『スライムの愉快な仲間たち』
明けましておめでとうございます。
前回の投稿からかなり間が空いてしまってすみません…
これからも活動は続けていくので、今年もよろしくお願いいたします!
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スライムが現れた!
明はどうする?
>戦う
逃げる
明の攻撃!
明は素手でスライムを殴った。
スライムに1のダメージ!
スライムは様子を見ている。
…………………。
うん、どう考えても素手で戦う相手ではないなコレ。
ダメージを食らっているそぶりもない(そもそもよくわからない)し、ワンチャン1ダメージすら入ってない可能性すらある。
(水の入った袋を殴ってるみたいな手応えしかしないんだよなぁ。まあ、殆ど液体みたいなもんだろうし当然っちゃ当然なのか…)
幸い、あちらの方は攻撃をしてくるつもりはないようで、殴られた際の衝撃でゼリーのようにプルプルと揺れているだけだ。
(とは言え…このままポコポコ殴ってるだけじゃ埒があかないよな。どうにか決め手になるような攻撃方法は無いものか…)
物理的にスライムを倒すには体内の核を壊さなければならないのだ。その核にまで攻撃が届かないのでは話にならない。
(有効ではないにしても剣はあったほうがよかったかな…体表を傷つけることができればコアにダメージを与える事もできるだろうし…)
パンチでは、拳をめり込ませることはできても体表に傷をつける事はできない。
また、めり込んだ拳を引き抜くとたちまちスライムは元の形に戻ってしまう。
(何回やっても元に戻る所を見るに、やはりダメージは食らってなさそうだな。……となるとやはり切断系の攻撃しかダメか…)
大人しくビスタに剣を貸して欲しいと頼むべきか。
そんな事を考えていたその時、ふと思いついた。
(ん?素手による打撃は効かない…
じゃあコレはどうなんだ?)
俺は握りしめていた右手を開き、その五本の指同士をピタリと密着させた。
そして、右手を思いっきりスライムに突き刺す。
空手などで使われる技の一つである貫手だ。
と言っても、中山のやってた動きの見様見真似なので正しい形であると言い切るのは難しい所ではあるのだが…
(拳がダメなら指先による突きならどうだ…?)
ゾプッ、と音を立ててスライムの体内に腕がめり込む。
すると、腕を体に突き刺されたスライムが、先程とは違いブルブルと激しく振動し出した。
まるで、苦しさのあまり身悶えしているかのような…
(お?普通のパンチの時とスライムの反応が違うぞ?これ、もしかして効いてる?)
見れば、俺の手はスライムの核の数センチ手前のところまで深々と刺さっていた。
伝わってくる感触も今までのめり込んだような感じとは異なる。凹んだ体に包まれていたと言うのが今までの状態なら、今回は文字通り貫いた状態だろう。
(なるほど、核に触れかけているから苦しんでいるのか…これ、内臓に触られかけてるようなものだろうし、相当キツいんじゃないか?)
スライムにそれほどの感覚神経が備わっているかどうかは知らないが、現状が少なからずスライムにとって良くないと言うのは明白だ。
(この核を破壊すれば倒せる…となると…)
俺はスライムに突っ込んでいた腕をさらにグイッと押し込んだ。
そして核を握るように手で覆う。
途端、スライムの体がビクリと震え……
『ーーーーーーーー!!!』
突然、キーンとも、ピーとも取れる甲高い音が頭に響く。
「うっ……」
急に聞こえてきた耳障りな音。それはまるで死にそうな生物の断末魔のような悲痛さを含んでいて…
「アキラ、どうした!?何かあったのか?」
急に動きを止めた俺に、横で様子を見ていたミルシェが声をかけてきた。
どうやらミルシェの方は既にスライムを一匹倒し終えたらしく、足元には核を壊されたと思われるスライムが力なく地面に広がっていた。
「いや、急に金切音が響いて…てか、ミルシェにはこの音は聞こえないのか?」
「金切音?うーん、アタシには別に聞こえないけど…幻聴か何かじゃないのか?」
何を言っているんだと言わんばかりの表情でそう答えるミルシェ。
(この音、ミルシェには聞こえてないのか……?一体なんなんだこれは…)
先程から絶えず鳴り響くこの不快な音の原因がわからない。
思い当たる節は、スライムの核を掴んだ途端に鳴り出したという事だ。
(原因があるとしたらこれしかなさそうだが…
……もしかして、目の前のこいつが俺に喋りかけている?それが翻訳されてこの金切音になっているのか?)
