『会合4』
前話からめちゃくちゃ開いてしまいました……
色々と立て込んでて書く時間取れないの辛いです…
でも、やっとこさ落ち着いてきたんでこれからは前のような頻度で投稿できたらいいな〜と思っております。はい。
「襲撃のタイミングをより正確に、ねぇ……森の中に警備隊でも配置して奴らの動向を見張るのか?」
「人的資源に余裕があるならば、今ウィリアムくんが言ったような野営による警備で襲撃を察知する方法もありなんだけど,残念ながら人手不足につき戦力的に不安が残るのが現状だ。
貴重な戦力を草臥させて、いざ戦いが始まるといった時に十分な力を発揮できないようでは本末転倒だろう?」
野営は経験が少ない者にとってはかなりの負担となりうる行為と言えるだろう。
森の開拓済みのエリアでの野営だとしても、多くのモンスターが生息している事には変わりないからである。
加えて、警備をするとなると夜営をする必要が出てくる。
辺り一面が暗闇となる危険な森の中で夜通し起きて危険に備える見張りを行うのは経験がある者でもかなりの体力を使う。
それ以外の人員も襲撃された際に迎撃の為の戦闘員として常に気を張っておかなければならない。
そのため、大抵の冒険者は野営をする必要がないように日帰りで完遂できる依頼を受けると言うのが一般的で、『野営をせざるを得ない状況はなるべく作らない』様にするのは冒険者の中でも常識である。
もっとも、今回の森での警備の様な目的の場合であればその限りではないのだが。
「加えて、襲撃に来るのは特殊なゴブリンロードと、それに率いられたゴブリン達だ。
冒険者を奇襲して事実と物証諸共隠蔽するくらい几帳面で狡猾な奴らの事だ。
野営をしている冒険者に気がつかないなんて事はまずないだろうし、警戒せずに放置していてくれるとはとても考えられない。
……それどころか、野営をしている冒険者を利用して襲撃を完遂させようとする可能性を考慮しなければならなくなるだろうね。」
「野営の冒険者を……利用…?一体どう言う事だ?」
ナタの発言を聞いたウィリアムが思わずそう口にし、便乗するようにシャルも頷く。
「ああ、確かに冒険者を利用するって言い方じゃあ、少し分かり辛かったかもしれないね。
冒険者…と言うよりは野営の目的そのものを利用されかねない、と言うべきだったね。」
「……んん?」
「……じゃあ、先にウィリアム君に幾つか質問させてもらおう。
今回の野営は何のために行うものだい?」
「それは『ゴブリンロードとその軍勢が攻めてくるタイミングを知るため』だろ?
だからこそ、なんで利用されるなんて事が起きうるのかわからないんだが…」
何故そんな事を聞くのか…と訝しげな顔をしながらそう答えるウィリアム。
「では、先程言ったことをゴブリンロードが正確に理解、把握しているとした場合、向こうがとれる対策や策略には何がある思う?」
「…野営している冒険者を殺すとか…その冒険者の持ってる物資を強奪するとかか?」
「それなら別に『野営の目的を正確に理解、把握』していないモンスターでもできるよね?
実際に、野営の基地を見つけたモンスターが基地を破壊するなんてことは前例としてザラにあるわけだし…
今回の件で考えて欲しいのは『夜営の目的を理解した事で取ることができうる対策、もしくは策略』だ。
襲撃の相手が人間だと、そう思って考えた方がいいかもしれないね。」
その言葉を聞いた後、しばらく考え込むウィリアム。
そして小さく「あ」と呟いた。
「まさか…騙すってのはそう言う事か?」
「お!わかったかな?じゃあ続けて。」
「…野営している冒険者は『襲撃の為に街に侵攻してくるゴブリンの群れを探し、その動きを把握する為』に森に陣取って監視を行う。
裏を返せば、それは『ゴブリンの群れを見つけ、相手の動向さえ把握すれば野営の目的は達成』って事でもある。
つまり、利用するってのは『野営している冒険者に囮となる群れを敢えて発見させる事でこちらに誤った情報を握らせる』…みたいな事だと思ったんだが、どうだ?」
ウィリアムが言い切ると、ナタは肯定の相槌をうった。
「その通り、正解だ。
向こうの目的はあくまでも『人間の街を襲撃する事』だろうし、『街を防衛する冒険者をわざわざ全員倒してから襲撃を行う』必要なんて無いからね。
