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42 連載開始

 その日の午前中、ブラウニーさんに会うべく屋敷に向かった。

 屋敷の主人とは仕事の仲間なので特に問題なく応接室に向かわせてもらえた。

 ブラウニーさんとミアが部屋に到着すると早速話が始まった。

 といっても連載小説の話ではなく本の感想をカリンが喋っているようだった。

 

「そんなに面白い話だったんですか?カリンさん」

「うん、とっても!」

「それなら私も読んでみたいかな」


 その言葉を聞いてカリンは、そうそうその話をしにきたんです、と新聞に連載させてもらえないかと思い出したかのように話し始めたようだった。

 

「ミアさんには俺から話すよ」


 カリンがブラウニーさんに話している最中、俺もミアも暇なので適当に説明をして時間を潰しておいた。

 この屋敷でも掲載予定の新聞をとっているので、ミアも読んでみたいと言ってはいるが、どうもカリンの方はブラウニーさんと話が難航しているようだ。

 

「なにかうまくいかないとこでもあるのか?」

「それがですね、ブラウニーさんが謝礼を受け取ろうとしてくれないんです」

「カリンが全部受け取ればいいんじゃないか?」

「そんなことできません!」


 冗談交じりの提案をカリンは大真面目に否定してきた。

 話を聞くと、本来その本は誰にも読まれる予定が無く、カリンに読んでもらって楽しんでもらえただけでも十分だと思っていたらしい。その上新聞に連載なんて言われてもむしろブラウニーさんがお礼を言いたいぐらいでお金は受け取れないそうだ。

 

 俺だったら喜んで受け取ってしまいそうだが、すごいこと考える人もいたもんだ。

 が、カリンも全額受け取るつもりもないと。それで変なところで難航していたということか。

 

「お金は半分ずつということにして、ブラウニーさんはそのお金で新しい作品をお願いしますって感じで頼みこむしかないんじゃないか?」


 しばらくしてブラウニーさんが折れたようで、もらえるお金については一旦半分ずつということになった。

 ブラウニーさんはもらえる金額が多くなってしまったので申し訳ないような顔をしている気がした。そんな条件で不満顔というのは正直初めて見る。

 

 交渉も終わったということで帰ることになった。玄関までブラウニーさんとミアがお見送りしてくれる。

 

「今日はありがとうね、ミアちゃん」

「ううん、またねカリンさん」


 カリンがブラウニーさんにも一言付け加えたのを見て、俺はそれじゃあまたと言って屋敷を後にした。

 

「色々助かりました、ご主人さま。ありがとうございました」

「まあ、それくらい構わないさ」

「私が喋ってばっかりで意外と時間を使ってしまいましたね、帰ってお昼にしましょうか」

「ああ、そうしてくれ」




 それからというもの、カリンは俺の家での家事と青果店、そして小説の翻訳と3つの仕事を掛け持ちすることになった。

 翻訳作業は自室でやってもらっていて、ペンとインクは俺の昔のものを貸している状態だ。

 しかしながら見る限りでは無理などはしていないようだ。夕食時には青果店での出来事などもいつもどおり話してくれている。

 

「翻訳は順調そうだな」

「はい、おかげさまで。ただ、ストーリーは全体的に問題ないのですが、私の国の特有の言い回しをこっちではどう訳したらいいのかなど、細かいところが少し手こずってしまいますね」


 ふーんと話を聞く。丁寧に頑張っているようだ。

 

「とりあえず数回分の原稿は出来上がっているので、このままいけば大丈夫だと思います」


 ちょっと前の俺だったら、もうそんなにできているのかなんて驚いてたが、今回はなんとなくそこまでできていると予想していた。

 

「流石だな」

「ありがとうございます、ご主人さま」


 数日後、新聞記事の一角に新しい連載小説が始まっていた。

 タイトルは囚われの姫君。著者はブラウニー、訳はカリンとしっかりと書かれていた。

 

「そんなタイトルだったんだな」

 

 朝食を食べながらカリンに声をかける。

 

「はい、以前ブラウニーさんのところにお伺いしたときに一緒に聞いておきました。他にも気になった点も聞いてしまったので、ストーリーはバッチリです」


 そう教えてくれたカリンは自信満々な表情をしていた。

 

 窓の外を見ると落ち葉の舞う季節となっていた。

 見かけはなんとかなっているカリンだが、なんだかんだ忙しいと思うので俺が落ち葉掃除をするかとふと考えた。

 しかし口にはしないことにしておいた。俺がやると言うとカリンに反対されるからだ。

 俺の視線に気がついたようで、カリンも窓の外に目を向けてこんなことを言い始めた。

 

「あ、結構落ち葉が積もっちゃってそうですね。今日出る前に庭を掃いちゃいますね」


 俺の考えをあっさりと見抜き、軽々と自身の仕事に組み込まれてしまった。


「いや、たまには俺が」

「いえいえ、ご主人さま。私は使用人ですから。青果店や翻訳は基本的に後回しです」


 そう言うカリンは食後のコーヒーを淹れ始めた。

 その表情は、カリンを使役している立場で言うのもおかしいかもしれないが、家の新しい仕事ができてなんとなく嬉しそうにしているように見えた。

(ストーリーを進めるも想像以上に「コレあんまり面白くないのでは???」となるも、面白くする技術や想像力はないので投稿する他ない物書き二週間程度の著者の図)

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういうのが良いんだよ [一言] こういうのがとても良いんだよ
[一言] そうですね、下の方と同意見ですが、読んでいて特に気になる点はありませんでした。いきなり物語を書く力が向上するわけありません。どうかこのまま少しずつ書き続けるのもいいんじゃないでしょうか。私は…
[一言] (ストーリーを進めるも想像以上に「コレあんまり面白くないのでは???」となる   分かるわ 書き上げた後でこれなに?ってなることはある でもここまで不快なご都合主義とか無かったし 目に浮かぶ…
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