俺が持っている『言霊の加護』は全ての言葉を理解できる力を持つと言う説明だったはず。
核を握られたスライムの苦しみ、それに反応して加護が発動しているとしたら…
(…核に触れられ続けて苦しんでいるという事になるのか……となると、これ以上無闇にこの状況を長引かせるのは互いに良くないよな。)
そして、スライムの核を握る手に力を強く込める。
力を込めた手の中で、スライムの核がピキリと音を立てて砕けたのがわかった。
途端、先ほどまでの金切音がピタリと止まり
ビチャ…
俺に核を握られていたスライムが、ズルリと俺の腕から離れ、そのまま力なく地面に広がった。
「いやぁ、びっくりした。まさか本当に素手でスライムを倒すなんて…
あの手の形?初めて見る武術だったけど、アキラ君の故郷か何処かで習ったりしたの?」
少し離れて見張りをしていたビスタが、俺の方に近づきながらそう尋ねてくる。
「ええ。あれは俺が住んでいた場所で知人に教えてもらった技です。…まあ、まさか本当に通用するとは思っていなかったですが。」
俺がそう答えると、ビスタは少し笑いながら
「ははは、実は俺もそう思ってた。
だからスライムに出会った時に大丈夫か聞いてみたんだ。
武器が必要なら俺のを貸そうと思ってね。
…でもその心配は必要なかったみたいだな、流石は『緋色の魔女』さんが見込んだだけはある。」
そう俺のことを称賛してくれた。
「ありがとうございます。」
正直かいかぶりすぎだとは思ったが、自分を認めてくれている相手の意見を下手に否定するのは失礼だ。
ここは素直に称賛を受け取るべきだろう。
「ミルシェも偉いぞ〜。ちゃんと短剣の持ち味を活かして倒せていたからな〜。」
「ふふん!当然だ!アタシにかかればスライムなんて楽勝だからな!」
得意げに胸を張ってミルシェが答える。
結構苦戦していた気がするがきっと気のせいだったのだろう。
「さて、二人とも無事にスライムを倒せたみたいでよかった。これで、ある程度はコツを掴むことが出来た事だろう。
と言うわけで、この調子でどんどん倒していこうか!」
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目の前にいるスライムに、正面から貫手を撃ち込む。
そしてスライムの体を貫通させた手で、その核を思いっきり握りしめる。
核が壊され、スライムが力なく崩れ落ちる。
「ふぅ……これで5匹目か…」
最初の苦戦が嘘のような流れ作業のような早さだ。
(スライムから攻撃をしてこないのもあって、何というか何の問題もなく倒せてしまうんだよな…)
戦ってみて改めてわかったのだが、スライムは一角兎やキャタピラーのように『弱いが攻撃してくるモンスター』ではなく、『弱くて攻撃してこないモンスター』のようなのだ。
見た目はともかくとして、生態から鑑みるに進んで倒す必要があるモンスターだとは思えない。
(害があるようには到底見えないし…どうしてスライムを倒す依頼があるんだ?)
