ショウタイフメイ
やっぱり何度見てもこれは現実だ
俺の目がおかしいとは思えない。
目の前の壁には新たに文字が刻まれていた。
〈約束を守ってくださってありがとうございます。私のことを誰なのか気になることを察します。しかし教えることはできないのです。〉
約束とはたぶん誰にもこの壁のことを言ってないことだろうな。
それにしてもやっぱり何か事情があるのかな。
〈お礼と言ってなんですが、ひとつ伝えておきます。あなたは私のことを知らないですが、私はあなたのことを誰だか知っています。〉
え?まじで?
さらに気になってきたじゃねーか。
〈そして、あなたの家族のことも。〉
「えええ?!」
自分が思ってないほど大きな声がでてしまった。
静かなこの部屋に俺の声が響きわたった。
いやいやいや、誰なんだよまじで!俺は眉間にしわを寄せ考えてみる。
高校の参観日にもつれてこないから、そんな高校では知ってるやついないよな・・。
幼馴染の信太郎と担任の先生くらいしかこの学校では知らないはずだけど。
あ、そういや幼馴染といやー栗野雪もだ。
いや、そんなわけはないな。こんな丁寧な文章がやつに書けるはずもない。
俺は再び壁に目をやる。
〈驚いたかもしれませんね。しかしこれは本当なんです。近々、あなたにも話す時が来ると思います。今すぐとはいきませんが。〉
驚いたかもしれませんね、って。まったくなんなんだよ。人の心も読めるってか。はは。
〈それではそろそろ時間なのでまた後日伝えたいと思います〉
「なんだよ、そろそろ時間って。書けばいいことなのに。」
俺はため息をついて絵を壁にかけなおした。
まったくもったいぶる人だなー。
まるでドラマの犯人の顔がわかるって時にCMが入る時みたいだ。
開いてる窓から夜風がふいて俺の肌をなでた。
そうだ、お使い頼まれてたんだ。
早くしないと女3人に怒られそうだ。
俺は軽やかに窓から外に出て、走って正門に向かった。