『勘違い』
今回は後書きが控えめです。
「えっ!?ソフィアの姐さん?何でこんなとこにいんの?」
ウィリアムが目を見開いて驚きながらそう言う。
すると、ソフィアが呆れたと言わんばかりにため息をつき
「何でって、そこにいるアキラの依頼に同伴してて、戦いの様子をずっと見てたのよ。全く、人の獲物を横取りするなんて……ウィル、見損なったわ。」
と言った。
ん?獲物の横取り?
ソフィアに獲物を横取りしたと言われたウィリアムが、納得いかないと慌てて弁明する。
「いやいや!!コイツ、どう見ても食われかけてたじゃねーか!獲物も横取りもないだろ?」
そうだ。俺は調子に乗って自爆して食われかけてた。だから横取りと言うのは違うと思うが。
「アキラは石を投擲して超巨大芋虫にダメージを与えていたのよ?それが有効打で、かつ安全な攻撃手段だとも理解していたわ。
にも関わらず、わざわざ相手に近づいてまで見え見えの罠に引っかかっていた…
これは瀕死になって逃げ出すかも知れない超巨大芋虫の油断を誘うためだったのよね?ねぇ、アキラ。違うかしら?」
「え?」
思わずそう言い返してしまう。
だって超巨大芋虫に近づいたのは『殴って仕留めれば武術スキルが手に入るんじゃ』とか言う欲望丸出しの理由だし、別にそこまで考えてなかったからな。
「……えっ?違ったの?
投石による攻撃があるのに思いっきり転んでまで糸に絡まったのは、相手の油断を誘おうとしたからじゃない……?
じゃあ、わざわざ超巨大芋虫に突っ込んでいった理由って……」
「……すみません。瀕死だったから素手で余裕だろって思って、近づこうとしたら糸踏んづけて転びました。」
「ぶふぉっ!!」
それを聞いたウィリアムが吹き出した。
ソフィアは信じられないという風な顔で俺の方を見ている。
糸さえ無ければ、きっとあのまま勝ってたんですよ。
なんて言い訳が逆効果な事はわかってる。
今回は100%俺が悪い、それは認めなければいけない事実だ。
だから、これ以上は何も言わない。
「ちょっ…おまっ……ぶふっ…糸に自分から、突っ込んでって転んだって……いーひひひっ…ちょ、待って…笑いすぎてお腹痛いっ!」
それにしても、ウィリアムさんはちょーっと笑いすぎじゃないですかね?
「……ウィル、笑いすぎよ。…じゃあ、あの時アキラは本当に食べられそうだったって事?」
「ああ。もしウィリアムさんに助けられてなかったら、かなりヤバかったかも…」
「…そうだったの…あそこまで自信満々に走っていって転んでたから、てっきりわざとだと思ってたわ…助けにいかなくてごめんなさい…」
それを聞いたウィリアムが「ぶふぁ!!自信満々に転んだって!ぶわはははっ!!」と言いながら笑い転げる。
ソフィアさん、もしかしてわざと言ってません?
「いや、ソフィアに謝られる事なんてないよ。全部自業自得だし…」
今回の件は、安全に倒せる手段があるにもかかわらず、スキル欲しさに突っ込んでいった俺が悪いのであって、ソフィアは何も悪くない。
「ウィルも、手柄を横取りしただなんて言っちゃってごめんなさい。あと、アキラを助けてくれてありがとう。」
「ああ、全然気にしてないし問題ないぜ!
ソフィアの姐さんが物事を考えすぎるせいで勘違いしがちな事は昔から知ってるしな!
それに面白い話も聞けたし、俺としては万々歳…
今回の話は酒の席で話すとでも…」
「お願いですからやめてください!」
空かさず懇願する。今回の話が広められたら恥ずかしくてギルドに行けなくなる。
「はっはっはっ!!冗談冗談!そんなマジに止めなくても大丈夫だって!」
(本人はそう言っているが、見るからに口が軽そうなんだよな…
隠し事なんて、酒を飲んだら2秒で言いそうなタイプだ。
まあそんな事を考えたところで、俺にはウィリアムがそうでないと祈ることしかできないんだけどな。
まあ、それはそうと…)
色々と、話にひと段落着いた所で、さっきから気になっていた事を尋ねる。
「ところで、二人は知り合いなのか?さっきから互いに、ウィルとか姐さんとか愛称で呼び合ってるみたいだけど。」
「…あぁ、まあな…」
そうウィリアムが答える。
ん?なんか歯切れが悪いな…
「ウィルは……まあ、私の後輩冒険者でね。昔、一緒にパーティーを組んで依頼を受けていた時があったんだけど…その時にいろいろとあったのよ。」
ソフィアが補足する様にそう言う。つまりソフィアが先輩で、ウィリアムが後輩だったという事なのか。
何故かウィリアムはバツが悪そうだったけど…
「あぁ、懐かしいような、思い出したくないような………なあ、アキラよ。」
「なんですか?」
急に俺の方に話を振ったウィリアム。何を言うのかと思うと
「ソフィアの姐さんの冒険者指導、かなりキツイ物だと思うが……まあ、とにかく頑張れよ!健闘を祈る!!」
そんな不安になる事を言ってきた。
「えっ…俺、そんなにやばい事をやらされるんすか?」
「ああ…ソフィアの姐さんは、そいつがある程度戦える奴だと分かった途端に鬼教官になるんだ…俺も、初めてパーティーを組んだC級時代の時に飛竜と戦わされた。
『無理そうなら助けるから、とりあえず一人で頑張って』って飛竜の巣に放り込まれてな…
あの時はマジで死ぬかと思ったぜ。」
ワイバーンって、確か空飛ぶドラゴンの事じゃなかったか?それの巣に放り込んで一人で戦わせるって流石にちょっとスパルタ過ぎませんか?
そう思っていると、さっきまで黙っていたソフィアが口を開く。
「全く…人聞きが悪い言い方をしないで欲しいわね……ちゃんとその人その人の力量を見て、十分通用すると判断してからしかそんな事しないわよ。だから、流石に今のアキラにはそんな無茶振りをしたりはしないわ。」
うん、戦わせる行為自体は否定しないと…
遅かれ早かれ結局戦わなきゃダメって事ですね。
「よかったなアキラ!まだ飛竜とは戦わなくて良さそうだぞ!」
そんな事を爽やかに言ったウィリアムに、俺は
「はは…そうっすね……」
そう、苦笑しながら返事を返す事しかできないのであった。
ソフィアの戦闘訓練はスパルタですが、『とりあえず厳しくする』のではなく『その人の限界ギリギリを見極めて、そのギリギリを実践させる』感じです。
ワイバーンは本来はB級冒険者が一人で倒す程の強さでしたが、ウィリアム君なら出来ると判断されて巣に放り込まれました。