より確実に人間の街に侵入する事ができるのであれば、そちらの方を選択すると言うのは、囮となる軍勢を野営基地に接触させたりして来てもなんら不思議では無い。
寧ろ、森に入った冒険者を奇襲した際の手口からも、『避けられる面倒事に突っ込んでいくようなマネは極力避けようとする』と考える方が妥当だろう。
更に向こうがとりうる行動を推測して挙げるとするなら、『野営基地のある場所を基準とした襲撃ルートを作成し、見つからないように襲撃を行う』とか、『街への襲撃の前に一斉に野営基地に攻め込み、情報を本部に伝えさせる前に無力化させる。』あたりだね。
まあ、要するに『人間のことを理解している』相手に『何も理解できていない』モンスターを相手取る時の対処をとるのは好ましくないって事。
……ってなわけで野営による警備の案は却下したんだけど、みんな分かってくれたか……な?…えっと、シャルちゃん?」
そう言いながら目の前の四人を見回したナタだったのだが、部屋の天井の辺りをじっと眺めて上の空なシャルの様子を見て語尾をすぼめていった。
「あっ?……ああ。……とりあえず、野営するのはあんまり良くないって事はわかった。……てか、さっきから天井のあたりでブンブン飛んでるあの羽虫が気になるんだが、誰か魔法かなんかで殺してくれねーか?」
「…まあ、さっきの話に対しての納得は一応してくれたようだね。…とりあえず、あの飛んでる虫の事は無視しといてくれ………あ、今のわざとじゃないからね?
………よし。じゃあ、話の続きといこうか。
野営の様な『相手に情報や有利性を与えうる方法』は先程説明したようにダメだ。
故に、向こうの襲撃のタイミングを知る際には『相手にこちらの動向が一切悟られない、もしくはほとんど把握されないような方法で四六時中動向を監視し続ける』必要がある。
加えて、相手の力量に対してやや戦力不足であると考えられる現状、『人的資源を殆ど必要としない』手段を用いた監視が望ましい。
なので、これらの条件をある程度満たした方法で襲撃を観測しようと考えている。」
言い切ると同時、ナタに集まる何とも言えないじっとりとした視線。
「……うん。わかるよ。みんなの言いたい事はよーくわかる。
『何言ってんだコイツ。』って思ってるんだろう?
そりゃあ、『こんな無茶苦茶な条件を満たせる監視方法があるわけないだろ』って思うのは当然だし、ふざけていると取られても仕方のない事だ。
………だから。」
そう言って、天井を見上げたナタは
「百聞は一見にしかず、君の事を皆んなに話したい。
そろそろ、こっちに来てもらっていいかい?」
今なおブンブンと飛んでいる羽虫に向けて、そう語りかけた。
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:
「ん?ギルマス?一体誰に話しかけて」
天井に向かって何か意味深な事を言ったナタにウィリアムがそう訊ねようとしたその時
コンコン
突然、会議室のドアがノックされ、「失礼します」と言って一人のギルド職員が部屋に入ってきた。
「お申し付け通り、椅子をお持ちいたしました」
「ああ、ありがとう。良いタイミングだね。」
円卓の空いたスペースに椅子を置き、ギルド職員は一礼して部屋を出て行った。
そんな、当たり前のように進んでいった目の前の状況に、理解が追いつかず困惑する会合の参加者。
その様子を見て、ナタはどこか満足げに4人を見回す。
「…今回の会合の参加者はA級冒険者だけと聞いていたと思うのですが…
今この街にいる該当者は私を含めた4名だけではないのですか?」
呆気に取られながら、ナタに質問を投げかけるベル。
「ああ。それはね…」
コンコン
ベルへの返答をしようとしたナタの言葉を遮るように、再びドアがノックされた。
「つまり、こういう時さ。さあ、入って入って!」
そう言って、嬉々としながら扉の向こうの人物に部屋に入るよう催促するナタ。
すると、ドアがゆっくりと開かれ、一人の女性が部屋に入ってきた。
「し、失礼します…」
その女はオドオドしながらも、先程ギルド職員によって置かれた椅子に腰掛ける。
緊張しているのか手足がふるふると震えていた。、
「今日は来てくれてありがとうキースちゃん。さっそくで悪いんだけど………軽い自己紹介とかしてもらってもいいかい?出来る範囲でいいから。」
「えっ?
………あっ。
は、初めまして!!
