の可愛らしさに心動かされたんだろう?そうだろう?

も〜!サササってば、照れちゃって〜

か〜わ〜い〜い〜♡」


「………」


さて、やっぱり帰るか。


「あーーっ!!!

嘘嘘!今のは冗談!冗談だから!

無言で帰ろうとしないでよ〜!」






〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:






「これとかどうかな〜?サササに似合いそうだよ〜」


嬉々とした様子のベリタスが、()()俺の目の前にある机に新しい武器を持ってきて置いていく。


目の前に幾つも置かれたそれらの武器を見ながら、少々うんざりしながら俺は口を開く。


「……なぁ、ベリタス。」


「ん〜?どしたの〜?」


「なんでさっきから()()()使()()()()()()みたいな奴ばっかり持ってくるんだ?

俺が絶対買わないってわかって持ってきてないか?」


「え〜?そんな事ないよ〜

全部サササにピッタリだと思って持ってきてるよ〜

ほら、よーく見てよ!ここのゴツゴツした部分で殴ったら絶対に痛いし、すごいダメージが出ると思うよ〜

これなら、モンスターもイチコロだね!」


ベリタスはそう言いながら、つい先ほど持ってきた血塗れのゴツゴツしたハンマーを指さす。

肉叩きの先端を大きくして、数段殺傷力を上げたような見た目をしているこのハンマー。

どこからどう見ても()()()()()()()()()()()にしか見えない。


「こんな物騒な物を担いで街中を歩いてたら、それこそ俺が不審者扱いされて社会的にイチコロだよ。

てか、さっきから持ってくる武器全部こんなんばっかりじゃんか…」


血塗れの斧、血塗れた短剣、血塗れたレイピア、血塗れた……


とにかく、揃いも揃って血みどろなのだ。


「全部既に血塗れなのって何とかならないの?

せめて綺麗に拭き取るとかさ…」


「その血が()()の媒体だから拭き取れないよ〜

血を洗い流したらただのハンマーになっちゃう。」


「万々歳じゃんか!なんでそうしないんだよ!」


「血を無理に落としちゃったら、その武器に篭った呪いが全部洗い流した人に移っちゃうからね〜

やるのは構わないけど自己責任だよ〜」


「…それ、武器の手入れすら碌にできないって事じゃねーか。呪いの武器って、本当に使い勝手が悪いな。」


「そりゃ、『呪い』ってついてるくらいだからね〜

使い勝手のいい効果がついてるなら、それはもはや『祝福』の武器って言っていい代物だもん。」


「ちなみに、そのハンマーにかけられた『呪い』ってどんなのなんだ?」


「このハンマーを使って生き物を殺せば殺すほどその威力を増すけど、それと同時に持ち主が他の生物に対して抱く殺害衝動が強くなるってデメリットがついてくるよ〜」


「デメリットが致命的すぎるだろ!買うかそんなもん!」


とは言え、呪いの武器なんて全部そんな物なのだろう。

それ(全部呪いの武器)を了承した上で見てるわけだし、買わないなんて当たり前と言えば当たり前だ。

ただ見るだけだし、そこまで問題は…


(あっ!

見るだけで身体に悪影響を及ぼす可能性もあるのか?

…今のところ体調に問題とかは特にないし、気にならないけど…)


最初はあれほどまで拒絶していた呪いの武器も、今では普通の武器を見るような気分で見れてしまっている。

呪われた武器の見過ぎで、感覚が麻痺してきたのだろうか。


(それにしても、今更だけど店員が1人も店内に居ないのはどう言う事なんだ?

店の裏で休んでいるんだとしても、来店者がいるのに店員が出てこないなんて事があるのか?)


店の中には沢山の武器が並べられていて、店の端にある少し空いたスペースに客が座るための椅子と武器を置くためのテーブルが置かれている。

店の奥にある会計のためのカウンターの裏には扉が見えるので、おそらく店員はその扉の先にいるはずなのだが…


(まあ、ベリタスがいるから出る必要がないと判断してるのかもしれないな。

…だからと言って、一回も姿を見せないというのは流石におかしいと思うが…)


この世界(異世界)は日本とは文化や常識が違うとはいえど、こんな事は果たしてありえるのか。


「なあ、ベリタス。この店の店員さんって出てこないのか?」


気になったので尋ねてみるが


「うーん。シャイだから出てこないんじゃないかな〜?」


と、ふざけた回答しか返ってこなかった。


「そんな事より!

