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18 奴隷商と その1

 町の人に聞けば料理の上達法を教えてもらえる。それを知ってからカリンは様々な料理を作ることができるようになった。

 俺としては嬉しいことでもあるが、ひとつ気になることがあった。

 夕飯を二人で食べている時に少し質問してみた。

 

「カリン、料理を教えてもらうのはいいが、何かしらの対価を渡しているのか?」


 自身が投資家だからということもあり、カリンがどう答えるかに期待した。

 

「いいえ、対価としてなにか渡すということはしたことありませんが、」


 突然の質問に少し困惑しながらカリンは答える。

 

「教えてもらったらきちんとお礼の言葉を言って、後日どんな出来だったかをお伝えしています。そしてその時もう一度丁寧に感謝の気持ちを伝えています」


 これで良かったのでしょうかとカリンは顔色を伺ってくる。

 

「それで十分だ。料理を教えてくれる人たちはお金が欲しくてやっているわけではなく、カリンの役に立ちたいと思っているだろうからな。料理の結果を話してちゃんとお礼を言えれば町の人にも喜んでもらえるさ」


 それを聞くとカリンは少し笑顔になって、『それこそ』ありがとうございますと、ややわざとらしくも俺に感謝の気持ちを伝えるのだった。

 まったく応用を効かせるのが早い子だ。

 

 

 

 翌日の朝、朝食時にドアが叩かれる音がした。

 頼んだと言うとカリンが玄関に向かってくれる。

 しかし、カリンが返事をしながらドアが開けた直後、カリンの短い悲鳴が聞こえ、こちらに走ってくる足音も聞こえた。


「ご、ご主人さま、」


 来客はなんとなく予想できていた

 

「あの、奴隷商の方がお越しになっています」

 

 

 

 さっさと朝食を食べて応接室で待ってもらっていた奴隷商に挨拶をする。


「待たせてすまない」

「いえいえ、お食事中に来てしまい申し訳ありません」


 奴隷商は立ち上がりこちらに挨拶をかえしてくる。

 悪趣味とは言えないまでも、奴隷商は相変わらずなんとも言えないセンスの服装と装飾品を身に着けている。

 

「あの奴隷、話すことが出来たんですね」


 話し相手が奴隷商なのでカリンを応接室には入れていない。

 適当な家事をしといてくれと頼んでおいた。

 

「ああ、一緒に生活を初めて十数日くらいで話してくれるようになったんだ」

「ほ~、なるほど。ということは私めも騙されていたようですね……。」

 

 騙されていたと口にするが、どうにも嬉しそうな表情をしている。

 それまでは全て自分の思い通りだった故、裏をかかれるのもそれはそれでたまには楽しい……といったところだろうか。

 

 

「それでなんですが、旦那様」


 奴隷商は本題に入る。

 

「あの奴隷、どうですか、引き続き手元においておきますか?それとも以前話したとおり、キャンセルして返品なさいますか?」


 奴隷商はこちらの顔色を伺い続けている。

 俺と奴隷商の会話以外聞こえてくるのは外からの鳥の鳴き声と時折通る人のわずかな足音だけだ。

 ということはだ……。

 

「あのとき、キャンセル料については旦那様と私の間で深く話しておりませんでした。一応提示しておきますとキャンセルの場合、旦那様にはこれくらいのお支払いをお願いすることになります」


 キャンセルした場合の契約書に値段を書き込んでいく奴隷商。


「もちろん、この値段はあの奴隷が喋れなかった前提のものとなっております。私が以前から知っていたらもう少し高く設定していたんですがね。今回はしてやられました。私の落ち度ですので金額に含めておりません」


 ここまで形式的に奴隷商は話してくれたが、俺が何を言い出すかは正直言ってわかっていたようなものだったろう。

 

「いや、キャンセルはいい。このまま買い取らせていただくよ」

「さすが旦那様。そのお言葉を期待しておりました」


 そう言って手際よく買取用の書類に書き込みを始めた奴隷商。

 しかし金額のところで俺は奴隷商の手を止めさせた


「ちょっとまってくれ」

「はて、どうかなさいましたか旦那様」

 

 奴隷商が怪訝な顔でこちらを見てくる。

 

「いや、いい買い物だったからな。成功報酬で少し金額を積んでおいてくれ」

「おお!さすが旦那様!」


 これには奴隷商も意外なのかそれともわかっていた上での演技なのか、ホクホクそうな顔をして本来の金額より少し高めの契約書を作成する。


「旦那様、これくらいでいかがでしょうか」

「ああ、問題ない」


 俺としてもちょうどよい金額が記入されたと思っている。

 

「いやあ、素晴らしい取引でしたね。旦那様これから良い関係をお願いします」

「ああ、前までは嫌な顔ばかりで悪かったな」

「いえいえ、そんな昔のこと」


 奴隷商はご機嫌な態度だ。

 そこで俺は一つ頼み事を始めた。

 

「奴隷商、そこでなんだがというのもあれだが、一つ頼みがあって」


 奴隷商は待っていましたと言わんばかりに目を見開くのだった。

ここまでお読みくださってありがとうございます!

アレも書きたいなコレも書きたいなと思ってどんどん増えた結果話を分けることにしました。

もっと減らせる部分もあるとは思いますが、小説初挑戦のみには厳しいものですのでご了承くださいませ~。(評価や感想をいただけると夜な夜な嬉しくて小躍りしてます。小躍りさせてください。)

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