『仲良し(?)兄妹』
気兼ねなく話せる人がいることの有り難みを感じる今日この頃…
パーティーメンバーを募るべく、ギルド内にある大広間へと来た俺は
「なんだこれ…」
その狂気的とも言える騒々しさに驚いていた。
沢山の冒険者達が集まり、大声で仲間を募っているようだ。
それも「頼むから俺を連れて行ってくれ!!」だとか「私も連れて行って欲しい!!」だとか「俺が先に約束してたんだ!お前は来るな!」だとか、みんな切羽詰まったような感じで…
(もしかして…あの決まりって、思っていた以上に大変な条件だったんじゃないか?)
目の前で必死にパーティーメンバーの募集をしている冒険者達の姿を見ていると、そんな不安が脳裏によぎる。
(そもそも、最低でも二人組まなければいけないC級冒険者って合計で何人ぐらいいるんだ?
C級以上の冒険者が全体の1割もいないとかだったら、E、D級冒険者がこうなる事も頷けるが…)
見たところ、広場に居るほとんどがE、D級冒険者のようで、C級以上と思われる冒険者の事を囲むようにして集まっている。
上に行くほど人数が減っていくのはわかるが、人数の差がかなり大きいのは目に見えてわかる。
(そうじゃなきゃ、こんなに躍起になってパーティー参入をしようだなんてならないよな…
やはり、今まで一人で依頼を受けていた人達にとってあの条件は難しいわけか…
そもそも、人脈のない奴にはパーティー結成する事自体ほぼ無理なんじゃ…)
もっと『パーティーメンバーになってくれる人を募集してます!!』みたいな募集をしている人が多いと予測していたが、実際は『C級以上の方々、誰でもいいから俺を連れて行ってください』という冒険者達がC級以上の冒険者を取り囲んでいる有様だ。
(そんな中、ザ・駆け出しの俺をパーティーに入れてくれる人とかいるかなぁ…正直、不安しかないんだけど…)
無理かもしれないが、パーティーメンバーを募集してみるか。
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「兄貴、今回の依頼ってアタシでも問題ないのか?」
白髪の獣人の女性が、横に並んでいる男に話しかける。
女性と同じような綺麗な白い髪をしている男は、ニヤリとした笑みを浮かべて答える。
「まあな。なにせ、今日受ける予定のスライム討伐依頼は本当は昨日行くつもりだったが、誰かが新規冒険者登録をし損なったせいで行けなかったものだからな。今日やっと新規登録が完了したお前でも問題なく出来る難易度だぜ。」
すると、その女性は顔をしかめる。言われたく無い事を言われて少しバツが悪いと言った感じだ。
「…その件は悪かったって。昨日待たせた事だってちゃんと謝っただろ?」
「あーあ!お前、無銭飲食なんかで登録できなかったりとはな〜!」
「ちょっ、やめろよ!!おい!声を高らかにして言うな!!バカ兄貴!!そもそも、無銭飲食ってガキの頃に家の近所の店の飯を食い逃げした時の事だったし、あの時兄貴も一緒に食い逃げしてたから人の事言えないだろ!」
その女性、ミルシェは男を睨みながら言う。
「ふはは!俺はあの後キチンと飯代を払ったからな!カルマ値測定器には引っかかってねーんだよ!」
勝ち誇ったようにそう言い張る男。
それを「ぐぬぬ」と睨み続けるミルシェ。
そんな男の優位的な現状は
バシッ
「痛っ!!」
何者かが男の後頭部を叩く事で崩れ去る。
「いきなり何すんだよラフィ!!」
男は自分の頭を叩いた張本人にそう尋ねる。
すると、ラフィと呼ばれた金髪の女性は「はぁ」とため息をつく。
「ビスタ…恥ずかしいからこんな所で馬鹿な事しないでよ。」
そう言われてその男、ビスタは少したじろぎたつも言い返す。
「馬鹿な事?俺はただミルシェをいじってただけで…」
「いちいち言い訳しないの!そもそも、あんたも食い逃げしてるんだから人の事言えないでしょ?」
「ぐっ…でも結局俺はちゃんと金は払ってて…」
「お金払ったのだって、お父さんにゲンコツされて泣く泣く払ったんでしょうが!大切な所を省いて良いように見せようとするんじゃないわよ!」
「ぐはっ!!」
完全に論破された挙句、恥ずかしい過去を暴露されたビスタ。その姿と先程の話を聞いたミルシェは呆れた顔でビスタを見据える。
睨みつけると言うより、冷ややかに見ていると言った方が適切だろう。
「…おいアホ兄貴。よくアタシのこと馬鹿にできたな?」
「…ごめんて…」
「まあ、昨日待たせたのは事実だし、後で飯奢ってくれれば許す。」
「…我が妹ながら、ちょっとチョロ過ぎないか?
