『初めての交流1』
(よし、順を追って現状況を考えよう。)
大きくなると家くらいの大きさになる亀の子供が黒焦げで死んでる。
周りの木や草はほとんど燃えてないし、黒焦げの死体にも特に捕食跡とかはない。
黒焦げの亀の死体の近くについさっき落としましたと言わんばかりの新品と思われるポーションが落ちている。
(……ほぼ確実に、この亀殺したのって人間じゃね?
これは早く追って合流した方がいいのでは?
言葉はおそらく『言霊の加護』で伝わるだろうし…
あっ、でも素性はなんて言おう…)
『異世界から転生して来ました!』なんて言っても、信じてもらえないだろうし不審に思われるにきまっている。
どっかの辺境から来ました、とか言っておくのが妥当だろうか。
…とりあえず、細かい事を考えるのは後まわしだ。
まずは亀を焼いた張本人に追いつかなければ。
足元に落ちていたポーションをそっとズボンのポケットにしまった俺は、決意を固めた。
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森の中にある平原にて
「ふう。これでもう8匹目ね…」
大きな帽子とローブに身を包んだ少女がそう呟く。
風に靡く長い赤髪が印象的なその少女は、どこか気怠げそうな表情をしているように見える。
目前にある巨大な亀の死骸は、一体どれほど強力な炎に焼かれたのだろうか。
まるで絵の具で黒く塗り潰したのでは、と思ってしまう程に黒焦げになっていた。
「ロックタートル…
本来ならもっと穏和でおとなしいモンスターのはずだけど…
…ここまで攻撃的な個体にばかり遭遇するってことは、やっぱりあの報告が正しかったって事よね。」
はぁ、と。
軽いため息をつく少女は、碧の瞳を木々の生い茂った森へと向ける。
「…誰かが、意図的に私の魔法の痕跡を辿ってる?
…仮に、敵意があるのなら、襲ってきた所で返り討ちにすればいい…か。」
目の前の巨大な死骸を眺めながら、事もなげに言い放つ。
「全く……ギルマスも人使いが荒いわ。
帰ったら文句を言ってやらないと。」
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それから暫くして、同じ平原にて
「っ!!」
焦げ臭い匂いを放っていた巨大な亀の死骸を見つけた俺は、ただただ驚愕していた。
「おいおい…
家くらいの大きさってのは誇張してると思ってたけど……」
なるほど、これは確かに家屋と同等って言ってもおかしくない。
甲羅の高さだけでも軽く5mはありそうだ。
動物園でみた象よりも、一回りも二回りも大きい生物の焼け焦げた残骸。
そんな、非現実的な物が目の前にある現実を受け入れるのには少し時間がかかった。
「そして、こんな化け物亀を丸焦げにして倒す人間か…
いや、やっぱり人間じゃないかも。」
こんな化け物を倒せる人間など、それはもはや人ではなくて人の姿をした化け物ではないだろうか。
目の前で煙を上げながら横たわる巨大亀だったであろうモノを見ながら、そんな事を考える。
そして辺りを見渡して、気づいた。
「でも、やっぱり亀以外のものはほとんど焼かれてないな。
大きな足跡なんかも…亀の物以外はないし。」
明らかに、この亀の駆除を目的としている事がわかる。
先程の小亀(小さくない)の残骸然り、目の前の平原の焼き跡然り、この一連の動作がロックタートルをターゲットとして駆逐して回っている人間によるものであると確信した。
「亀殺しの犯人は人間で間違いない事はわかったが…これを実行したであろう本人には会えずじまい、か…」
黒焦げの死骸は発見できた。
だが、肝心な張本人に会うことができない。
追いつく目標が動き続けていては一向に追いつけない…
(まるでアキレスと亀…じゃないな、うん。
…兎も角、このまま亀の死骸を目印に探しているようじゃ、いたちごっこで一向に追いつけないだろうな。)
かといって、亀を焼き殺してまわってる奴の居場所の目印になるものが他にある訳では…
(いや、待てよ?
まだ殺されてないロックタートルを探せばいいんじゃないか?
この亀、鑑定眼で調べたらデカイけど危害さえ加えなければおとなしいとか書いてあったし、近くで待機するくらいなら襲ってくる事はないんじゃないか?)
追ってもダメなら待ち伏せる作戦、なんだか行ける気がしてきた。
(よし!
そうと決まれば先回りだ!)
その後、生きてるロックタートルを見つけた所で目当ての人物が必ず訪れるわけではないと気がついたのは、すっかり日が落ち始めた頃だった。
モン◯ンで一番やばいモンスターって、やっぱりどんなモンスターでも倒しちゃうハンターなんですよね。
あれを同じ人間であると言っていいのか…




