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23 雨が続く日に その2

 焼き菓子を食べながらカリンは俺が校正していた本をじっと見つめている。

 

「この本か?」

「あ、いえ、その。気になってしまいまして」


 俺は今やっている内容をカリンに軽く説明した。

 投資以外の仕事も引き受けるんですねとカリンは少し驚いていたようだった。

 このとき、ひとつ思いついてカリンに尋ねる。

 

「この前、図書館から金に関する本借りてたよな?全部読み終わったのか?」

「いえ、三冊読んで、今は手元に四冊目がありますね」


 それに加えて先日から俺が許可を出していた仕事部屋の本も数冊読んでいたとのこと。

 カリンが借りてきた本と棚の本が読めるんだったら問題ないだろう。

 難度としても同程度、もしかしたら校正本のほうが基礎的な内容も多く含まれているように感じられる。

 そこで俺はカリンにひとつ提案をした。

 

「カリン、この校正作業の仕事、お前がやってみないか?」

「えっ?」


 カリンは予想外のことを言われ珍しい声を出す。


「いえ、そんな私なんかが……。それも最近少し読んだだけですし、無茶ですよ」

「いやいや、やってみてくれ。最後の確認はもちろん俺が行うし、報酬も出す」

「そんな、報酬だなんて」


 しばらくカリンの抵抗は続いたが、将来的に働くことになるんだからと説得すると渋々承諾してくれた。

 今まで俺が校正してきたものを見せながらやり方を説明する。

 わからないことがあったら俺に聞くでもいいし、ここの部屋の本も持って良いと付け加える。

 話を聞くカリンは真剣そのものだ。

 

「じゃあそれで頼んだ。そんなに力を入れなくてもいいからな」

「頑張らさせていだきますね、ご主人さま」

「あと、別の仕事ができたから悪いんだがカリンの部屋でやってもらってもいいか?」

「承知しました。それではお茶も下げさせていただきます」


 カリンはそう言うと食器を片付け、本を部屋に持っていった。

 面倒な仕事を丸投げしてしまった形にはなるが、どこかでカリンの役に立つだろう。

 なんとなくそう考えながら、便箋を取り出す。

 さらに棚から住所録を取り出して目的のページを探し始めた。

 

 

 

 新しく仕事を割り振られたからと言って、生活が大きく変化することはなかった。

 夕食は下ごしらえからきちんと行っているようだったし、後片付けを適当に行うこともない。

 

 しかし昨日からの雨で共用風呂に行くことが出来ずカリンは不機嫌そうな様子だった。

 家の風呂は外から薪を焚べる構造なので、この大雨の中では流石に無理がある。

 小雨程度なら無理やり共用風呂まで行くこともあったが、しばらくはおとなしくさせられそうだ。

 ともあれ、なにもないよりかは都合が良いと考え部屋で校正作業を行っているようだった。




 寝る少し前、カリンは俺の部屋にやってきてベッドで寝て良いか聞いてきた。

 別に構わないと答える反面、心のなかでは今更それを聞くのかよと逆に質問したくなっている。

 

 カリンは許可をもらうとベッドで寝転がりながら校正本を読み始めた。

 

「どれくらい作業は進んだんだ?カリン」


 カリンは一度ベッドに座り直してから返事を始める。

「はい、この一冊が終わったところで、今は最初から読み直して確認を行っているところです」

「なかなかの早さだな。明日、俺も確認させてもらうよ」

「よろしくおねがいします、ご主人さま」


 そう言うとカリンはまた寝転がって読み始める。

 態度が良いとは言えないかもしれないが、こういったことをするのは一日の中でこの時間だけだ。

 毎日頑張ってくれてるんだ。大目に見といてやろう。

 

「もう灯りを消すぞ」

「はーい」


 カリンは返事をすると本を閉じてサイドテーブルに置く。

 灯りを消して俺もベッドに横になるが、その時カリンがベッドから落ちそうなくらい端で寝ようとしていることに気がついた。

 

「そこまで端に寄らなくても別にいいんだぞ」


 一応寝る前に声はかけておく

 

「いいえ、ご主人さま。おやすみなさい」


 カリンはそう言うとこちらに背を向けたまま寝たようだ。

 

 

 

 カリンなりの気遣いなのか、あるいは気恥ずかしいのか。

 別に俺は気にしないんだがな。

 

「明日の夜までには雨が止むといいんだけどな。おやすみ」


 窓を叩く雨の音でカリンには聞こえなかったのかもしれないが、まあいいだろう。

 俺も目をつむり眠ることにしたのだった。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

自分が想像していたよりも多くの方に読まれているようで本当に嬉しい限りです。

なろう小説家6日目程度の初心者ですが、いい感じに見守ってやってください。

あと評価の星もたくさんください。120枚集めるとクリアーです。

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[気になる点] 10話で部屋の明かりがガス灯が使われている表現がありますが23話では電気であるとなっています。世界観的にはガス灯のほうが正しいように思うのですがどうでしょうか。 該当箇所を誤字報告し…
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