『新パーティー結成1』
『パーティーメンバーを見つけて依頼を受けよう』と思い、幾つかのパーティーに話かけてみたものの
「流石に俺たちのパーティーには成り立てのE級を連れて行くほどの余裕はねーわ。悪いが他の奴らをあたってくれ。」
「お前、戦闘スタイルとか自分を参入させる利点も碌に言えないのか?
もし本当にパーティーを組みたいという意思があるのなら、せめて何か一つ自分の取り柄を用意してから来い。
俺たちはお前達の為にパーティーを組んでる訳じゃねーんだ。」
「えっと、ひとまず武器の一つや二つは身につけておこうね。
武闘家じゃない新米君が素手で戦うってのは流石に無理があるでしょ?」
等々、中々にありがたい評価と共にパーティー参入を断られ続けていた。
(パーティーメンバーになるってのは、互いの命を預けるようなものだし、こう言った評価で断られると言うのも至極当然の事か…)
みんなソフィアの様に余裕があるわけでも、強いわけでも無い。
見知らぬ他人を仲間として迎えるか否かを損得によって決めるのは当たり前だし、そもそも『お前では力不足だ』と参入を断られた事を酷いなどと言う者は冒険者としてやっていけない。
それは重々承知しているのだが、話しかけた全員に言われると流石に堪えるものがあるのも事実なのだ。
(とりあえず、自分の長所を言えるようにした方が良さそうだよな…
自分の戦力分析の為にも、ひとまずはステータスの確認を…)
そう考えながら踵を返し歩き出したちょうどその時、突然後ろから肩をポンと叩かれた。
そして
「な、なあ!!
あんた!依頼を受けたいんなら、アタシ達のパーティーに入らねーか?」
面接全落ちで凹んでいた俺に、まさかのヘッドハンティングである。
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「さて、話しかけるとは言ったが…」
黒髪の青年の近くまで来たミルシェ、ビスタ、ラフィの三人は、誰が青年に話しかけるかを決めあぐねていた。
「私たちが突然呼びかけても混乱させちゃいそうよね…となると、やっぱりミルシェちゃんが適任だと思うの。」
そう言って、ミルシェを見るラフィ。
「でも、アタシはあいつに例の場面を見られてるんだよな。正直、兄貴に声かけてきて欲しかったりするんだけど…ほら、兄貴って一応アタシたちのパーティーのリーダーじゃん?」
向こうはほぼ確実にこちらの事を覚えている。
もちろん、『緋色の魔女』に喧嘩を売りかけた事も…
そんな奴がいきなり『パーティーに入らないか?』と話しかけようものならば、『こいつ、ソフィアのご機嫌取りの為に俺に近づいてきたんじゃね?』と察される恐れが極めて高い。
「まあ、俺はそれでもいいんだけどよ…
そもそも、今回の件はお前が蒔いた種だし、俺はお前が勧誘して来るべきだとも思う。
お前、一応はあの黒髪の彼と顔見知りなんだろ?」
「まあ、話してはないけど一応は…うーん、でもなぁ…」
いつまでもごねるミルシェ、そんな彼女に
「……もう多数決で決めない?このままだとらちが開かないわよ。」
痺れを切らしたラフィがそんな提案をする。
「えっ、ラフィ姉!?ちょっと待って、それ圧倒的にアタシが不利…」
予想外のラフィの発言に戸惑うミルシェ、しかし
「よし!そうしようか!
じゃあ『いっせーの』で勧誘しに行くべきと思う奴を指させよ!行くぞ!いっせーの…」
同じく痺れを切らしたビスタによって強制的に多数決が採用、ミルシェは慌てて指をビスタに指したが…
「はい、ミルシェが二、俺が一。ミルシェに決定だ!早く行け!!」
「イジメだ!これは不当だろ!!多数決が意味を成してない!!」
「うるせぇ!!元はと言えばお前が色々やらかしたのが原因だろうが!!つべこべ言わずに行ってこい!!ほら!!お前がごねてたせいで彼がもう帰りそうだぞ!!」
「ミルシェちゃんが言い出しっぺなんだし当然でしょ?ほら、いってらっしゃい!ちゃんと勧誘できるように応援してるわ!ファイトー!!」
「ええい!!もうこうなったら自棄っぱちだ!当たって砕けてやる!!」
そんな捨て台詞を吐いて、ミルシェは黒髪の青年の方へと向かって行った。
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突然のパーティー勧誘。嬉しく無いわけがない。
しかし、先ほどの事を思い返して『何故俺をパーティーメンバーに誘ったのか』と言う疑問も浮かんでくる。
(さっきから断られ続けてる俺を不憫に思ったとかかな?
それにしても、この声どっかで聞いたことあるような…)
自分の後ろにいる声の主を振り返って確認すると、白い髪に頭上に生えたケモ耳の女性が立っていた。
その服装といい、顔付きといい、すごく見覚えのある姿だ。
(あれ?この人、冒険者登録の時に無銭飲食云々で受付嬢さんと揉めてた人だよな…名前は確か…)
「えっと、ミルシェさん…だったっけ?」
「あれっ?アタシの名前ってあんたに教えてたか?
