『溺れる者は…』
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意気揚々と受付に並んだ俺は、受付嬢に告げられた思いもよらない事に混乱していた。
「えっと…一人じゃ依頼を受けられないってのはどう言う事ですかね?」
「…実は最近、近辺の森に関する依頼を受けに行ったD級冒険者とE級冒険者の方々が多数行方不明になっているのです。なので、最低でもC級冒険者の方がニ名以上いなければD、E級冒険者の方は依頼を受けられないよう規則を設けさせていただきました。」
昨日はソフィアが同行してくれていたから問題なかったのだろう。何の咎めもなく依頼を受けていたので、そんな決まりが設けられていた事など知らなかった。
(それにしても多数の行方不明者か…)
「…それは、『森の異変』とやらのせいですか?」
すかさず、受付嬢に質問してみる。もしかしたら、何か情報が得られるかもしれない。
しかし受付嬢は少し悩んだ素振りを見せた後に
「…申し訳ありませんが、その件についてお答えする事はできません。ですが、依頼を受ける際は先程の決まりを守っていただきますよう、ご協力のほどをお願い致します。」
そう言い切った。
「そうですか。…わかりました。」
どうやら、機密事項は『森の異変』に関する話のようだ。
受付嬢の反応から察するに、異変の原因は既にある程度わかっている。
(先程の言い方は『分かっているからこそ言えない』といったニュアンスをしていたしな…)
それにしても、注意すべき対象についての情報をわざわざ意図的に話さない意味…ねぇ。
(…考えられるのは『原因の正体を知られると、何かしらギルドに悪い影響を及ぼすから』とかか…)
仮に、『圧倒的な脅威が森の中にいる』と言う情報がギルド内に広がれば混乱が起きかねないだろうし、それが市民の耳にでも入ればそれこそ大混乱に陥る恐れがある。
(まあ、下手に原因を隠したとしても憶測やデマなんかが広まって同様の状態に陥る気がしなくもないが、そこら辺は対策取ってるんだろう。
俺が悩んだとこでどうしようもないな。)
それに、依頼その物を禁止にしていない所から察するに、森の異変の危険性はそこまでする必要はない物なのだろう。
(…となると、今の俺が考えなければいけない問題は依頼を受ける為のチームを組める仲間が誰もいない事だな。)
改めて見ると、E級冒険者のくせに知り合いがA級冒険者だけという、凄く奇妙な人脈をしている。
成り行きとはいえ、流石にこれはおかしいだろうと自分でも薄々気が付いていたのだが…
(それにしても、黒服の男に刺されてこの世界に転生したあの日から物事が全てスムーズに進み過ぎている気がしてならないな。)
その内、それらの幸運のツケを払う時が来るかもしれない。そんな恐ろしい考えすら浮かんでしまう。
(まあ、あんまりネガティブに考えるのは良くないよな。病は気からって言うくらいだし。
よし!とりあえずパーティチームを組んでくれるメンバーを探してみるとするか。)
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突然だが、冒険者のパーティーとは何故組まれるのか。
それは組む事で何かしらメリットがあるから。
そのメリットを上げていけばキリがない。
そんな沢山のメリットの中でも最も大きいのは、やはり『戦力増強』だろう。
人数が増えれば手数が増えるし、多種多様な攻撃手段を用意できる。さらにうまく連携などを取れば更に安定して戦闘を行うことが可能となる。
回復魔法が使える魔術師がいれば大怪我を負った仲間の生存率が上がるし、剣士系と魔法系の仲間が一緒にいればモンスターの弱点に応じて戦い方を変える事ができる。
では、パーティーを組まない人は何故沢山いるのか。
一人でこなす事にこだわりがあるとか、仲間などいなくても支障はないとか、そういった単純な理由でソロを貫く者もいるにはいる。
しかし、大多数のソロの冒険者達は違う。
多くの冒険者がパーティーを組んでいない理由、それは彼らが自身が組むことが可能なパーティーを組んだ所で、大した利益を得られない為である。
C級以上の冒険者のように全員が戦い慣れている者だけでパーティーを組む場合なら、連携して効率よく戦う事は難しくない。生活にもある程度の余裕がある為、報酬の分け前などでの金銭揉め事は起こりにくい。
問題はD級以下の冒険者によって構成されるパーティーだ。
そもそも、D級の冒険者と言うのはその大半が『ステータス値がある程度高い為、E級よりも上』と区別されている者達である。そのため、戦闘慣れしているか否かに関わらず、ステータスさえ一定値を越えればなる事ができる。
E級冒険者は言わずと知れた新人冒険者であり、『鑑定眼が使えるちょっと一般人より強い程度の人材』がほとんどを占めている。そのため、個人で受けられる依頼にも限りがあり、大半は生活難に陥るのだ。
こういったE級、D級冒険者達は、生活を安定させる為にもいち早く強くなって、上の階級にいく事にこだわる。
そこでさらに問題が生じる。
冒険者達は例外なく『依頼の中で魔物を倒し、経験値を得る事でステータスは上昇していく』のだが、経験値を得ることが出来るのは『その魔物に止めを刺した者だけ』である。
(例えば、明が瀕死にまで持っていった超巨大芋虫を、通りすがりのウィリアムが『討伐対象見っけ、サクッと倒したろ。』と倒せば経験値は全てウィリアムに入るし、討伐者もウィリアムという扱いになる)。
そのため、E、D級の冒険者は魔物に止めを刺すことに執着する。
故に、E、D級冒険者のみで組まれたパーティーでは止めを刺す役割が取り合いになりやすいのだ。
これのせいで仲間内の関係が不和になり、依頼の達成率も低下する。
そう言った死活問題に加えて、依頼金の取り分やメンバー内での異性関係等の面倒な問題事がついてくる。
要するに、ただですら生活が大変なのに、自分から足枷を増やそうとする者などほとんどいなかった訳である。
しかし、ギルドから足枷をつける事を義務化されてしまった。
こうなった場合、彼らはどんな行動を取るか。
「すみません!ジードさんとローガンさん!オイラも依頼に連れて行ってくだせぇ!!」
「馬鹿野郎!!俺はお二人に一緒に依頼を受けてもらうよう約束してたんだよ!テメェは引っ込んでろ!!」
「誰か私とパーティー組んでください〜!!お願いします〜!!」
「荷物持ちでもなんでもするから!誰か俺をパーティーに入れてくれぇ!!今日の宿代が足りないんだよぉ!!」
彼らは、縋れる藁を探そうと必死になるのだ。
ジードさんとローガンさんは二人ともC級冒険者です。仲良しでよくパーティーを組んでいます。




