25 今日の予定
久々の風呂だ。のんびりと湯に浸かり、綺麗にしてしまおう。
雨上がりの直後に来たので普段よりも人が少ない。
俺は目を瞑って壁にもたれかかり、ゆったりと時がすぎるのを贅沢に楽しんでいた。
少しのぼせ気味に風呂から上がり、待ち合わせの長椅子に向かう。
そこには背筋を伸ばすだけではなく、校正本を真剣な目で読むカリンの姿があった。
声をかけずに近寄って見てみると、ところどころページの端がほんの少し折られている箇所がある。
家に帰ったら直す部分を忘れないようにしているのだろうか。
すると俺に気がついたのか、ばっとこちらに顔を向けた。
「ご主人さま!もう!いるならいるって言ってください!」
こちらに気がついたカリンはちょっと驚いたように声をあげた。
深く集中して取り組むといつものように周りの変化に気がつくというのは流石に難しいようだ。
「すまない、すまない。驚かせるつもりはなかったんだ。邪魔をしたら悪いと思ってな」
驚かされたことに腹を立てているのかカリンの少し口が少しとんがっている。
「さ、湯冷めする前に早く帰りましょ、ご主人さま」
「ああ、そうだな」
帰り道、来たときよりも雲はさらに少なくなっていて、月もはっきり見える様になっていた。
「長風呂はどうだった?」
歩きながらカリンに聞いてみる。
「はい、とても気持ちよかったですよ」
カリンは甘い香りをあたりに振りまきながら答えるのだった。
夜寝る前には三冊目の校正を終わらせたカリンが本を持ってきた。
「これで最後か、ありがとうなカリン」
「いえいえ、雨も長かったことですし今思えば丁度良かったです」
「とはいえ確認は明日だな。今日はもう寝ようか」
「はーいご主人さま」
少し伸ばし気味の返事をすると、カリンは昨日と異なり俺の許可を取らずベッドに転がり込んだ。
風呂に入れたから気後れもしなくなったといったところか。
そんなことを思いながら俺はランプを消した。
翌日の朝は綺麗に晴れており、久々に清々しい目覚めとなった。
同じ気分なのか、朝俺を起こすカリンの声もどこか明るい気がした。
朝食時にカリンが今日の予定を言い始めた。
「ご主人さま、今日はやることがたくさんあるんですよ」
朝食が終わったら、お洗濯に行って、多分それだけで午前が終わってしまって、お昼の後は買い出しで…とカリンが予定を教えてくれる。
今まで雨だった分大変だろうが、それとは裏腹にカリンの表情は楽しそうだ。
「やっぱり晴れてたほうが嬉しいか?」
「もちろんですよご主人さま」
カリンは笑顔で答える。
「俺の方はとりあえず校正作業だな。昼には終わると思うから、そしたら一緒に図書館に行って、そのまま買い物も済ませるか」
「承知しました。ご主人さま」
朝食が終わると、おかわりのコーヒーは断って俺は仕事部屋に向かった。窓から入ってくる外の風が心地よい。
しばらくすると、階下からお洗濯に行ってきますねというカリンの声が聞こえた。
俺は返事をして窓からカリンを見送る。
カリンも頑張っていることだし、俺もとっとと確認を終わらせてしまうか。
そう思うと、俺は三冊目の校正本をめくり始めるのだった。
稚拙な文章ながらお読みくださってありがとうございます。
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