『慰労会』
更新を前の頻度に戻したいと言ったな?
あれは嘘だ。
投稿おくれました。理由は聞かないであげてください。
「それでは、パーティーでの初依頼達成を祝して…」
「「「「かんぱーい!!」」」」
スライムと巨大ナメクジを倒し終えた俺たちは、ギルドで精算を終えた後、ビスタ行きつけの酒場に来ている。
「いや〜!一時はどうなることかと思ったけどなんとか無事に済んでよかったよかった!」
ビスタが、酒の入ったジョッキを片手に揚々と言い放つ。
「まあ、アレは無事とは言い難い気もするけど…」
ワインのような赤い色の飲み物を飲みながら、ラフィは少し心配そうな顔をしている。
「もう!飯が不味くなるしその件深く掘り下げるのは辞めようぜ!
ほら!せっかくの兄貴の奢りなんだしさ!」
「多少は自重してくれよ…」
「よーし!兄貴の財布が空になって、ヒイヒイ言い出すまで食べまくってやるぞ〜!!
あっ、そうだ!せっかくだし、店にいる客全員に奢るとかどうだ?勿論兄貴の奢りでな!」
乾杯するや否や、頼んでいた唐揚げのような肉料理を食べだしたミルシェがそんな事を言い出す。
すると、店の客達の視線がなんとなくこちらに集まった。
「おいおい、確かに奢るとは言ったが、流石にそんなにめちゃくちゃな奢り方なんか絶対しねーよ!」
「か〜ら〜の〜!?」
「だから絶対奢ったりしねーーって!!」
「「か〜ら〜の〜!?」」
「ちょっ…ラフィまで乗って来んのかよ!!だから俺は全員に奢るなんか…」
「…食い逃げ、ゲンコツ、半泣きで弁償(ボソッ」
「よーし!お前ら!!好きなもんを頼め!!俺が奢ってやるぜチクショーが!!!」
「「「「おーーーー!!!」」」」
ビスタの発言を聞いた客たちの歓声が店中から上がった。
「太っ腹だなぁ!助かるぜぇ!!おーい!こっちに『大牙猪のスペアリブの山賊焼き』二皿追加で頼む!!あと、『トゲカエルの串焼き』も一皿よろしくな!」
「じゃあ儂はキンキンに冷えた『スネークビア』と『トゲカエルの串焼き』二皿を頼むとするかの!ありがとうの!青年!」
ビスタの宣言の直後、次々に他の客が注文を追加していく。
「よかったじゃん兄貴!みんな喜んでくれてるぜ!」
「うるせぇ!!こちとらガチで財布が空になりそうで気が気じゃねーよ!」
「無銭飲食の代償は大きいってことよ、ビスタ。
自分の罪を噛み締めるのね…」
「え?ミルシェだけじゃなくてビスタさんも食い逃げしてたの?」
思わずそう尋ねると、自分の恥ずかしい話題にミルシェとビスタが同じように顔を顰めた。
「む、無銭飲食って言っても、あの時のアタシはまだ小さくてお金の仕組みとかよくわかってなかったから!!お金の事ちゃんとわかってたのに食い逃げした兄貴とは違うから!!」
「違くないわ!お前も同罪だ!歳がいくつだろうと罪の重さは変わらないからな!俺と共にごうを背負え妹よ!!」
「醜い兄妹喧嘩ねぇ。
全く、二人とも子供の頃から全然変わらないんだから…少しは成長しないとダメよ。」
「「誰が子供のままだ!成長してるわ!」」
息ピッタリな二人の返事に思わずみんなが吹き出して笑った。
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そんなこんなで他の客も交えつつ、わいわいと話をしながら食事を進めていると
「それにしても…ソフィアさんの魔法、本当にすごかったなぁ…
ロックタートルが一撃でやられたのを見た時は、あまりに唐突だったもんだから『A級冒険者だし、そういうもんなんだろう』って事にしてたからそんなに気にならなかったけどさ…」
ビスタが思い出したようにそんな話を始める。
「まあ、A級とかS級冒険者の通り名持ちの人達って、大体の場合色々と現実離れしてるものね。主に武勇伝とか噂話とか諸々が…」
すると、会話を聞いていたほかの客達が話に入り込んできた。
「A級冒険者のソフィアって…もしかして冒険者の兄ちゃん達、あの『緋色の魔女』様に会えたのか!?マジかよ!羨ましすぎるぜ…」
「マジかよ!!『緋色の魔女』って、あの有名な王都ギルドのエースじゃねーか!!今エルドに来てるってことか!?」
「てか、ロックタートルって、森に住んでる馬鹿でかい亀の化け物だろ!?あんなのを一撃で倒しちまったのかよ!?」
