『教えてソフィア先生!』
なるほど…A級冒険者の方でしたか。
通りであんなに強い訳だ、納得納得……
とはならない。
「あの……すみません。ソフィア……さん?」
恐る恐るソフィアに尋ねる。
「ソフィアでいいわよ?敬語も使わなくていいわ。それで、どうしたの?」
「…わかった。
ソフィア。
冒険者って、一体どう言った職業…?なんだ?」
そう言った俺の顔を、少し驚いた表情をしたソフィアが見ていた。
そして俺の全身を、特に服装や頭をじっと見てから
「なるほど……その服装といい、髪の色といい、珍しい名前といい…アキラはどうも遠い異国から来たって感じがするわね。違うかしら?」
「…ああ、こことは全く違う所から来たんだ。」
ここで『異世界の日本って国から来ました!』とは流石に言えないので、全く違う所から来たと具体的な所を誤魔化して答える。
「やっぱりね。遠い異国では冒険者自体が存在してないって聞いていたけど本当だったのね…」
俺もゲームなどの知識から『冒険者』という単語自体は知ってはいる。
でも、この世界の『冒険者』がその言葉通りのものであるとも限らない以上、知った気でいるのは望ましくないだろう。
「無知で申し訳ない…」
「いいえ、気にしなくても大丈夫よ。
えっと、冒険者とは何なのかについて説明すればいいのね?」
「ああ、頼む。」
「冒険者とは市民や街、国から出される依頼を受けて、それを達成する事で得られる報酬を得ることができる職業、又はその職業を生業とする人の事よ。
もちろん、いつでも誰でもなれるって訳じゃないわ。冒険者になるには街にある国立のギルドで冒険者登録をして、さっき私が見せた冒険者証明書を発行してもらわなきゃいけないの。」
そう言って、ソフィアは再び先ほどのカードを見せる。
なるほど、つまりは国公認の何でも屋って感じなのかな?どうやら、俺が知ってる冒険者の認識と大差はなさそうだ。
「冒険者になる際に満たしていなければいけない主な3つの条件ってのがあるんだけど…それの説明もいるかしら?」
「ぜひお願いします!」
思わず大声で答えてしまった。ソフィアが少しびっくりしたような顔をする。
「即答ね……えぇと、一つ目の条件は殺人等の大きな罪を犯していない事。
山賊みたいに人を殺していた人間は、冒険者登録をする事ができないわ。」
「罪を犯しているかどうかが分かるのか?」
「名の知れた山賊なら大抵似顔絵付きの指名手配書が出回ってるのよ。
そうじゃなくても、ギルドに置いてある『カルマ値測定器』で罪を犯していないか調べられるから素性を偽ったとしてもすぐにバレるわ。」
「なるほど。」
犯罪を犯してるかどうかが分かる『カルマ値測定器』か…
何やら、えらくハイテクな道具があるようだ。
「ちなみに、自己防衛として人を殺めた場合にはカルマ値は上昇しないの。
要は明確な敵意、もしくは殺意を持って襲ってきた人間を返り討ちにしてもカルマ値が増えることはないってわけ。」
つまりは正当防衛ならセーフって事か…
まあ、『山賊に襲われて殺されそうになったからやり返しました』って被害者のカルマ値が上がってたら流石に理不尽だもんな…
「二つ目の条件は一定以上の戦闘能力を保持しているもの。モンスターと戦う機会が多い職業だから戦闘能力がない人間が冒険者になろうとすると危ないと判断されるの。」
「まあ、だよね。」
戦えない人間を危険地帯に送り出しては無駄死にするだけだろうし、これは仕方がないな。
「最後に、三つ目の条件だけど…これが冒険者になれる人が少ない最大の理由ね。」
「と言うと?」
「鑑定眼ってスキルがあるんだけど、このスキルを保有していないと冒険者になる事はできないの。」
鑑定眼必須か…確かに目的の植物の採取の依頼とかがあったら、その時に鑑定眼が無いとかなりキツいよな。
「一応、鑑定眼必須の理由を聞いておいても?」
「鑑定眼のスキルはかなり冒険者にとって重要なの。よくある薬草採取なんかの依頼の時にも必須だし、一般市民からの危険区域の調査の依頼や魔物の討伐依頼を遂行する時にも重要になってくるわね。」
「危険区域の調査依頼?」
「えぇ。
予め冒険者によって鑑定が済んでいるのならいざ知らず、鑑定眼を持っていない一般市民から伝えられる情報だけじゃ明確な判断ができないの。
そもそも魔物に関する知識があまりない場合が多いから、見間違えて危険な魔物だと勘違いして調査依頼を提出、なんて事がザラにあるのよ。
だから、危険区域たらしめる原因となっている魔物の正体を、冒険者が実際に鑑定眼で判断して初めて正式な討伐依頼として出せるようになるの。
また、魔物の特徴や弱点も見れたりするから対策や討伐隊の編成がよりしやすくなるって訳。」
なるほど。
一般人から明らかにやばい魔物の目撃証言が来たら、まず討伐依頼ではなくて調査依頼を出す事で現地確認をするのか。
確かに、そうすればより詳しい魔物の情報が手に入って確実に倒すための準備が出来るようになるな。
(あ。そういえば…)
鑑定眼の重要性の話を聞いてふと思い出した事があった。
「実は俺、鑑定眼のスキルを持ってるんだ。さっきロックタートルの死骸を鑑定して、おとなしい性質の亀だって書いているのを確認した。
だから生きているロックタートルに近付いてたんだけど…実際はこっちを見るや否やすぐに雄叫びを上げながら俺を追いかけてきて……あれは一体どう言う事なんだ?」
鑑定眼がこれほどまでこの世界で信頼されているのであれば、あの情報は間違っていたとは考え辛い。
そう思い質問したのだが、それを聞いた途端にソフィアの顔が暗くなった。
「そうか、アキラは遠くから来たから知らなかったのね…
えぇ、そうよ。
本来のロックタートルなら、出会い頭に思いっきり殴ったりしない限りは攻撃なんてしてこないわ。
…でも、どうやらこの森のロックタートルは違うみたい…」
はぁ……とため息をついてソフィアが続ける。
「実は私、凶暴化したロックタートルの調査の依頼でここに来たのよ。
…森に住んでいるロックタートルが急に凶暴化したから、それの原因を探ってくれって依頼なんだけど。」
「……その、原因というのは?」
恐る恐る尋ねてみるが、ソフィアはわからないと言いたげに首を傾げた。
「あまり有力そうな情報も得られなかったし、わからずじまいだったわ。
巨大な破壊跡も、危険なモンスターによる被害の跡も特には無し…
それこそ、凶暴なロックタートルが沢山いるくらいしか普通の森の相違点は見られなかった…
まあ、強いて言うなら……
普段ならよく襲いかかってくるゴブリンが様子見しかして来なかったことぐらいかしらね…」
冒険者の階級については後々書いていきます。




