『エンカウント!1』
週一更新が当たり前になってきている…
「ふっ!」
目の前にいるスライムに貫手をお見舞いし、そのまま素早く核を破壊する。
(よし、これで大体10匹目くらいか…)
スライムの倒し方のコツを掴んだ俺は、発見からほぼノータイムでスライムを倒せるようになっていた。
そしてスライムを倒している内にレベルが1上がった。
現在の俺のステータスは
ステータス
名.佐々木 明 性.男
種族.人間 職業.E級冒険者
LV 7
体力.600/600
魔力.150/150
スタミナ.326/350
攻撃力.65
防御力.54+30
魔法攻撃力.32
魔法防御力.32
素早さ.100
運.12
スキル
・観察眼 LV2
・疾走 LV2
・鑑定眼 LV2
・投擲操作技術 LV4
・剣術 LV2
・回避術LV1
・会心撃LV2
・魔物殺しLV1
・体術LV1
特殊ステータス
・異世界転生者
・言霊の加護
・地の星の民
と言った感じ。
(確か前回のレベルアップの時は元の数値の1割程度の上昇率だったはずだけど…今回は明らかに上昇率が高いな。)
キャタピラーを倒した時とは異なるステータス値の上昇、倒し易さから考えてスライムを倒した方がレベル上げには向いているのだろうか。
(まあそこら辺は置いておくとして…)
ついさっき習得できた『体術』というスキルの説明を見る。
・体術
素手を用いた武術を扱うものが会得するスキル。
素手での攻撃の際、相手に与えるダメージが大幅に上昇する。また、素手での攻撃時のクリティカル率が少量上昇する。スキルLV10でスキルの強化が可能となる。
このスキルが取得できただけでも、わざわざ素手で依頼に臨んだ甲斐があったと言えるだろう。
(クリティカル率についてはあえて触れないでおくとして、ダメージの大幅な上昇ってのはかなり強そうだよな。)
『大幅に上昇』と言うのは今までの取得スキルの説明では見られなかった記述だ。
(他のスキルよりも影響力が強いみたいだな…
それにしても、スキルの強化に必要なレベルが10か…他のスキルは5で強化出来るやつが多かったのを見ると、このスキルは『強い分、他の物より極めるのが難しい』と言った感じなのか?)
『剣術』や『投擲操作』と言った他のスキルよりも高いレベルまで存在している、それが何故なのかはもう少しスキルのレベルを上げていけばわかるのだろうか。
(さて、と。ステータスの確認も終わったし、そろそろスライム探しを再開するか…)
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そんな調子でスライムを倒し続ける事およそ1時間。
ひたすらスライムを見つけて倒すを繰り返していた俺たちに
「よーし、依頼の指定数の討伐達成だ!二人ともよくやってくれた!」
「…お疲れ様。」
俺たちから少し離れた場所で様子を見ていたビスタとラフィが声をかけてきた。
しかし、機嫌良さげにしているビスタとは対照的に、ラフィの方は心なしか不機嫌そうだ。
「ん?ラフィ姉なんか機嫌悪い?どうかしたの?」
そんなラフィの様子を見て、ラフィに具合を尋ねるミルシェ。
するとラフィは、俺とミルシェの事を交互に一瞥し
「……二人とも、もうちょっと私に頼ってくれてもよかったのに。
私、サポート役のはずなのに、これじゃただの傍観者じゃない。
正直、依頼で何もしないのはポリシーに反するから嫌なのよね…」
と、ため息混じりに答えた。
(ああ、だから不機嫌そうなのか。)
というのも、本来なら『俺とミルシェが戦い、後ろからラフィが魔法で補助する』という流れで行く予定だったのだ。
にもかかわらず、俺とミルシェが想像以上にスライムを容易に討伐できてしまっている。
そのため、サポートに徹する予定となっていたラフィは魔法を一度も使う必要性がなく、ビスタと同じように近辺の警戒をする羽目になってしまった訳だ。
ラフィは、ギルドでパーティーへの参入を強要してきた他の冒険者に対して、役割や実用性についての重要性を説いていた。
