『理想と現実』
前回、一日に二話投稿してしまった反動で投稿遅れました(言い訳)。
年末忙しくて投稿ペース落ちるかもしれないです…
ギルド内の広間から依頼の受付の近辺まで移動した俺たちは、依頼の話についての話し合いを再開した。
「さて、さっそく依頼内容の説明からしていくか…
ミルシェとラフィには既に伝えてあるが、今回受けるのは森の泉に生息しているスライムの討伐依頼だ。
依頼の主な内容だが、森に入ってしばらく歩いたところにある泉の周辺に生息しているスライムを倒していく。」
「えっ?スライム!?スライムってあのプルプルの?」
思わぬ王道モンスターの名前の登場に意図せず聞き返してしまう。
「ああ、そうだ。確かに物理攻撃軽減の特性を持っているスライムに剣士系の初心者が苦手意識を持つのは仕方がないだろう。だが、剣士でもコツさえ掴めれば倒すのはそう難しい事でもないさ。」
(まあ、別にスライムに対して苦手意識を持っていたから聞き返した訳じゃないんだけどな。
それにしてもスライムか…
ゴブリンがいると聞いた辺りからこの世界に実在しているんじゃないかとは考えていたが…)
スライム、それはゲーム(某ド◯クエの事)でお馴染みの水色のプルプルしたモンスターである。
半透明のゼリー状の体に大きな目と口が書かれているような見た目で、ゲームをしていない人すら含んだ様々な人達に愛されるモンスターだ。
そんなスライムに会える依頼が受けられるとは…
(確かに、スライムって一番最初の戦闘のチュートリアルに出てくるイメージがあるな。
この世界でも、ゲームと似たような感じで認知されているのか?)
やっぱり仲間になりたそうにこちらを見てくる個体とかがいたりするのか。はたまた銀色をした経験値タップリなメタルなアイツもいたりするのだろうか。
スライムに対する色々な期待で胸が高鳴る。
「…心なしか嬉しそうな顔をしているな。
スライムに反応したから苦手意識や嫌な思い出とかがあると思ってたけど、逆の理由だったようでよかったよ。」
俺の方を見て、ビスタが言う。どうやら感情が顔に出ていたようだ。
「じゃあ話を戻そう。
今回の依頼自体は比較的簡単なものだ。でもそれだけじゃない。
というのも…」
「凶暴化してるロックタートルが森にいるから気をつけなきゃダメって話だろ?
一々勿体ぶらなくてもいいって。」
意味ありげに焦らした物言いをしているビスタの説明を、俺と同様に聞いていたミルシェが遮った。
そんなミルシェの発言に、少し顔を顰めるビスタ。
「…おい。
今、俺が説明しようとしてたじゃん?わざわざ横から口を挟む必要なかっただろ…」
「だって兄貴の説明って無駄に長いんだもん。
説明するにしても、普通に要点だけパッと伝えればいいじゃん?
それに、ロックタートルの説明の時に絶対『俺は昔ロックタートルを一人で倒した』って自慢話してくるつもりだろ?こちとらもう聞き飽きてんだよ。」
「おっ、おまっ!!
おい!せっかくそこに話の流れを持って行けるようにしてたのに真っ先にネタバレしてんじゃねーよ!!
お前は何回も聞いてるかもしれないがアキラ君は聴いてないの!初耳なの!」
ミルシェに自分の説明をバラされ、少しご立腹なビスタ。
「もう、その話をするのは今じゃなくたっていいでしょ?
ひとまず、一通り話終わってからにしたらどう?」
「…確かにな。
…まあ、この話は道中にでも話すとするか。」
そんなビスタをラフィが軽くなだめる。
(凶暴化したロックタートル……正直あんまり思い出したくはないな…)
ロックタートルは、実際に見た戦闘風景のせいであまりパッとしないが、本来ならかなりの脅威となりうるモンスターだ。
(実際、突進されたあの時にソフィアに助けられていなければ、間違いなく俺は命を落としていただろうし…)
自分を容易く殺し得るほどの強敵であり、その体躯は見上げる程に大きい。
それ故に、その強敵を恐れる気持ちは少なからずある。
しかし、絶対に倒せないと弱腰で挑んでいては、いつまでも先に進めない。
特に、今回はみんなで協力して依頼をするのだ。
そんな中で、一人だけ怯えて役に立たないだなんて事は到底許されないだろう。
(ビビってばっかじゃ冒険者なんてやっていけない。俺だってデカイモを瀕死にする程度には健闘はしたんだし、多少は自信を持って行動していかないと…)
決して蛮勇を目指すつもりはない。
ただ、多少は無茶な事ができるくらいの勇気は持てるようになりたい。
己を追いかける巨大な亀の姿を思い出しつつ、そう心の中で願った。
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:
ロックタートル云々の話がひと段落つき、俺たちは依頼の際の役割分担についてを話し合う。
「アキラ君とミルシェは戦闘慣れの為、前衛でスライムと戦ってくれ。
ラフィが魔法で二人の戦闘を補助する。」
「ん?その間、兄貴は何をするんだ?」
「俺は戦闘の際に近辺の見張りをしておく。
何せ、今回の依頼は水辺での戦闘だからな。
普段以上に警戒しながら見張りをする必要がある。」
ミルシェの疑問に対してビスタが答える。
(水辺での依頼は、普通の依頼よりも警戒して受けなければいけない?
