『エンカウント!2』
正月気分が抜け切れない…
どう見ても怒っている様子のソフィア。
宥めるためにも、こんな行動をとった意図についてちゃんと知ってもらわなければ…
そう思った俺は、自分の言い分を伝えようと試みる。
「ソ、ソフィアはA級冒険者の会合があって依頼に行けないって聞いてたから…その、迷惑をかけたくなかったんだ…」
「まあ、たしかに午後からは会合があるから同行は難しいわね…
でも、だからといって朝早くから一人で依頼を受けにいかなくてもいいでしょう?行くにしても、もう少しくらい宿屋で待ってくれたってよかったと思うのだけど…
とにかく、私には気を遣わないで、もっと遠慮なく頼って欲しいの。
……私に気遣って行動した矢先に、アキラが危険な目に遭う方がよっぽど辛いし嫌なの…」
そう言って、少しシュンとした表情になるソフィア。
そんなソフィアの顔を見て、俺はやっと気づいた。
(……ああ、俺は最低だ。)
ソフィアの優しさに甘えっぱなしなのにも関わらず、冒険者になってからは心のどこかで『何をしても自分の勝手』だと勘違いをしていた。
仮に、俺の好き勝手な行いによって何か問題を起こしてしまったら、結果としてソフィアに大きな迷惑がかかるにも関わらず、だ。
何より、ソフィアは俺のような素性もしれない人間を善意で保護してくれるほど優しい人なのだ。
きっと俺が身勝手な行動をとって起こした不祥事ですら、自分に責任があると考えるに違いない。
『自分がちゃんと見守っていなかったから俺が問題を起こしてしまった。私が悪いのだ。』と…
(本当に…俺は、最低な馬鹿野郎だ……
これじゃあ、ただのヒモなんかよりもよっぽどタチが悪いじゃないか…)
相手の為を思って行動しているように見せて、やっている事はと言えば己の体裁を整える為の行動ばかり。
『自分を助けた上に、その後の生活の手助けすらしてくれている恩人。そんな相手に対して、自分の予定すらまともに報告もしないまま好き勝手な行動をとる』など、今思い返せばあまりにも自己中心的かつ傲慢過ぎる行為だ。
『早く強くなって、ソフィアにかけている負担を減らしたい』などと言った綺麗事でいくら着飾った所で、結局は自分の自己満足のために取った行動にすぎない。
相手の『本当の思い』については一切考えず、『己が考えた相手にとって喜ばしいと思う事』を為すことにばかり注力しているにすぎないのだから…
(挙句、『会合の予定があると聞いていたから、ソフィアに迷惑をかけないよう報告をしなかった』だなんてふざけた事を、自分を心配して探し出してくれた恩人に言い放つなんて…)
自分の行いが『相手への思いやり』ではなく『ただ自己満足』であると気づけない。
さらには、そんな自分の過ちを相手のせいにして蔑ろにしようなどと…
これを最低な馬鹿と言わずして何と呼ぼうか。
「ソフィア、俺の身勝手な行動で心配をかけてしまって本当にごめん。」
頭を下げて謝る俺の様子を見て、ソフィアは少し目を見開く。
「あ…そんなに本気で謝らなくても大丈夫よ。
…ただ、心配になるから一人で何かしに行く時は教えておいて欲しいってだけなの。これから気をつけてくれればいいから…」
「ああ、わかった。これからは軽率に勝手な事をしないように肝に銘じておく。」
ソフィアの目を見て、そう強く宣言した。
その時
『グオオォォォォォォォォォァァァァアアアア!!』
背後から雄叫びが上がる。
振り向くとロックタートルがこちらをギロリと睨みつけながら向かって来ていた。
今の俺の声を聞いて、こっちの存在に気がついたようだ。
(こいつが近くにいた事を完全に忘れてたな……でも…)
先程までなら、脅威たり得たロックタートル。
それが、こちらに向かって歩みを進める。
しかし
『炎の息吹』
ソフィアがそう唱えると共に、物凄い勢いの炎に包まれるた。
突然、強烈な炎に包まれたロックタートルは、そのまま呻きながら倒れ込み…
『グォォ……』
少しの間もがいた後、ピクリとも動かなくなってしまった。
さっきまでの時間は何だったのか、そう思えてしまえるほどのあまりにも呆気ない討伐風景に笑いすらこみ上げてくる。
(ビスタとラフィ、二人ともすごく驚いてるな…ミルシェに至っては何が起きたのかわかってないみたいだし…
まあ、さっきまで散々ロックタートルが手強いって話をしてたんだから無理はないか…)
黒焦げになったロックタートルだったものを目を見開いて見ている二人と、不思議そうな表情でソフィアとロックタートルを交互に見比べているミルシェの様子を見て、改めてソフィアのヤバさを実感したのだった。
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ロックタートルを倒し、色々と落ち着いて来た頃に
「あ、あの……」
ミルシェがソフィアに声をかけた。
ミルシェの事を少しの間見つめるソフィア。
「…えっと、あなたは確か…
ああ、昨日冒険者登録をしに来てた子ね?
無事に冒険者になれたみたいでよかったわ。」
「ありがとうございます!………え、えっと…
……あの時の事、怒って…いらっしゃいます…か?」
(あの時…例のアレの事か。)
「…あの時の事…
…ああ、『しゃしゃるなガキ』みたいに言ってたアレのこと?
あんなの別に気になんてしてないわよ。
私自身が自分の見た目が子供そのものである事はよくわかってるし、昔はよく同僚から『ガキ』って呼ばれてたの。
……まあ、最近では私の事を『ガキ』だなんて呼ぶ人なんてほとんどいなかったから、『ああ、久しぶりに言われたな』程度には思ったけどね?」
「そ、そうだったんですね。よかったです…」
心底ホッとしたのだろう。先ほどまで緊張でピンと立っていたミルシェの耳が、力なく倒れていくのがよくわかる。
それにしても…今更ながらふと思った事がある。
(ソフィアって、一体何歳なんだろうか…)
見た目はどこをどう見ても少女だが、明らかに行動や言動は大人のそれだ。
そもそもウィリアムの先輩という時点で20は超えているのではないかと思われるが…
(まあ、流石に『ソフィアって何歳なの?』だなんてデリカシーの欠片もない事は聞けないけど…)
そういえば、俺はソフィアについてほとんど何も知らない。
逆に知っている事は、『ソフィアはすごく強くて優しいA級の冒険者だ』という事ぐらいだろうか…
(今すぐにでは無くても、ちょっとずつソフィアの事も知っていけたらいいな。)
ミルシェ達と話しているソフィアを見て、そんな事を密かに思うのであった。
ロックタートル君『わいの出番やな!ほないくで!!』
ソフィア『焼却』
ロックタートル君『ギャー!!』
ロックタートル君、南無三…
それにしても、ソフィアの実年齢……一体何歳なんだ…
今回の後書き(補足説明)はお休みです。
楽しみにしてくれている方がいたら申し訳ない…