そんな、役割を重視している彼女にとって『依頼において自分が何もしなかった』という事実はそう簡単に許せるものではないということだろう。
「まあ、先輩の俺らが何もせず高みの見物決め込んでるってのが不服なのはわからんでもないな。
…だが、何も戦闘に参加するだけが役割じゃねぇ。
後輩たちが一所懸命戦う姿を見守る事だって立派な『役割』だ。
だから、自分が何もしてないだなんて考えなくていいと思うぜ!」
そう言って、ラフィに笑いかけたビスタ。
(いつもこうだったらもっと……)
「……戦うだけが『役割』じゃない。
うん、確かにそうね。
私の我儘で、みんなに気を使わせちゃってごめんなさい。
…でも、もし補助が必要だと思ったら遠慮なく頼ってね?」
そう言って、ラフィはビスタに少し微笑みかえした。
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(…それにしても驚いたな。)
あのA級冒険者である『緋色の魔女 ソフィア・アルファード』に勧められて冒険者になったと妹から聞いていた『ササキアキラ』と言う青年。
歳はミルシェとあまり変わらないぐらいなのだろうが…
(スライムを素手で一撃で倒す、か……)
最初の方は初見の敵だったが故か、かなり手間取っていたように見えた。
そのため自分の装備を貸して、倒し方やコツを指導するつもりで様子を伺っていた。
だが…
(まさか、自分自身で最適な攻撃手段を編み出して実践してみせるとは思わなかったな…)
スライムは物理攻撃を軽減する。
それでも、剣士などの物理攻撃主体の冒険者がスライムを倒せるのは攻撃を使い分けているためだ。
スライムに比較的よく効く『刺突属性』の扱いとなる剣による『突き』で、遭遇したスライムの核を狙って穿つのである。
ビスタは、弱点が核だと教えていたとはいえ、その弱点にまでは攻撃は届かせることが出来ないだろうと思っていた。
しかし、彼はそんな予測などお構いなしに倒してみせた。
(俺は体術の方はあんまり心得ていないが…
それにしたって、あんな攻撃でスライムが倒されるのを見たのは初めてだ。)
この街に来て冒険者になってからというもの、さまざまな冒険者とパーティーを組んできた。
中には体術を主に用いて戦う武闘家もいたので、そう言った類の技のみてくれだけは知っている。
しかし、先程から目の前の青年が使っている技は完全なる初見なのだ。
(C級やB級の拳闘術使いとも組んだ事があったんだがな…
彼らにも、こんな方法があるのだと教えてやりたい。)
彼らがスライムと戦う時は『全力のパンチでスライムの体諸共核を破壊』と言う力技で仕留めていた。
そのため『普通に殴れば倒せる他のモンスターに比べ、必要以上にスタミナを多く消費してしまうため厄介。』だと愚痴を言っていたのをよく聞いていたのだ。
そんなベテランの彼らですら持ち合わせていない技で、彼は目の前でスライムを瞬殺して見せたのだ。
(…なるほど、『緋色の魔女』のお墨付きと言うのも頷ける才能だ…)
初見の敵の弱点や対策を瞬時に見抜き、その動きを実行できる人材など一握りしかいない。
そんな一握りに入りうる人物に肩入れし、引き入れようとするのは至極当然の事だと頷ける。
(…下手したら、既に俺よりも強いのかも…
……流石に無いよな?)
そうではない事を微かに祈りつつ、ビスタはスライムを次々と倒していくアキラを眺めているのであった。
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「さて、スライムの討伐指定数は達成したが…
正直、まだまだ行けそうだろう?」
そう言ってニヤリと笑うビスタ。
何か企んでいるような表情をしている。
「まあ、確かにアタシは不完全燃焼って感じだな…アキラは?」
「俺もちょっと物足りないかな。」
正直、スライムの倒し方に慣れてしまったせいで戦闘というより一種の作業をしているような感覚になっていたのだ。
戦闘訓練と言うにはあまりにも易しすぎる。
「そうだろうそうだろう!二人とも苦戦する事なくスライムを倒していたもんな!