「うそ!?あのソフィア様がこの街に来てるの!?こうしちゃいられないわ!どこに行けば会えるかしら!?ぜひ教えて頂戴!!」
店のあちらこちらから次々と質問を投げかけられ、その熱量と気迫にビスタは思わずたじろぐ。
「ちょ…落ち着け!お前ら、一旦落ち着けって!一つ一つ順番に話していくから!」
そう言ってビスタは後ろを向くように椅子を動かすと、殺到しているソフィアに関する質問を捌き始めた。
「どこで『緋色の魔女』に合ったんだ!?森の中か!?それとも街の中でか!?もしかして、今ギルドに行けば会える!?」
「馬鹿野郎!ロックタートルを倒したの見たって言ってたんだから森の中に決まってるだろ!だよなぁ!?『緋色の魔女』が今どこにいるかはいいから、ロックタートルを倒した時の事を教えてくれよ!!」
「今ソフィア様はどこにいるのかを聞いて、本人とお話しした方がいいに決まってるでしょ!!ああ!今すぐサインを貰いに行かなきゃ!!」
「ちょ、落ち着け!!順番!順番に質問してくれ!!一気に質問されても聞き取れねーから!!」
我先にと押し寄せる質問を御そうと苦戦するビスタの努力も虚しく、怒涛の質問攻めは一向に収まる気配がない。
ビスタがこちらに助けを求めるような視線を向けていた気がしたが、おそらく気のせいなのだろう。
……うん、気のせいだと言うことにしておこう。
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結局、絶え間なく押し寄せる数多の質問は、ビスタが一人で質問を受け付ける形で落ち着いた。
彼は尊い犠牲となったのである。
「まあ、冒険者が酒場で質問攻めに合うなんてよくあることだし、ほっといても大丈夫よ。
そういえば二人に聞いておきたいんだけど、今日のスライム討伐の依頼を受けてみてどうだった?
例えばそうね……手応えとか、気づいた事とかがあるようだったら是非教えて欲しいわ。」
「最初は大変だったけど、コツが分かってからは楽になったかなー。アキラは?」
「まあ、俺もミルシェと同じような感じかな…」
「うーん。まあ、スライム討伐の依頼だし、苦戦もしてなかったものね…
そもそも、アキラ君に至っては初見の筈のスライムを素手で難なく倒してたし…」
ラフィは少し考え込む。
「…じゃあ、何か疑問に思った所とかないかしら?ほら、普段はどんな風にモンスターと戦っているのか、とか。
気になった事をなんでも聞いてみて。」
「アタシは家に兄貴が帰ってくるたびに嫌と言うほど聞かされてるから質問とかはないな〜。」
「…まあ、ミルシェちゃんはそうでしょうけどね。アキラ君は疑問に思ったこととかなかった?」
(質問か…聞きたい事と言えばやっぱり魔法についてとかかな。)
『スキル』や『特殊ステータス』と言うのがどう言った物なのかは、実際にスキルのレベルを上げたり他人から話を聞くことでなんとなく理解はできた。
だが
(魔法に関しては、実際に使われてる所しか見てないもんなぁ…)
目の前に火柱を立ち上らせる魔法や、身体の汚れを一瞬で落とす魔法を実際に見たところで、それで『魔法を理解した』などと言い張るのはあまりにも浅はかだ。
(この世界では魔法の仕組みとかは常識なのかもしれないけど、ここで聞いておかなきゃ後で後悔しそうだな。『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』とも言うし…)
「ラフィさんやソフィアが使っている『魔法』について教えて欲しいです。」
途端、何故かミルシェが凍りついたように硬直し、
「えっ、ちょっ!?ア、アキラ?酒の入ってるラフィ姉に魔法の話はダm…」
「おお!アキラ君も魔法に興味があるのね!いいわ!たっぷりと話をしましょうか!もちろん、ミルシェちゃんも強制参加ね!」
ミルシェが何か伝えようとしていたようだが、その言葉は上機嫌になったラフィの大きな返事によってかき消された。
しかし、ラフィの強制参加という単語を聞いた後のミルシェの目が、みるみる内に死んだ魚の目に変わっていくのを見て察する。
(これ、もしややらかしたのでは?)
『開けてはならない箱を開けてしまったのではないか』と、そう思わずにはいられなかった。
今回はビスタ虐会。ただひたすらに不憫。彼が何をしたって言うの!?




