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転生冒険者がゆく異世界冒険譚  作者: カニ玉380円
第二章・転生冒険者とゴブリンロード
21/81

『厄災の前触れ1』

今回も長い後書きという名の補足説明があります。

興味なかったら無視してもらっても大丈夫です。

「昨日、クロマヒタケの納品依頼を受けたD級冒険者のお二人がまだ帰ってきていないようです。依頼の難易度からして、野営をするほど時間がかかるものではないと思うのですが…」


新米ギルド職員であるエマは、自分の上司であり尊敬する先輩ギルド職員、サーシャにそう伝えた。

ちなみに、サーシャは職員歴10年のベテランである。


「行方不明、ってことね……

全く…行方不明になっている冒険者のパーティーはこれで9組目よ。しかも、その行方不明になっているパーティーは全部D級かE級でのみ構成されている…」


サーシャが不可解そうな顔をしながらそう答える。


森に生息するロックタートルが凶暴化しているため、極力、依頼の受注は控えるよう注意してはいる。しかし、日銭を稼ぐのに忙しいD級やE級の冒険者達にはそんなことを気にしていられるほどの余裕はない。

職員たちもその事を知っているので、依頼を受けにくる冒険者を無理に止める事はなかった。それにしても


「流石に、多すぎますよね?」


エマがそう尋ねる。新米職員とは言え、これが明らかに異常事態である事はわかるらしい。


パーティーとは、各々の生存率を上げるために組まれるものだ。

複数人で纏まって行動する。こうする事で一人の時と比べて戦力の合計値が上がり、手数も増えるため、多少強いモンスターに遭遇しても問題なく対処できるようになる。

また、もしもの時(強力な敵との遭遇)には一人を情報伝達係としてギルドに帰還させる事で異常事態の報告もできるため、ギルド側も出来る限りパーティーを組んで依頼を受ける様に進めていた。


しかし、今回行方不明になったパーティーは全て、()()()()()()ギルドに帰還していない。そのため、有力な情報が得られず、何故彼らが帰還できないのかが分からないのだ。


「ロックタートルが凶暴化しているとは言え、9組のパーティーが全員行方不明になっているのは絶対におかしいわ。」


「そうですよね……あっ。それと、キャタピラーの討伐依頼をしに行ったE級冒険者のルジャスさんも一昨日から帰還されていません。」


「………個人の冒険者に至っては20名近くが行方不明になってる。こっちもD級とE級だけね。」


この街にいるD、E級冒険者の多数が行方不明という異常事態に、サーシャは頭を悩ませる。


(『行方不明者が多数出ている』と、依頼を受注しにくる冒険者に伝えた所で依頼を受けなくなる訳じゃないし…第一、行方不明者の()()()()見つかっていないものだから、原因もわからず仕舞い…それもあって、森に入る事が危険だと言う説得ができないのよね…)


今回のD、E級冒険者行方不明問題において、最も不可解な点。それが『行方不明者の死体や、身に着けていた遺品(装備やアイテム)』が一切見つかっていない事である。


強いモンスターによって冒険者が殺された場合、殺された現場には必ずと言っていいほど冒険者の死体や装備、そして戦闘による破壊痕が残るものである。

だが、今回は違う。

()()()()()()、何も残さずに忽然と居なくなっているのだ。

こんな事は今まで起きた事がない。


(冒険者達が凶暴化したロックタートルによって全滅したのなら死体や破壊痕が見つからないってのはおかしいし、何よりもパーティーの()()()として帰還していないのがキナ臭いわね。)


となると、犯人は冒険者を狙う山賊か…


(…いや、山賊がD級やE級の冒険者なんて好んで狙うはずがないわね。どう考えても、労力に対する利益が釣り合わないわ…)


金品などを目的に人を襲う山賊が日銭を稼ぐのに精一杯なD級やE級の冒険者を狙って襲うなんてありえない。そもそも、山賊がいるのならば焚火の跡や見限られた品(使えないガラクタ類)が捨てられて残っているはずである。


「とにかく、上に現状を伝えてみましょう。エマは受付に戻って仕事をしていて頂戴。」


そう伝えると、サーシャはギルドの所長室へと向かった。



〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:




所長室のドアをノックすると、「どうぞ〜」と気さくそうな声が帰ってきた。


「失礼します。」


「お〜、サーシャちゃんじゃないの!珍しいね〜。どうしたの?」


20代くらいに見える、金髪の女性がサーシャを嬉々として歓迎する。その女性の耳の先は長く尖っていた。


「…ご報告と提案があって参りました。ギルドマスター。」


そう。この金髪の女性こそ、この街のギルドマスター(ギルドの最高責任者)。エルフ族のナタ・ファタリアである。


「もー、サーシャちゃんは相変わらず堅っ苦しいね。他のみんな(一部ギルド職員)みたいにギルマスって呼んでくれていいんだよ?」


「遠慮しておきます。()()()()()()、まずはご報告したい事があります。」


サーシャはナタのおふざけ(スキンシップ)を軽く流して報告(己の考え)について伝えようとする。


「そんな事って……まあいいや。サーシャちゃん。報告したい事って一体なんだい?」


「行方不明になっているD級、E級冒険者及びパーティーについてです。」


サーシャがそう言った途端、ナタの顔から笑顔が消える。先程までの気さくそうな彼女の面影はもう無い。


「……続けて。」


「はい。ここ一ヶ月ほどの間、依頼を受けてその後行方不明となった冒険者の合計人数は45名。いずれもD級、又はE級冒険者です。」


「……また、三名増えているね……」


そう言って、ナタは少し悲しそうな表情をする。


「はい。これは明らかに異常です。ですので、D、E級の冒険者の依頼受注を禁止すべきではないでしょうか。」


そうサーシャが言い切った後、ナタは先ほどの悲しそうな表情を真剣な顔つきへと変える。


「…この森の現状を確認するために、A級冒険者であるソフィアちゃんを本部(王都ギルド)ギルドマスター(全ギルト最高責任者)に頼んで寄越してもらったのはもう知ってる?」


「はい、存じ上げております。」


「つい先日、ソフィアちゃんに森の調査依頼を受けてもらったんだけど…

その調査の結果、この森にゴブリンロードが発生している恐れがある事がわかったんだ。」


「!!!」


ゴブリンロード、ギルドの文献の中で見たことがあった。

ゴブリンの群れを引き連れ、近くの街を襲って人々に厄災をもたらすとされる強力なモンスター。

それがこの街の近くの森にいる可能性がある。

告げられた事の重大さと恐ろしさに、自分の身体がふるふると震えているのがわかる。


「現在、まだ確実な証拠となるものは見つかっていないから()()()()()()()の域を出ていないけどね。

現在、一部の上位冒険者とギルド職員にだけ、この話は報告している。

……と言うのも、下手に不確定な情報を散布しては全体の混乱を招きかねないと判断したからなんだけど…」


「……もし、本当にゴブリンロードがいたらどうなるのでしょうか?」


「まあ、今までの資料を参考に考えれば、間違いなくこの街を襲撃してくるだろうね。

そうなる前に必ず見つけ出して、叩き潰さなきゃいけない。ただ今回の森の一連の問題が、全てゴブリンロードたった一体によるものだったと仮定したら、最悪の場合は………」


「最悪の、場合は………?」


ナタは()()を口に出すのを躊躇うようにしばし沈黙して


「……この街の人間が皆殺しにされるかもしれない。…A級冒険者すらも含めた全員が、ね……」


そう言い切った。



ナタはソフィアが『文句言ってやる』って言ってた人とは別人です。


ここからは長くなります。興味ない方は無視してくれても大丈夫です。


ソフィアが調査を終えるまでのギルドの異変に対する認識や取り組みについて。大まかに書き連ねていくと




・森に生息しているロックタートルが凶暴化している。そのため、森に入る際はなるべくパーティーを作るように促している。なお、ロックタートルの凶暴化の原因については不明である。


・D級、E級冒険者及びパーティーのみが多数、行方不明となっている。

そのため、行方不明者の捜索依頼を、C級以上の冒険者パーティーに複数回にわたって出している。

しかし、いずれの調査報告でも行方不明者の遺体及びそれに類する痕跡に関する報告は上がらなかった。


・街のギルドに所属している上位の冒険者達に、これらの異変の原因の調査依頼を頼んだ。

しかし、調査を終えた者は皆一様に『異変という異変が見当たらない。それこそロックタートルが凶暴化しているだけだった。』と答えた。

(わざわざ王都のギルドからソフィアを呼んでまで調査依頼をさせたのはこれが原因。)


・ソフィアが来るまでに、ギルドが調査や捜索を行い、既に出していた結論としては


『依然として増加している行方不明者は、何らかの要因により帰還できない状況にあるか、死亡していると思われる。

この要因となっている物が、同様にロックタートルを凶暴化させているとも考えられる。

なお、行方不明者の遺体、遺品、要因、要因による痕跡、およびそれらの目撃情報等については一切報告されていない。

そのため、この原因へ厳重注意の上、各自の依頼を遂行するように。』


と言うもの。


要は『多分めっちゃ強いモンスターか何かが森にいるせいでD、E級冒険者達が行方不明になってるし、ロックタートルも凶暴化してると思うんだけど、そいつに関する痕迹とかは一切見つかってないよ。

だから、みんなはそいつに気をつけながら森に仕事しに行ってね。』

という感じです。


もうちょっと対策の仕様があったんじゃ…と思わない事もないですが。あんまり有能ギルドにしちゃうと、次はゴブリンロードが不利になっちゃう。

というメタい理由があります。


何故、依頼の受注自体を禁止にしないのかは本文で記述していた通り『森に入って仕事をしないと食っていけない冒険者達は、危険と分かっていても森に入るしかない。』から。


現に森に行った全員が行方不明になっているという訳でもないため『簡単な依頼だし、俺は大丈夫だろ。』という思いから、その冒険者は単独であっても躊躇いなく森に入っていく。


そしてまた負のスパイラルへと……




と、いった感じでした。


ソフィアからの調査報告が終わった後のギルドの動きはまた次回の後書き(補足説明)で!!

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