『ゴブリン』
ゴブリン。
それはRPGや様々な異世界物語に登場するスライムと同じくらいよく知られている雑魚モンスター。
人の子供くらいの大きさの緑色の肌の小人で、森に入った人間に集団で襲いかかるとかなんとか…
そんなゴブリンが、やはりこの世界にもいるらしい。
「ゴブリンって、あの緑色の小人みたいな奴の事だよな?」
一応俺の認識が合っているかどうかを確認しておく。地球のフィックションのゴブリンが、この世界でのゴブリンと全く同じとも限らないしな。
「ええ、その認識でいいと思うわ。」
そう答えた後
「もっとも、小人…なんて可愛らしいものじゃないけどね…
あれはどちらかというと悪魔の類かしら…」
と悪態をついた。
「そんなに恐ろしい奴らなのか?」
あんなでかい亀を瞬殺したソフィアに悪魔と言わしめるゴブリンとか考えたくもないが、一応聞いてみる。
「恐ろしい…と言うよりは厄介って感じね。
森のあちこちに低レベルの罠を仕掛けてたり、後ろから毒矢撃ってきたり…あぁ、目を離した隙に荷物を盗まれてたこともあったわね…」
さらに続ける
「私も駆け出しの頃に苦労したのよ…何回もゴブリンの罠に気づかずに引っかかって、その度に同じパーティーの仲間に笑われて…
…なんか、思い出してイライラしてきたわ。」
…なんか地雷踏んだかな?と、一瞬思ったのだが、口で言うほど怒っているわけでもなさそうだった。
それどころか、少し楽しそうな表情をしているようにすら見える。
「とにかく、ゴブリンにはいい思い出はないってことか。」
「…ええ。
というか、ゴブリンにいい思い出がある冒険者がいるとは思えないけどね。」
そりゃそうだよな。
罠を張り、毒矢を撃ってきて、盗みさえ働く緑色の小人が快いものな筈がない。
相槌をうちながら、俺は思った。
ゴブリンに会う前にソフィアに会えてよかった、と。
罠を使って集団で襲いかかってくる人型モンスターに一人で出会えば、最悪殺されかねなかっただろう。
「まあ、この森のゴブリンがあんまり襲って来なかったのは、凶暴なロックタートルに怯えていて警戒心が高まっているからだろうし、特に問題視しなくていいと思うわ。」
そう言って、ソフィアはすっかり暗くなってきた空を見あげると
「色々話してる内に暗くなってきちゃったわね…仕方ないし、一度近くの街に寄る事にしましょうか。もちろん、アキラも一緒に来るわよね?」
と俺に言ってきた。
……………………あなたは神か?
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アキラがソフィアと話していた同時刻、森の奥にある巨大な木の下は形容し難い異臭に満たされていた。
血生臭いような、青臭いような、生ゴミのような、そんな不快な臭いを混ぜたような悪臭……
この世界の住民で、その臭いを嗅いだものはきっとこう答えるだろう。
これは『ゴブリンの臭いだ』、と。
その臭いは、木の下に集う千を超えるゴブリン達から漂っていた。
本来、ゴブリンは群れるとは言え、十匹を超えて群れることは滅多にない。
大きすぎる群れは外敵との遭遇率を上げ、かえって自身に危険をもたらすと知っているからである。
では、そんなゴブリンが千匹も集まるということは?
外敵との遭遇を恐れる必要が無いほどの、『絶対的な強者』が味方にいるからだ。
『我が同胞達よ……』
木の真下に、まるで玉座のように詰まれた岩の上。その上に堂々と座る『それ』がそう言葉を放つ
それと同時、集っていたゴブリン達が一斉に歓喜の声を上げる
『ついに…ついに時は満ちようとしている……』
『それ』の言葉と共に、ゴブリンの歓喜の声は次第に雄叫びへと変わっていく
『もうすぐだ!!我ら誇り高き森妖精族の時代の到来は!!愚かなる奴らを我々が討ち敗る時は近い!!』
雄叫びは絶叫へと変わり
『『『王サマ万歳!!王サマ万歳!!』』』
千を越えるゴブリン達は皆、岩の玉座に座る、彼らが崇める『王』へと溢れんばかりの喝采を送る。
そして
『誇り高き同胞たちよ!!
武器を取れ!!奴らを鏖殺にするのだ!!』
ゴブリン達の絶対の『王』にして、この森の異変の元凶。
『ゴブリンロード』が玉座から立ち上がり、高らかに叫んだ。
ちなみにゴブリン軍団のいた場所は明とソフィアが話していた場所からかなり離れていました。そのため二人にはゴブリン達の雄叫び等は聞こえていません。
後、ゴブリンの台詞は言霊の加護フィルターで自動翻訳してあります。ゴブリン達が人間の言葉を話している訳ではありません。