なんでだ?)
「あの…
どうして水辺で戦うときに普段よりも警戒する必要があるんですか?」
「それ、アタシも思った。一体なんでなんだ?」
「ああ、そういえば説明をし忘れてたな。
まず、モンスターは俺たち同様生き物だろ?
生き物ってのは生きていれば腹を空かすし、喉だって渇く。
となれば自ずと水辺が危険な理由もわかるだろう?」
「なるほど…水を飲みに来たモンスターと鉢合わせる可能性が高いのか。」
「そゆこと。
特に、今回行く泉にはロックタートルなんかもよく水を飲みに来る。普段なら刺激しなければ問題ないが…」
「凶暴化している今ではそういうわけにもいかない、と。」
「そうだ。
だから、要するに『さっさとスライムだけ倒して撤収するのが理想的。仮にロックタートルに鉢合わせても俺とラフィで対処できるから気にしなくていい。』って感じだな。
…さて、二人とも問題はなさそうかな?」
ビスタが問いかける。
「俺は大丈夫です。」
「アタシも問題ないぜ。」
そう返事を返す俺とミルシェ。
それを聞いたビスタはうんうんと頷く。
「よーし!
じゃあ早速行くとしようか。武器と防具は問題ない…
…ああ、アキラ君は剣を無くしてたんだったな。
どうする?ギルドで貸し出しされてる奴を借りてくる?」
(そういえば剣を持っていなかったな。
借りるのもいいけど、前に借りた奴を無くたばかりだし……う〜ん…
…昨日は剣を用いた戦闘をしたし、今日は素手による格闘術に慣れておいてもいいのでは?
幸い今回の相手は柔らかそうなスライムだから、素手で戦っても痛くなさそうだ。
それに、剣をまた紛失する恐れもあるし、今日は素手で戦おう!
あわよくば、新しく体術系のスキルを取得できるかもしれないしな!)
「今回は剣を使わずに戦闘をしようと思います。」
…この選択が間違っていたと気づき、後悔した頃にはもう遅かった。
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:
依頼を受け、森に行った。
そして目的地である森の泉に来たのだが…
「……………えぇ…」
思わず絶句した。
何故かって?
今、俺の目の前で、『ズジュル、ズジュル』と音を立てながら存在感を放つ、蠢く半透明の流動体。
大きさはざっと60センチくらいだろうか。
それは、表面をうねうねと波打たせながら、草の生えている地面をズルズルと這いずり回っていた。
流動体の中には赤黒い石のようなものが埋まっており、石の表面は心臓の鼓動のようにドクドクと脈打って見える。
正直、かなりキツイ見た目をしているし、あんまり触りたくはない。
(こいつ…もしかして…
いや…そんな、まさか……)
信じたくはない。
こんなにもグロテスクなモンスターが先ほどまで合うのを楽しみにしていたアイツだなんて。
(頼む…違っていてくれ……)
そう思いながら鑑定眼を使った。
・スライム
森の水辺に多く生息する魔物。身体の殆どが水で出来ており、物理的な攻撃に強い耐性を持つ。体内にある核を破壊するか、魔法で身体を破壊し切る事で倒す事ができる。亜種が多数存在している。
「…まじかよ。」
信じたくはなかった。
なんとなくそんな気はしていたが、それでも夢を壊したくなかった。しかし、一握の希望は潰えた。
これと素手でタイマン張らなきゃダメって本気で言ってる?
補足説明です。
今回は本文書いてて『あ、書き忘れてた』ってことがあったので書き連ねていきます。
・D、E級はC級を2人連れていかなきゃダメなのは何故か。
これはD、E級の防衛をする際に、C級の場合二人は必要となるため。C級一人が依頼をするのなら『自分の身だけを案じていればいい』ため、C級二人以上が必要という決まりは適応されない。
逆にC級一人、D、E級複数又は一人で組むのは『D、E級を守り抜けない可能性が高い』ため無理。
同伴者一名くらいならC級一人でも守り抜けそうと思わなくもないけど、そこら辺はギルドが色々考えた末に決めた規則だからって事で…
ちなみに、A、B級ならば一人で複数人のD、E級冒険者を連れて行く事が可能です。
一見ガバガバに見えますが、冒険者の階級ごとの強さの違い等を見るとそうでもなかったりします(あくまで個人の感想です、品質を保証するものではありません)。
そこら辺の冒険者の詳しい戦力面の話もおいおい本文で書いて行けたらな〜と…
・ビスタとラフィの強さについて。
参考程度に言うと、ロックタートルを単独で倒せればB級並みの戦闘能力となります。
一応、前の話の中で既に書いていた筈。
ビスタ君、ラフィちゃんがC級なのは冒険者になってから2年しかたっていないため。実は二人とも既にB級並みの強さです。




