『トラウマに打ち勝つ!』
久しぶりに体重計乗ったら2キロ増えてました。
なんでだろ?(現実逃避)
探していたアレが、まさか俺のトラウマそのものだと言う残酷すぎる現実を受け入れきれず絶句する。
すると、完全に沈黙した俺の様子を見たビスタが、少し申し訳なさそうにしながら声をかけてきた。
「……ごめんね。アキラ君、スライムと戦ってた時は全然大丈夫そうだったからオオマヒナメクジと戦っても問題無いだろうって考えていたんだ…」
ビスタの言葉を聞いて気がついた。
(そうか…
スライムを最初に見た時に、何故かなんとなく抵抗があって躊躇ってしまっていたんだった。
あれは、どことなくナメクジを彷彿とさせる雰囲気と質感だったからだったのか…)
あの時、身体を粘液のような物で覆っていたスライムに対して、無意識のうちにナメクジに通ずる物を感知した。
それが、一種の拒絶反応とも言える恐怖心のような感情を芽生えさせたのだろう。
と、一人で納得していた俺に対して、ビスタがまた声をかけてくる。
「苦手な相手と戦う事を強要するなんてしたくないし……アキラ君はラフィと待っていたほうがいいんじゃないかな?」
『………ごめんなさい。あれだけは無理です。俺もラフィさんと一緒に待たせてください。』と、そう言えば今はどうにかなるだろう。
しかし、次にまたあのナメクジのようなモンスターにあったときはどうするのか。
(…逃げてばかりじゃ、何も変わらないよな。
それに、ついさっき勇気を出せるように頑張っていこうって決めたばかりじゃないか…)
敵は、ロックタートルの様な倒せない危険な相手という訳ではない。
むしろ、初心者である俺達のために選ばれたモンスターなのだ。
(そんな相手からすら、『気持ち悪いから、嫌いだから』だなんて甘えた理由で逃げるのか?)
「………いえ。俺も、戦います。」
こんな所で怖気付いてたらダメだ。
そう自分を奮い立たせ、ビスタにそう告げる。
「……別に、無理して戦おうとしなくてもいいんだよ。誰にだって苦手な物くらいあるんだから…」
俺が予想外の返答をした事に少し驚いているビスタ。
先程の俺の姿を見ていれば、この返答に驚くのも無理はないだろう。
「…本当に、戦うのかい?」
「…はい。
…………でも」
「でも?」
トラウマから逃げずに戦う。
そう決心はした。
でも…
それでも……
「……剣を、貸して欲しいです。」
流石に、トラウマと素手で戦うほどの勇気は持ち合わせていないです。
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:
ビスタが貸してくれた長剣を構えつつ、対峙しているヌラヌラとしたアイツを直視する。
「うっ………」
目の前の巨大ナメクジを凝視したせいで、かつてのトラウマがフラッシュバックし、たまらずえずきかける。
目の前の木の上で伸びながら這いずり回るアイツは、さながら木にまとわりつく蛇のようだ。
(まあ、そっちの方が数倍マシなんだけど……
それにしても、マジで気持ち悪いな…)
目を慣らしておこうと、先ほどからずっとナメクジの事を見ているのだが一向に立った鳥肌が収まる気配がない。
むしろ、見続けるにつれてどんどん気持ち悪い点を見つけていっているぐらいだ。
(…今まで、こんなにナメクジをまじまじと観察したことなんてなかったからな…
……見続けた所で慣れないようだし、とりあえずは鑑定眼で詳しい情報を得た方がいいか。)
ナメクジに慣れるのは諦め、鑑定眼で目の前のナメクジを鑑定する。
・オオマヒナメクジ
クロマヒタケの様な麻痺毒を持つキノコを好んで食べるナメクジの魔物。
体表を覆う粘液に麻痺毒を持つ事で外敵から身を守る。
(……説明文の内容的に、素手で戦っちゃダメなタイプの奴じゃないかコレ?)
オオマヒナメクジは縮んでいる時ですら1メートルほどの大きさのモンスターなのだ。
そんなナメクジを食べようとする大きさの敵から食べられないよう身を守るための麻痺毒が弱いなんて事があるのか…
(もしかしなくても、コイツと素手なんかで戦ったらすぐに毒で体が麻痺するんじゃないか?)
肌に触れただけで麻痺するほどの強力な代物なのかはまだ不明だが、少なくとも体によろしくないのは明白だ。
(まあ、粘液を浴びないように気をつけるか。
そういえば、『パーティーでの戦闘にもってこい』という理由はなんなんだろうか…)
確か、ビスタがコイツを選んだ理由は『状態異常に慣れてもらう』だった筈だ。
それと、『パーティーでの戦闘』との結びつきがイマイチわからない。
(……ビスタもラフィも戦闘に参加しないみたいだし、『ミルシェと連携して状態異常を喰らわないように戦う』というのが目的だったりするのか?)
と、物思いに耽っていた俺だったが
「なあアキラ…まだ攻撃を仕掛けねーのか?」
先ほどからウズウズしているミルシェが急かされた事で我に帰る。
(てか、ラフィはナメクジを嫌がってたのにミルシェは全然平気なんだな…)
この世界の人々はモンスターに慣れているから逞しいのだと考察していたが、もしかしたらミルシェが例外なだけかもしれない。
そんな逞しいミルシェは、先ほどから使っていた短剣を片手に、恐れる様子もなく木を這いずるナメクジに近づいている。
腰に長剣も差しているみたいだが、そちらは鞘に収まったままのようだ。
「ミルシェ…そんな短剣で大丈夫なのか?」
長剣ではなく短剣を使おうとしているミルシェを心配に思って尋ねる。
すると
「大丈夫だ!問題ねぇ!」
ミルシェはこちらにドヤ顔を向けながら、自信満々にそう言い切った。
……あれ、それってダメな奴では?
最後の二人のやりとりのネタがわかる人は多分同年代だと思います。
それにしても、オオマヒナメクジとか実際に遭遇したら発狂しそう(作者はナメクジ嫌いです。雨の日に駅のホームの椅子に座った時、気づかずナメクジの上に座ってしまいました。潰れたナメクジがズボンのお尻の所ににくっついていたのを見つけた時、声にならない悲鳴を上げたのは今でも覚えています。)。
ちなみに後書きという名の補足説明はお休みです。