という事で、ギルドには戻らずに魔物討伐を続けようか。
さて、討伐依頼の続きという事で引き続きスライムを探して倒していくっていうのもいいんだが……
二人ともスライムの倒し方のコツを掴めてるみたいだし、わざわざ探して倒すってのをまた繰り返すのは嫌だろう?」
「アタシはもう嫌だな。倒し方とかも大体分かったし…」
「俺もスライムはもう遠慮したいかな…」
「ようし!じゃあ、二人には別のモンスターと戦ってもらおうかな?」
俺とミルシェの返答を聞き、さらに嬉しそうにそう話すビスタ。
「……ビスタ。もしかしてもう二人にアレと戦ってもらうの?たしかにパーティーで戦うのにはもってこいの魔物だとは思うけど…」
そんなビスタにラフィが尋ねる。
しかし、心なしか嬉しそうな雰囲気を醸し出しているように見えるのだが…
(それに、『パーティーで』という部分を強調して言っていたけど、何か意味があるのか?)
「まあ、アレが何なのかは二人には内緒にしておきたいから言えないけどな。ラフィの予想通りだとは思うぜ。
て事で、早速アレを探しに行こうか!二人とも、準備はいいか?」
コクリ、と頷いて了承する。
「よし!じゃあ行こうか!」
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目的のアレとやらを探すべく、森の奥の方へ移動した俺たちだったが…
「………」
「……なあ、兄貴?」
「……言いたい事はわかる。あいつが目的の魔物かって事だろ?
……答えは否だ。」
草木の影に隠れながら、10メートルほど離れた場所にいる巨大な魔物の様子を伺っていた。
その魔物は見上げるほど大きく、体は岩のような鱗と甲羅で覆われてる。
「ロックタートル…まあ遭遇する可能性はあるとは考えていたが、よりにもよって今かよ……
せっかく二人にアレと戦ってもらおうと思っていたのにな…」
そう忌々しそうに小声で悪態をつくビスタ。
ロックタートル。
それは転生初日の俺を散々追いかけ回し、殺そうとしてきた巨大な亀のような怪物。
もっとも、俺を殺そうとしたのと同時にソフィアとの出会いを作ってくれた奴でもあるのだが…
(幸い、あちらは俺たちに気がついていないみたいだな。)
もしゃもしゃと草を食んでいる姿を見るに、こちらにはまだ気が付いていないようだ。
「…さて。
このまま見なかった事にして引き返すってのも手ではあるが…」
「なあなあ。
兄貴って、一人でロックタートルを倒せるんだろ?パッと倒せたりしないの?」
どうするか悩んでいるビスタに、事もなげにそう言い放つミルシェ。
すると、ビスタは少し顔を顰める。
「そんな軽々しく倒せるんならこんなに悩んだりはしてねーよ。
一人で倒せるってもかなり苦戦するし、もちろん体力だって消費するわけだ。
二人を守るための俺たちが、不必要な戦闘のせいで緊急事に疲労なんかしてたらそれこそ本末転倒だろ?
だから、必要以上に戦うってのは避けたい。」
「なるほどな…じゃあどうするんだ?
来た道を引き返すのか?」
「…いや、引き返さずに迂回したほうが目的地に早く着く。
ただ、そうすると厄介な奴と確定で遭遇する羽目になるんだ。」
「厄介な奴?」
思わず聞き返す。するとビスタは大きく頷く。
「ああ、迂回ルートに『キラービー』って言う虫のモンスターの巣が複数個あるんだ。
一匹一匹はさして強くはないが、アイツら群れで襲ってくるからな…
あのデッカい毒針に何度刺された事か…」
(『キラービー』…殺人蜂か。
いかにも危険そうな名前のモンスターだな…)
恐らくでっかいミツバチみたいな虫のモンスターなのだろう。
そんな奴の毒針なんかで刺されるなど、想像するだけで寒気がする。
「『キラービー』なら、私の火属性魔法で一掃できると思うけど…
それじゃあダメなの?」
さらっと恐ろしい事を口にするラフィ。
そんなラフィの質問に、ビスタは首を横に振って答えた。
「俺だけならともかく、今日は二人がいるからな。
魔法攻撃の巻き添えを食らいかねないから却下だ。
…てか、ついこの間俺の前髪を焦がしたばっかりだろ。
あれ、一歩間違えてたら俺の頭と耳の毛が焼けてつるっ禿げになってたからな。
(火属性魔法の巻き添え?