弱い、性格は穏やか、生息地も泉の近くに限られる。
わざわざ倒す理由がないこのモンスターは何故討伐依頼が出されるのか…
(考えても全然わからない……ビスタに聞いてみるか…)
「すみません。今更なんですけど、スライムってなんで倒す必要があるんですか?別に危険じゃないし、わざわざ討伐依頼を出すほどのモンスターだとは思えないんですけど…」
「……まあ、ただのスライムだけならそうなんだけどね……
スライムが増える事で発生する別種の存在があるから討伐しなきゃダメなんだよ。」
「別種?」
「ああ。スライムは食べる餌や生育環境、繁殖の際の変異なんかで別種の個体に変化することがあるんだ。
それらの個体はかなり厄介な魔物として害をなす事が多い。
だから、それらを予防するためにスライムを倒すんだ。」
「なるほど。」
鑑定眼でスライムを見たときに『亜種が多く存在する』と書かれていた気がする。
あれはそういう事だったのか。
「ちなみに、スライムの別種の主な例についても話しておこうか?」
「是非お願いします。」
「わかった、じゃあ有名どころからいくつか話しておこう。
まずは『アシッドスライム』。
こいつは強力な酸性の消化液で攻撃してくる別種で、体の色が普通のと比べて白く濁っている事が多い。
スライムの変種の中で最も発生しやすくて、この森でもよく発見されているな。
『アシッドスライム』の強力な個体になると鎧や武器なんかも腐蝕させてくることがあるから、そうなるとかなり厄介になるね。
次に『ポイズンスライム』。
こいつは毒を使って攻撃してくる別種で、体は黒っぽい紫色をしている場合が多い。『アシッドスライム』の次に発生率が高くて、この森でも何度も確認されているんだ。
大きさと色の濃さで保持している毒の強さがわかるが、稀に色の薄い猛毒持ちがいるから気をつけてくれよ。
…そして、スライムの別種の中でも最も恐れられているのが『アマルガム』と呼ばれる金属の様なスライムだ。」
「『アマルガム』……」
アマルガムは確か水銀と他の金属との合金の総称だったような気がするが、この世界ではスライムの別種につけられているのか…
(金属の様なスライムって……なんとなくメタルなアイツっぽい見た目を想像してしまうな…)
一度めの衝撃のような事になりかねないのであまり期待はしない方が良さそうだが、やはり脳裏にはメタリックなアイツが浮かぶ。
もっとも、内容的に探すべきカモというわけでは無さそうなのだが…
「『アマルガム』…とある鉱山地帯で見つかったスライムの変異個体だ。
体は七色に輝く液状の金属で出来ている…らしい。
というのも、俺は実際にあったことがないから、あくまでギルド経由で話を聞いたに過ぎないし、どんな見た目をしているのかも少ない情報から想像することしか出来ない。
……仮に『アマルガム』に出会ったことがあったとしたら、俺はここにはいなかっただろうしな。」
「その『アマルガム』って、そんなに強いんですか?」
「『かつて、『アマルガム』に挑んだ複数人のA級冒険者、B級冒険者、C級冒険者達によって組まれたパーティーがなす術なくほぼ全滅まで追い込まれた。』
…この話を聞けば、こいつのヤバさはわかるかな。」
「…………。」
あまりの衝撃的な内容に、思わず絶句する。
『A級冒険者を含んだ大勢の冒険者達が、なす術なく全滅する』
これがどれほどの異常事態なのかは、ロックタートルを瞬殺したソフィアを間近で見ていた俺にはよく分かる。
見上げる程の巨大亀を瞬時に焼き尽くしたA級冒険者。
そんなA級冒険者ですら太刀打ちできなかった化け物とは、一体どれ程強大な力を持つのだろうか…
「つまり、だ。
『アマルガム』みたいな強力な怪物を生み出しうるスライムは、早いうちに倒しておかないと取り返しがつかなくなってしまう。
事が起きてからじゃあ、もう手遅れなんだ。
…スライムを何故討伐しなきゃダメなのか、納得できたかな?」
「はい。」
泉に生息するスライムが、何かの拍子に『アマルガム』になる可能性は0じゃない。
(そんなヤバいモンスターの発生を防げるとわかっているなら予防策を実施するのは当然だな。)
納得して、スライム討伐の依頼を再開するのだった。
長ーい後書き(補足説明)。
今回は結構本文に関係ある内容多いので途中までは読んで欲しいです…
早速ですが、『明の貫手の威力おかしくない?』って思った方いらっしゃるかもしれません。
『ミルシェは短剣使っても梃子摺ってたのに明は素手で即殺できるのはおかしい。』と思うのは至って当然です。
