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13 告白

 カリンの奴隷として連れてこられるまでの経緯と、今まで喋らなかった理由が話された。

 今まで喋らなかった理由を大雑把にまとめると妹を探し出したいからだそうだ。

 

 まずそもそもの話、自身を買った人が暴力的だったり人として扱わないような人だったら逃げ出してでも妹を探し出すと考えていたらしい。

 そういったタイプの人でなかったとしても、妹探しに協力的ではなかったら。二ヶ国語を話せると知られると通訳などで利用されることはあっても逃げ出さないようにされるはず。鎖をつけさせられたり、鍵のかかる部屋で寝かしつけられたりなど逃げる機会を失うことは何より避けたかったとも言っていた。

 なるほどな、黙ったままでいることで主人の性格を確かめ、自分の価値も隠していたと。それを自身が買われる前からずっとやっていたと思うと根性はあるようだ。

 

 奴隷商が言っていたように富豪の娘というのは本当らしく、こっちの国の言葉も喋れるのは教育の成果といったところか。

 逆に西方の国の言葉を使える人なんてこの町には一人か二人くらいなんじゃないかと考えると非常に優秀だ。

 

 話の途中、母親はカリンがまだ小さい頃に病死していたと言い、父親はおそらくもう生きていないことを考えると妹が最後に残された家族だと泣きそうな声で打ち明けてくれた。

 

 カリンは最後に、騙すようなことをして申し訳なかったと謝ってきた。

 

「そうか」


 色々思うことはある。妹を探し出すとはいえ俺を騙してきたというのは良いこととは思えない。

 しかし、言葉が通じなかったとしてもカリンの働きぶりに困ることはなかった。

 あるいは、カリンは悪く捉えると俺の人間性を値踏みしていたとも取れるが、情勢が情勢だし味方もいない異国の地で少女が一人で生き抜くとなると仕方ないこととも言える。

 逆に言うと地下牢でも喋らなかったことで、「東方の言葉も使える奴隷」として値段が釣り上がることも避けられたわけだ。

 俺もそれほど無理もない値段だったからという理由もありカリンを買ったと思うと運も良いようだ。

 

 カリンは申し訳無さそうにこちらの顔色を伺っている。

 

 俺は深く息を吸いため息をつく。そんな顔されちゃあね…。

 

「わかったわかった。今まで喋らずいたことについては別に構わないよ」


 その言葉を聞いてカリンは一転、表情を変えた。

 

「本当ですか!?」

「ああ、奴隷以上の働きもしてくれてたわけだ。実際俺の生活も楽にはなったしな」

「ありがとうございます!」

「ただ、妹を探す件についてだが、」


そう言うとカリンは身を強張らせる。


「俺にもできることに限界はあるからな。どこにいるかもわからない妹探しを毎日毎日ってのもできない」


 その言葉を聞いてカリンの表情のかげは強くなった。

 

「ただ、とりあえずあの奴隷商に協力してもらうのが手っ取り早いと思うんだ。今度調べるように頼んどくよ」

「ご主人さま!」


 カリンはそう言いながら突然席から立ち上がりこちらに駆け寄ってきた。


「本当にありがとうございます!」


 そういいながらそのまま俺に抱きついて来た。

 確か風呂の帰り道に過剰な仕打ちを受ける奴隷の姿をあのときカリンも見ていた。

 そんなようなことをされるかもしれなかったカリンからしてみたら安心して緊張が一気にほぐれたのだろう。俺に抱きつき、声を上げて泣いている。

 

どんな言葉をかけていいかわからない俺は、カリンの頭を撫でることしか出来なかった。


ここまで読んでくださりありがとうございます!

評価に一喜一憂する初心者なのでためらいなくガンガン星をつけてくださると嬉しいです!

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