サササが我が儘で優柔不断だから、全く武器が決まらないじゃないか〜

もう子供じゃないんだから、少しの呪いくらい我慢して買っちゃいなよ〜」


「最初から見るだけ見て買わずに帰るつもりなのでお構いなく〜。

てか、今の話聞いて思ったんだけど、子供の方が後先考えずに呪いの武器とか装備しそうじゃない?」


「言われてみれば確かに…

…と言うか、さっきからボクの発言適当にあしらってない?

お姉さん、サササがそっけない反応ばっかりで悲しいよ〜」


ベリタスはわざとらしくヨヨヨと言いながら、顔を手で覆って泣き真似をする。


2人でずっと喋っているせいだろう。

気がつけば(不本意ながら)ベリタスと話すのにも慣れていた。


「そりゃ、これだけ話し続ければ耐性もできるし、軽くあしらって聞き流すくらいの余裕は生まれるだろ。」


「ちぇ〜

こんなに綺麗なお姉さんが丹精込めて武器を選んで持ってきてあげてるんだから、もう少し食いついてくれてもいいんだけどな〜

ほら〜?」


うっふん、とセクシーポーズを取りながらキメ顔でそんな事を言ってくるが…


「残念ながら性格に難ありという事で…」


とりあえず、丁重にお断りしておこう。


「ちょっ、ちょっと〜!?

1人のレディに対して、それは流石に失礼じゃないかな〜!?

てか、性格に難ありとか不本意すぎるんだけど?」


「…隙あらば人を煽り散らかしたり、呪いの武器売りつけようとするのは真人間がする事じゃないと思うんだけど、ベリタスはどう思う?」


「……ほら、見て。ボクって愛嬌ある顔してるでしょ〜?」


バツが悪くなったのか、誤魔化そうと両頬に指を当てて『にへっ』と笑いかけてくる。



そして、俺とベリタスとの間にしばし流れる無言の時間。


「…………。」


「…………………。」


「…武器、探してくる。」


静まり返った空気に耐えられず、顔を真っ赤にしたベリタスがふいっと後ろを向いて別の武器を探しにいった。






今の、相当恥ずかしかったんだな。






〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:






そんなこんなで、その後も何個も武器を見ていたったわけだが


「てかさ…本当に今更なんだけどさ。」


「うん。どうしたの〜?」


俺が()()()()()()()()()()事を聞く。


「わざわざベリタスがここまで武器を持って来なくても、俺が店の中を見て回れば良くないか?」


「……………。」


(ん?なんで黙ってるんだ?)


「…まあ、いいよ。

好きに見て回ってくれても…

……でも、折角ならボクが選んできた奴を順番に見て欲しいかな〜〜、なんて…」


「…………。」


そう言って、少し悲しそうな表情をした。



(あれ?誰だ、この人。

俺が知ってるベリタス(煽リスト)じゃないぞ?


てっきり、『え〜?あんなに買わない買わない言ってたくせに興味深々じゃないか〜』とか煽られるとばかり思ってたんだけどな…)


「…なんか、めちゃくちゃ失礼な事考えてな〜い?」


「ア、イヤ…そんな事、ナイデス…ヨ?」


「動揺してカタコトになってるよ〜、サササくん。

…で、結局自分で探すの?」


本当は自分で興味がある武器を探して、見たほうが早く済む。

でも…


「いや、やっぱりベリタスに持ってきて貰おうかな。

…その…何というか……

そう!見るだけでやばい呪いの武器とか見ちゃったら嫌だし!」


ベリタスがどこか悲しそうだったから、なんて小っ恥ずかしくて言えなかった。


「ふふっ…


んふふふふ〜

男の子なのに、呪いが怖くて一人じゃ探しに行けないのか〜

もー!しょーがないな〜〜

でも安心して!そんな怖がりでビビりなサササの為に、このボク!