お兄ちゃん、少し心配になってきたんだけど…」
「うるせー。アタシは兄貴と違って、一々話を引き摺ったりはしな…………」
突然、何かを見つけたミルシェがそれを凝視して黙る。
「どうしたミルシェ?何かあったか?」
「いや、あそこにいるアイツ。昨日『緋色の魔女』のソフィアさんと一緒にいた奴だと思うんだけど…」
そう言って、ミルシェは広場の端の方であたりを見回している黒髪の青年を指さす。
青年は駆け出しの冒険者が好むプロテクタータイプの鎧を着ている。
誰かと一緒に居ないところをみるに、どうやら他の冒険者同様にパーティーメンバーを探しに来たようだ。
「え?『緋色の魔女』に間違えて喧嘩売りかけたって言ってたアレ、単なる冗談じゃなかったのか?俺はてっきり、お前が食い逃げの件の恥ずかしさを誤魔化す為に嘘ついてるもんだとばかり…」
「…まあ、アタシ自身一番信じれてなかったからそう考えたって事については言及しないけどさ…」
そもそも、A級冒険者とは『人類の強者の最高峰』。E級冒険者が出会う事なんてほとんどないし、仮に会えたならそれだけで僥倖と言うレベルだ。
そんな相手に喧嘩を売るなんてもっての外で、最悪の場合だと冒険者として再起不能になる(身体的にも社会的にも)。
「いや〜、お前が馬鹿で凶暴な事は知っていたけどそこまでだったとは…」
「ミルシェちゃん、流石にそれは無いわ…私でも引くわ…」
故に、二人のこのミルシェへの態度は世間一般的な反応である。
「ば、馬鹿で凶暴とか言うなよバカ兄貴!
ラフィ姉も、そんな目で見ないでくれ!
ってか、二人とも話を最後まで聞いてくれよ!
あの時だって、アタシは知らなかったから喧嘩腰で話しちゃったんだって!」
ミルシェは必死に弁明しようとする。
「でも、『緋色の魔女』さまはお前に対して忠告をしてくれたって言ってなかったか?
潔く罪を認めろって…そもそも喧嘩腰って言ってるけど、一体どんな発言をしたんだ?」
「…………『しゃしゃり出るなガキ。』って言っちゃった。」
「ひえっ…」
「…ミルシェちゃんがそんなに命知らずだったなんて…」
ミルシェの発言を聞いて顔面蒼白の二人。
無理もない、A級冒険者からの忠告に対して、自分の妹(仲間)が『しゃしゃんな』などと言い返し、無下にしようとしたのだから…
「アタシだって知ってたらあんな事言わないよ!あれだって、自分より小さい子に舐められちゃダメだと思って見栄張って言っただけだし!!
てか!人を命知らずな馬鹿みたいに言わないでくれよ!!」
「いや事実じゃん。」
「いや事実よね?」
ビスタとラフィの即答が見事にハモった。
「ああ、もういいよ!アタシは命知らずな馬鹿って事で!!
とにかく!あそこの黒髪の奴は『緋色の魔女』と深い関わりがあるっぽいんだ!
で、今は何故か『緋色の魔女』と一緒にいないみたいだし、メンバーを探してるっぽい!となればやる事は一つ!」
「うちのパーティーメンバーに勧誘して仲良くなろう、って事だな。」
要は、『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』と言うことだ。
最も、討ち取りたいのではなくて仲良くなりたいのだが…
「そう。そもそも、あの時ちょろっと聞いた話じゃ『緋色の魔女』に進められて冒険者になったそうだし、戦力的にも申し分なさそうだろ?」
「まあ、今回の依頼なら戦力的な問題は特に無いと思うし…あの黒髪の彼をメンバーに誘うってのはありかもね。」
「俺も賛成だな。見た感じ装備もしっかりして………あれ?彼、防具は剣士向けの身につけてるのに剣とか持ってなくね?
実は拳闘士が何かなのか?」
「そんな細かいことはパーティーに勧誘してから聞けばいいじゃん!ほら!兄貴、ラフィ姉、早くアイツを勧誘しに行こうぜ!」
お久しぶりに登場した獣人族のミルシェちゃん。覚えていない方も多いと思いますが、明の冒険者登録会で出てきたヤンチャなあの子です。
捨てキャラじゃなかったんですよ。
ミルシェちゃんはあの後罰金を払い、次の日に新規冒険者として登録しました。
ちなみに今回出てきたビスタ君はミルシェちゃんの血の繋がった兄弟で、2年前から冒険者をしています。ラフィちゃんは人間族ですが、二人とは昔からの幼馴染です。ビスタ君と共に冒険者になるために2年前にエルドに移り住みました。
色々な補足説明は次話で書けたらなと思います。