……わ、私はキース・ローザリー、という者、です。
あ、えっと……い、一応D級冒険者をさせてもらって……ます。
よ、よろしくお願いしましゅ!」
最後に盛大に噛み、顔を真っ赤に赤らめるキース。その目尻にはうっすらと涙を浮かべていた。
「………ギルマス。あんた鬼だよ…」
赤面した顔を両手で覆い、依然としてふるふると震えている哀れな被害者を見て、ウィリアムが思わずそう口にする。
「…ごめんね、キースちゃん。まさかここまで緊張してるとは思わなかったんだ…」
ナタが申し訳なさそうに謝罪をすると、顔を両手で覆っていたキースはバッと手を離す。
「い、いえ!ギルドマスターさんは悪くないんです!
ただ…その、なんというか……うまく話せなかった私が悪いので……
えっと……」
緊張と羞恥心で所々どもりながらも、必死にナタは悪くないという弁明を試みようとするキース。
「オッケー、わかった。
その、無理に話さなくても大丈夫だから、な?
そんなに気を使わずリラックスしてくれ。」
あまりにも居た堪れないキースの様子を見かねたウィリアムが、気遣ってそう言うが…
「ひゃ、ひゃい!!お気遣いありがとうございましゅっ!!」
寧ろ余計に緊張してしまい、返事を噛みまくるキース。
そもそも、一般人にとってA級冒険者というは文字通り雲の上の存在と言っても過言ではなく、話す機会など殆どないに等しい。
同じ冒険者となれば一般人に比べて会うことのできる可能性は高くなるが、それでもやはり遥か上の存在であると言う事実は変わらない。
そんなA級冒険者4名とエルドのギルドマスターの中に入って話をすることが如何に大変な事なのかは言うまでもないだろう。
「…察するに、そちらの彼女が襲撃のタイミングを知る為の要となる人物…という事でしょうか?」
緊張で固まっているキースを横目に、ベルがそう問いかけるとナタは大きく頷く。
「その通り。今回の作戦において、彼女が持っている特殊ステータスがとても重要になってくるんだ。
でも、彼女が持つ能力についての説明を私が口頭で言うだけではあまり実感が湧かないだろう?
だから能力の実演の機会も兼ねて、今回の会合に彼女を呼んだわけさ。」
「じゃあなんでギルマスは最初っからここにキースを呼ばなかったんだ?情報を共有するために初めから話を聞かせておくべきじゃないのか?
あと、俺たちに一切キースの事を伝えていなかったわけも教えてくれ。」
「何故キースちゃんを呼ばなかったのかって質問は彼女の能力を伝える際に言うとして、君達にキースちゃんの事を教えてなかったのはサプライズの為さ。
想像以上にみんなが驚いてくれていたから私は大満足だよ。」
「…………」
「…無言の圧をかけるのはやめて欲しいな…
と、とにかく彼女を最初からこの部屋に呼ばなかったのは何故か話していこう。
その理由はズバリわざわざここに呼ぶ必要がなかったからだ。」
「……?
今回の作戦において重要な立ち位置になるという彼女が、森の異変についての詳しい話を知らなくていいと言うこと…ですか?」
「違うよ。今回の会合で、キースちゃん自身がここ、つまり会議室に来る必要はないと言いたかったんだ。
さて、君の能力について話してもらいたいんだけど、いいかなキースちゃん?」
「は、はい!
えっと…わ、私の能力は…あの…
じ、実際にやってみますので…その…見ていていただけると、嬉しい…です。」
キースはそう言って目を閉じた。
すると、先程から天井で飛び回っていた羽虫が図ったかのように下に降りてきてキースの目の前でピタリと止まった。
「…円を…描くように、さ、3回飛ばし…ます。その次に、ギ、ギルドマスターさんの目の前に、と、止まります、ね。」
目を瞑ったままのキースがそういった途端、キースの目の前で止まっていた羽虫が3回空中に円を描くように飛び回った。
そして一直線にナタの方向へと向かっていき、ピタリと止まった。
「……こ、これが私の特殊ステータスの『虫導者』です。沢山の虫を、操ったり、視界を、共有したりできます。」
キースは、自信なさげにそう言った。
キースちゃんは普段はもっとハキハキ喋る明るい子なんです!
ただ、あまりにもやばい環境下に放り込まれて緊張しただけなんです!
例えるなら、ただの一般人が超大物俳優や大御所芸能人が話し合ってるところに放り込まれて『じゃ、自己紹介よろ』って言われたみたいな感じ。そりゃ噛むわ。
それにしても、やっと長い長い会合が終わりますね……ところで主人公は何処へ?