ベリタスちゃんが武器を選んできてあげましょ〜!」





うーん、やっぱ自分で探そうかな。






〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:






「本当に、色々な武器があったな…」


「そりゃ〜、ボクの一押しの店だからね〜

豊富な種類の武器があって当然だね〜!」


「結局、全部呪われてたけどな。」


本当に沢山の呪いの武器があった。


所持した者や切った相手から体力を吸い取る事で切れ味を増す刀に、使用者の精神を蝕む代わりに身体能力の底上げをする双剣、とても頑丈でよく切れる代わりに一度でも使うと死ぬまで手放せなくなるサーベルなどなど。

例を上げていけばキリがない。


(とは言っても、大半は似たような内容の呪いだったけどな…)


最も多い『利用者の精神に異常をきたす』系の呪いの武器は、ベリタスから紹介された武器の半分以上を占めていた。

後は『利用者や攻撃を与えた相手からの体力吸収』や『切れ味の代償に何かしらの大切なものを失う』系の呪いが多かった気がする。


中には『利用者の姿を醜い怪物に変貌させてしまう』なんて代物もあった。

改めて、『マジで武器買わせる気がないよな、コイツ(ベリタス)』と言う思いを抱いてしまうのは至極当然だと思う。


(なにせ、まともに使えそうな武器が全くなかったからな…

まあ、一通り武器は見終わっただろうし、もうそろそろお暇(おいとま)するとしようか。)


「じゃあ一通り武器も見終わったし、そろそろ帰らせてもらおうかな。」


「え〜もうちょっとお話しようよ〜武器はもういいからさ〜」


「目的がすり変わってるぞー。

…でもまあ、ベリタスと話しながら武器を見るの、少しだけど…その。…楽しかった。」


鳩が豆鉄砲を食らったように、硬直するベリタス。


「…んふふふふふっ……」


「なんでそこで笑うんだよ…」


「いや〜、嬉しくてさ〜

サササが喜んでくれたようで何よりだよ〜」


こちらに微笑みかけながら、嬉しそうにベリタスがそう言う。


「さ〜てと!()()()()()()をサササから聞けたし、サササの言う通りにそろそろ店じまいにしようか。

すぐに()()()()()ね。」


「え?それってどう言う…」


あれほど武器を買うように催促していたベリタスが、急にお開きにしようと言い出した事に驚く。

それに『すぐに送り届ける』って…


色々と混乱している俺は、どう言う事かベリタスの方をみる。


その表情は確かに笑っていた。でも、どこか物悲しそうだった。


「じゃあ、今日はここでお別れだね。

バイバイ、サササ。

()()()()()()()()、また会おう。」


「ちょっと待ってくれ!」


思わず椅子から立ち上がって大声を出した。




「……?どうかしましたか?」


ベリタスに投げかけたはずの俺の言葉が、()()()()()()()()()通行人を呼び止める。


(…は?

ここは…宿の前にある通り…?

なんでだ?あの店は?)


何が起きているのか理解できない。


「…何もないなら、もう行きますよ。」


意図せず呼び止めてしまっていた通行人が、少し不機嫌そうにしながら立ち去っていく。




俺は、夢でも見ていたのだろうか。






〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:





「ふう、無事帰れたみたいだね〜

お待たせ!もう出てきてもいいよ〜」


明が消えた武器屋の店内で、一人残っていたベリタスが声をかける。

同時に、ベリタスの影の中から一人の男が現れた。

赤い瞳の、黒いローブを見にまとった男だ。


「……ベリタス様。本当によろしかったのですか?」


「うん。

()()()()()沢山話せたし、聞きたかった台詞も聞けて大満足だよ〜

…それにしてもごめんね〜

()()()()()()()()()()()()()()()

特にあの大剣、()()()()()()()()()()()()()けど、運ぶ時大丈夫だった?」


「ベリタス様が我々に気を使われる必要などあるわけがありません。

ですが、()()()()を運ぶと言うのは…

()()()()()、近づくだけで力を吸い取られてしまいますので…その…」


「そうだよね〜、ごめんごめん!


…それにしても〜、いつも思うんだけど、()()()ってもうちょっとフレンドリーな感じで喋れないの〜?」


()()()()()()()()たる貴方様に、その様な口を聞く事ができる()()はまずいないかと…」


「一人称も、喋り方も、その他色々も含めて()()()()()()()()気兼ねなく話せそうな、砕けた感じにしてるつもりなんだけどな〜


む〜…そう、か…


…やはり、こちらの方が、汝等(うぬら)にとっては理想的なのかの?」


途端、ベリタスの声色と纏う雰囲気が変わった。

重圧で空気が揺れ、ガタガタと店内の武器が震える。


()()()()()()()()()()()()()()()()


「…はい。

僭越ながら、私めはそのように考えております。」


「…そうか。

であらば…一人称も『妾』にするとしよう。

…服も、着替えた方がいいのかの?