ですが、この世界では『武器の性能が低ければ装備してないも同義』となってしまいます。
どういう事かと言いますと、『見た目だけ鋭そうな安物の剣』よりも、『材質の良いボロボロの刃こぼれした小刀』の方が結果的に強かったりします。
また、『武器を装備する事で攻撃の属性が変化』します。これは『手の形状を変える』等の形状変化によっても変化可能です。
そして、これが今回の話の説明の中で一番重要な話です。
物理攻撃には複数の種類があり、その性質で幾つかの属性にわけられます。
その属性の種類ですが
・剣などの『斬撃属性』
・矢、レイピア、剣による突きなどの『刺突属性』
・拳、ハンマーなどの『打撃属性』
・投石などによる『砲撃属性』
・大砲、一部魔法の爆破攻撃などによる『爆破属性』
主にこの五つです。他にもありますがマイナーな物をあげたらキリがないので今回は割愛します。
スライムに急に攻撃が効くようになった件の解説です。
・短剣を装備している際の攻撃は『斬撃属性』で、この状態で切り裂くように攻撃すると『斬撃属性』による物理攻撃となります。
・しかし短剣で突くような動作をすると『刺突属性』による攻撃となります。
・要は同じ武器でも使い方で攻撃の属性が変化しうると言うことになります。
・今回、スライムの特性である物理攻撃軽減の軽減率は
『爆破属性』→『刺突属性』→『斬撃属性』→『砲撃属性』→『打撃属性』の順で上がります。
同じ物理攻撃でも、その攻撃の属性によって軽減率は大きく変わる訳です。
・そのため、一番ダメージが軽減される『打撃属性』による攻撃をしていた明は最初の方で苦戦していました。
・しかし、貫手を使った事で攻撃属性は『刺突属性』へと変化し、スライムにダメージが通るようになり、無事倒せた訳ですね!
ここからは別に読まなくても大丈夫です。
作者が書きたいだけのスライムと愉快な仲間たちの説明を書きます。
箇条書き、簡単な説明のみとなってます。
また、人によってはネタバレになりうる描写もあります。
ご了承ください。
・アシッドスライム
主に酸性の消化液による攻撃。
体内で酸性のガスを生成し、一気に放出する等の特殊攻撃も保持。
魔法への耐性は低い。
・ポイズンスライム
主に体内で生成した毒で攻撃。
毒草や毒を利用するモンスターが生息する場所で発生することが多い。
毒ガス放出、麻痺系の毒の生成も行う事がある。
魔法への耐性が極めて低い。
・ヒュージスライム
本文で言ってない。
とてもおっきなスライム。最大で25メートルプールが3分の2埋まるくらいの質量。
栄養たっぷりの草やモンスターの死骸を沢山食べる事で稀にヒュージスライムに変化する事がある。
物量で押しつぶし、体内に取り込んでそのまま捕食という中々に恐ろしい攻撃手段を持つ。
デカさ故に高耐久を誇る。魔法耐性自体は高くはないが、生半可なものでは核にまで届かないため結果的には高くなる。
・スカルスライム
本文で言ってないパート2。
人骨、獣骨を消化せずに体内に残す。
それらの骨を利用して核を保護。または外敵を攻撃する。
体内に取り入れている骨の種類によって防御、魔法耐性が変化する。
・パラサイトスライム
本文で言ってないパート3。
大きさはそこまで大きくないが、非常に活発で細かな動きをする事が可能。
この細かな動きが可能な体を利用して他のモンスターに寄生、そして寄生したモンスターを乗っ取って操る。
大抵は乗っ取る前にモンスターに抵抗されたりして死ぬが、乗っ取りが成功すると極めて厄介(首等を落としても倒せない。パラサイトスライムの核の破壊でのみ討伐可能)。
乗っ取ったモンスターによって耐久、強さは大きく変化。なお、本体の強さは通常のスライム以下。
・アマルガム
冒険者ギルドが、未開拓地探索のルールを設立するに至った例の洞窟探索事件の元凶となるモンスター。ちなみに見た目はメタルス◯イムとは全く異なる。
高い防御、魔法耐性を持つ。
核がどこにあるかわからない&見つけたところで破壊困難な耐久性。
とにかく攻撃がエグい、初見だとまず対処不可能な理不尽ムーブ(イメージは某最弱の骨ニキの開幕のアレ。わからない人は[アンテ サンズ]で検索。なお、ネタバレ等は自己責任でお願いします。)。
非常に攻撃的な反面、自身の縄張りからは動こうとはしないという生態を持つ。
そのため報告のために逃げ帰ったC級は死なずに帰れた。
『アマルガム』、こいつは後々出す予定です。