ソフィアが使ってた様なあんな攻撃を受けたら即消し炭になる自信があるぞ…)
「…しょうがないじゃない。
炎系の魔法って加減が難しいのよ…範囲攻撃ともなれば尚更だわ。」
「なら『キラービー』を火属性魔法で倒すってのはダメだ。
となるとやはり引き返すか…」
ロックタートルや『キラービー』と戦わなければアレが生息している場所には行けない。
アレがなんなのか知れないのは少し残念だが、安全を考慮して引き返したほうが良さそうだな…
「………なあ、3人とも…」
そんな事を考えていたその時、突然ミルシェが口を開く。
「どうした?何か案が思い浮んだか?」
そう聞き返すビスタ。
「…いや……後ろ…」
ん?後ろ?
一体何が……
そこには、腕を組んでこちらをジト目で睨みつけている一人の少女がいた。
少女と目が合う。
「ねぇ、アキラ。
伝言だけを残して依頼を受けに行くというのは構わないにしても、せめてもう少しちゃんとした内容を伝えておいて欲しいのだけれど…」
『何故ここに?』なんて無粋な事は言わない。
彼女、ソフィアの能力と人脈なら、俺の居場所なんてすぐに聞き出して特定する事ができるのだ。
故に、俺は第一に言うべき言葉を口にする。
「申し訳ありませんでした…」
怒っている相手には誠心誠意込めた謝罪だ。
事実自分に非があるのだから、言い訳などせずに謝らなくてはならない。
そんな俺の謝罪の様子を見て、依然不機嫌そうなソフィアはため息をつく。
「…なんで敬語で謝っているの?
別に怒ってなんてないから気にしなくていいわよ?
朝早くからすぐ宿を出て、そのままさっさと知らない人達とパーティーを組んで依頼を受けに行ったくらいで怒る訳ないじゃない。
まあ、何故か宿屋の受付からの伝言では『アキラ様はギルドに向かわれました』としか聞かされなかったけど、怒ってなんかいないわよ?
ギルドの方針でE級冒険者は一人じゃ依頼を受けれないはずなのに、依頼に行けるはずのないアキラが依頼に出発してて物凄く焦ったけど、別に怒ってなんかないわよ?」
…嘘じゃん。
絶対めちゃくちゃ怒ってるじゃんこれ。
ソフィア怖い…
明の防御力のステータス値の『+30』というのは鎧分の防御力追加されているための表記です。
ここからは後書き(補足説明)です。
興味なければ読み飛ばして大丈夫です。
まずラフィのポリシーについて。
ラフィは駆け出しの頃、自身の実力不足でパーティーの足を引っ張ってしまっていた(と、自分で思っている)時期がありました。
その時から『自分が何もしない』ということに対して強い嫌悪感を覚えるようになっています。
要は「『役立たずだった自分を思い出す』のが嫌なので、何かしらの『役割』としてパーティーで役立ちたい。」という思いがポリシーの原点となっています。
次に目的のモンスター『アレ』について。
特定の場所にのみ生息するモンスターです。
一体どんなモンスターなのかはまだ秘密。
実は本編に既に名前が出てきてたりします。
最後に、スライムを倒す明の様子を見たビスタの反応について。
まあ、一見するとオーバーリアクションですよね。
しかし、この世界での体術は『攻撃力に物言わせたグーパンでぶん殴る』と言った脳筋スタイルばかりが一般です(ビスタの知り合いの冒険者がスライムを本気グーパンで倒しているあたりお察し)。
それが当たり前の世界観に暮らすビスタ君目線での明は『他の冒険者の使わない未知の攻撃を用いることで、本来なら素手で倒すのは難しい筈のスライムを瞬殺する新米冒険者。しかも超有名冒険者のお墨付き。』と言った風に見えます。
あらかじめ得ている情報(明はソフィアのお墨付き)と、目の前で実際にやってる事(スライムを素手で一撃)のインパクトで『こいつはやばい』と錯覚してるわけです。
『いや、ロックタートルなんで気が付かないの?馬鹿なの?』って思ったそこのあなた。
前回、明が枝を踏んで気づかれた時は『ロックタートルが安全なモンスター』だと思ってかなり近い場所にいました。
そのため、枝を踏み折った音で気づいて襲いかかって来たわけです。
しかし、今回は10メートル以上離れた位置に隠れた状態で、なおかつ全員小声で話し合っています。
なので、ロックタートルは気が付いていないわけです。