……これ、無言で頷くでない…」


ベリタスの着ていた黒いコートが煙のようにその形を崩し、瞬く間に真紅のドレスへとその姿を変えた。


雪のように白い髪や肌と対照的な色合いの赤いドレスは、その美貌をさらに引き立てているように見えた。


「はあ…この服装といい、喋り方といい、本当に煩わしくて敵わんの。

あの服や喋り方(コートや砕けた喋り方)に慣れてからは特に…」


「ご負担になられるようでしたら、私めの意見など無視して楽になさってください。」


「…まあ、それもそうだね。

ありのままが一番気楽でいい!


だって〜、さっきの喋り方って偉そうにふんぞりかえってる感じがしてなんか嫌じゃん?

それに『妾』ってなんだよ!女王か何かかよ!ってなるわけ〜」


ふっと、店の中に放たれていた重圧が解ける。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ベリタス様は、我らが『偉大なる女王』にして『産みの親である始祖』にあらせられるお方ですので、『女王』と言うのは間違いではないような気も…」


「…そこは、そう思ってても『うんうん、そうですね!』って頷く場面だよ〜

女の子が愚痴るのは共感が得たいからなんだからさ〜…」


「っ!

出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ございません…

この不始末、如何様(いかよう)にして償えば…」


「…()()()()()なんだよなぁ…

もっと対等な感じで話して欲しいって、()()()()()()()()であるボクは常々思ってるよ。


あ。罰についてだけど、ボクがたくさん出して散らかしちゃった武器片付けてきて〜

ほら、ボクって()()()()()()だから片付けるの苦手なんだよ〜」


「御意。」


そう言って、男はすぐに武器を店内に綺麗に並べ始めた。


「さて、と。

次にサササに会えるのはいつになるかな…

あ〜、待ち遠しいなぁ…」


頬を赤らめ、恍惚とした表情で何もない空間を見つめるベリタス。

その表情は恋する乙女のソレだった。


「…本当に、()()()()がお好きなのですね。

…それにしてもベリタス様、武器が一つ無くなっているようですが…」


「ん〜?あー、気にしないでいいよ〜」


「いえ…それが、『強大な力を持っているため、危ないので厳重に保管していた』武器が無くなっているのですが…」


「大丈夫だって〜

だって、その無くなった()()()()()()()()()()()

今どこにあるのかはわかるし、なんなら呪いだって思い通りに制御できるよ〜」


「……それは、尚の事ダメなのでは?」


「大丈夫大丈夫!


んふふふふ…

サササ、喜んでくれるかなぁ〜

()()()()()()()()()()し、使()()()()()()()()()()()。」






〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:





呪いの武器が揃う店にいたはずの俺が、いつの間にか泊まっている宿の前の通りに戻ってきていた。


(何というか、キツネにつままれたような気分だ…)


一瞬にして全く違う場所に移動していたと言う事実をすんなり受け入れることはできていない。

これが現実であると、何となく理解できたのはベリタスの『送り届ける』という言葉を聞いていたからだろう。


(…もう、『そう言う魔法(瞬間移動できる魔法)がある』って事で済ませよう。)


異世界では何が起きるかわからないし、こう言う事もあるんだろう。と半ば強引に納得する。


(それにしても、結局武器は買えずじまいだったな…

どれもこれも()()()()()()()()ヤバい奴ばかりだったし、しょうがない。

かと言って、今からまた街に出て武器を探しに行くって言うのも…)


…うん、武器は明日また探しに行こう。


とにかく横になって休みたかった俺は、そう決めると宿にある自分の部屋へと向かう。


やっと横になって休めると、安堵して部屋のドアを開ける。


そして鍵をかけ、いざベットへと…


「…ん?」


向かったベットの上には()()()()()()()()()()()が、それはもうこれ見よがしに置かれていた。


『今日は付き合ってくれてありがとう!

よかったら、この剣を使ってみてね!

君の友人、ベリタスより』


()()()でそう書かれた、一枚の紙と共に。

今回は大容量!

10000文字超えたのは地味に初めてかもしれないです。

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