って言うか、話すのは初めてじゃなかった?」
俺が名前を知っている事を疑問に思ったのか、そう問いかけてくるミルシェ。
たしかに、あの時に実際に話したのは俺じゃなくてソフィアだったからな。
俺が名前を知っていると言うのは普通に考えたらおかしな話か。
「ああ、俺がミルシェさんの名前を知ってたのは色々と揉めてたあの時に受付嬢さんがそう呼んでたのが聞こえたからだよ。
…それにしても、無事に冒険者登録が終わったようで何よりだ。」
パーティーメンバーの勧誘をしているくらいだし、あの後無事に冒険者になる事が出来たのだろう。
まあ、『無銭飲食程度なら罰金を払えば問題はない』と、あの時ソフィアも言っていたあたり、この世界ではよくある事なんだろう。
ミルシェもその事を思い出したのか少し苦い顔をしながら口を開く。
「…まあ、あの時はかなりイライラしてたからな…」
そして周りを見回した後、俺に小声で尋ねてくる。
「なあなあ、ここだけの話なんだけどさ。
あの後、『緋色の魔女』……ソフィアさんは何か言ってなかったか?
……例えば、『あの白髪の獣人絶対許さない』とか言ってたりしない?
……言ってないよね?大丈夫だよね?」
後半に行くにつれ、ちょっと半泣きになりかけているミルシェ。
心なしか、どんどんキャラがブレかけている気がする。
(…ソフィアの機嫌を俺に聞いてくるってことは、少なからず俺がソフィアの知り合いだと知っているって事だよな。
…もしかしてソフィア目的で俺の事をパーティーメンバーに誘ってるのか?
そうだったらちょっとショックなんだけど…)
「別にソフィアは気にしてなかったと思うけど…
それよりも受付嬢さんの方が機嫌を悪くしたんじゃないのか?」
「ああ、それは全然問題なかった。
後で罰金払いに行って頭下げて謝ったんだけど『よくある事ですから』って笑って許してくれたからな。
……ソフィアさんは怒ってなかったかぁ。
……そっかぁ、よかったぁ…」
受付嬢さんの心の広さに少し感銘を受ける。
それにしても、やはりミルシェはソフィア関連の目的で俺を勧誘したようだな。
少しだけ心が傷ついたが、『まあしょうがないよね』とも思えてしまう。
と、ソフィアの話をした事でふと思い出した。
「あれ?俺をパーティーメンバーに誘っても依頼は受けれないんじゃないか?
確かC級冒険者が二人以上同行してないと依頼は受けられないって決まりの筈では?」
おそらく、ミルシェは今日冒険者になったばかりだ。そんな彼女がC級冒険者二人とパーティーを組むのはかなり難しいと思うのだが…
しかし、彼女は如何ともないと言った素振りで答える。
「ああ、言ってなかったな。
アタシのパーティーって言ったけど、正しくは『アタシの兄貴のパーティー』なんだ。
今はアタシを含めて計三人。その内、兄貴ともう一人はC級冒険者だから依頼は問題なく受けれるぞ。」
「なるほど。」
それなら冒険者になって直ぐでもパーティが組めるというのも納得がいく。
(親族や兄弟に冒険者がいると色々と頼りになりそうだな。
わからないこととか気兼ねなく聞けそうだし…)
「と、言うわけで。どうだ?改めて、アタシのパーティーに入らないか?えっと…」
おそらく、俺の名前がわからないので詰まっているのだろう。
まあ、名前を聞く機会などなかっただろうからしょうがない。
「俺は佐々木明、アキラでいいよ。パーティ参入のお誘いはありがたく受け入れたいと思う。」
俺が勧誘を承認すると聞いた途端、すごく嬉しそうな顔をするミルシェ。
それと連動する様に耳がピコピコと動いている。
「おお!入ってくれるのか!よかった〜」
嬉しそうにしてくれて何よりだが、俺にはどうしても聞きたいことがあった。
「…ただ、その前にこれだけは質問しておきたい。」
「ああ、いいぞ!なんでも聞いてくれ!」
相変わらず耳をピコピコさせながら喜んでいるミルシェ。
俺はそんなミルシェにずっと思っていた事を聞く。
「…俺を誘ってくれた理由って、ぶっちゃけソフィアと仲良くなるためだったりする?」
ピコピコと動いていたミルシェのケモ耳がピタリと止まる。
そして訪れる沈黙。
「……………てへっ。」
言い訳を考えることを諦めたミルシェの表情は、俺が誘われた理由の全てを物語った。
どうやら、俺は下心100%でパーティーメンバーになるように勧誘されたみたいですね、間違いない。
早速補足説明です。
前に、C級冒険者には余裕があると言いましたね。
アレはより正しく言うと『E、D冒険者と比べて』余裕があるという感じになります。
要は『自分以外の事を気にして依頼をしても問題はない』程度。プロではありますが、全く戦闘慣れしていないようなE、D級冒険者を沢山連れて依頼を受けれるほどの余裕はありません。
パーティーメンバーにしても、戦闘にある程度役立つ人材を求めます。
なので、メンバー参入希望者は皆、必死に自分のアピールポイントを主張します。
例えば「俺はタンク役として使えるから入れてくれ。」とか「戦闘は苦手だが荷物持ちならできるから入れてくれ。」とかですね。
まあ、「私を連れてってー」とか「俺も連れてってくれー」とかばかりしか本文には出てきてませんが、これは『自分の役割、長所等を見つけられてる人材は、既にパーティーメンバーに入れている。』ため。
全員では無いですが、『自分の役割を理解している人材』の殆どは『戦闘時の連携や自身の役割の把握等にも慣れている』ため、今までもパーティーを組んでいた人である事が多いです。
ちなみにビスタ君とラフィちゃんの二人も、互いに自分の長所、短所を理解し、それを補うように連携して依頼を遂行しています。
今回の補足説明を纏めると、『自分の能力を理解して、自分ができる分野で協力する事が大切』って事ですね!自己主張だけじゃ協力なんて出来ないって事です!




