カベモジ
誤字・脱字がありましたら広い心で許して下さい。
今は美術の時間であり俺にとっては休憩の時間。先生の熱心な指導により,俺は美術室の隣の教室で説教をくらっている。
「拓也くん。そんなに先生の授業が嫌い?高校2年が中だるみの時期なのは分かるけど。」
先生、あともう少し足ずらして!右!
「拓也くん!!」
「は、はい。なんすか?」
「なんすかじゃないでしょ!聞いてるの?」
「聞いてますん」
「あなたね………」
先生の眉間にシワがよっている。相当ご立腹のようだ。しかし俺にはやらなければならない任務があった。
「後で職員室にきなさい。」
「え?」
先生は立ち上がり、綺麗な足はリズムよく歩を進めて俺の視界から離れていく。
「は…………はーい」
俺の首は90度に傾いていた。聞く態度じゃないのは明らかだった。
横に傾けていた首をまっすぐに戻した。
「あー首いてぇ。結局見えなかったな。」
首を回しながら教室を見渡した。隣の美術室とは違いここは旧美術室のような感じだ。古い絵画などがたくさん飾ってある。暇だったから1枚ずつ鑑賞してみた.『モナリザの微笑み』と書かれた絵がある。絵にむかってガンつけてみた。特に顔は変わらなかった。
「それにしても汚い絵ばっかだな。ほこりまみれじゃん。」
壁に掛けてある1枚の絵が目にとまった。1人の女性の似顔絵だった 。油絵のようだ。絵の表面がゴツゴツしている。あまりにもリアルすぎて少し不気味だった。俺は指でその絵に触れてみた。すると額縁が壁から外れて音を立てて床に落ちた。
「やっべ!」
床からほこりが舞った。この部屋が長い間使われていないことを物語っていた。
「うわ。どんだけ掃除してねんだよ。」
絵画を拾い上げた。よく見ると絵の右隅に筆記体が書かれている。名前だろうか。
「読めん。」
絵のほこりを手ではたき同じ場所に戻そうとしたが手を止めた。額縁が掛けてあった部分だけ白く綺麗だった。そこに小さな文字を見つけた。
―はじめまして―
俺の背中に寒気が走った。
まるで自分がこの文字を見つけることを知っていたかのようだった。その彫られた文字に触れてみた。誰かのメッセージなのだろうか。しかしすぐにどうでもよくなった。絵を戻して,もう1度その絵の女性を眺めた。女性の顔はにっこりと笑っていた。俺はチャイムがなったので俺は教室をあとにした。
「で、どうだった?何色?」
「えーーと、ピ、ピンク?かな」
「ピンク??まじかよ!まさか大人の先生が実はピンクとはなぁーーー。」
ゲハハハと下品な笑いでクラスの女子の冷たい目線を受けているのは、俺と同じクラスの信太郎だ。俺たちは正真正銘のエロ男子。特に信太郎はずばぬけてエロかった。エロに関して語らせたらキリがない。つまりは、エロくてその上めんどくさいやつなのだ。
「くーーーそれにしても安西先生ってきれいでスタイルよくて、いい匂いで何よりピンクだもんなーー」と信太郎は鼻の穴が通常の倍大きくなっていた。俺はそんな信太郎を横目に教室の時計をじっと見ていた。
3分くらいは信太郎のトークショーだった。お題は、今までみた安西先生ベストショット。何回聞いたことかと俺は秒針を眼で追っていた。
「・・・そしたら、なんと!!下を見たら見えたんだな!先生のおっ・・」
信太郎はやっと俺の態度に気づいたみたいだ。
「おい!聞いてんのかよ!何さっきから時間ばっか気にしてんだよ!!人の話を聞くときはだなーー」
俺は勢いよく席を立った。
「わり。そろそろ行かなきゃ。俺、安西先生に職員室呼ばれてんだ。」
「え?」
ニコッとはにかみ、信太郎の羨望な眼差しを横目に教室をあとにした。
あんなことを信太郎に言ったものの、俺は職員室には行かなかった。職員室に行けばまた他の先生たちから「またお前か」と言われるのが目に見えていていやだった。だから俺は、屋上に行った。
昼前だからか、太陽は真上にあり俺は目をあけるのが難しかった。まぶしい。
「ねえ、あんた何やってんの?」
後ろから、いや、上から声がした。誰かと思い振り返ると屋上の入り口の上に人影がある。
「よおくそエロガキ」
「なんだお前か。」
「お前ってゆうな。なれなれしい。名前で呼べ」
「んだよいちいちうるせえな。」
栗野ゆきは、俺を見下すような言い方でいつも接する。ある意味今は見下ろしてるのだが。
「あんたも次の授業サボるつもり?」
「もって、ことはお前はサボるの?」
「私のことはいいのよ。あんたよ。いつも女のパンツとかしか見てないあんた。」
「うるせー。女でも俺はきちんと選んでますから。」
「それはそれできもいんだけど」
くっ!しかし何も言えない自分がくやしい。」
「で、あんたは何でここに来たわけ?」
「別にいいじゃん。ただなんとなくだよ。」
「ふーん。あたし、今から寝るから襲わないでよね」
誰が襲うか。栗野ゆきはそのまま寝転がり、俺の視界から消えた。
わけもなく俺は空を見上げた。気持ちのいいくらい真っ青な空だった。少しだけ心が澄んでいく気がした。こうして屋上でフェンスによりかかりながら空を見るのは何回目だろうか。屋上は俺にとって癒しの場所のひとつだ。
この学校の屋上は3メートルのフェンスで囲まれている。だから飛び降りなんて簡単にできる。俺はしない。というか無理。でも実際世の中には簡単に天国にいくやつがいるわけで。
でも誰が天国にいくなんて証明したんだろうか。というか本当に天国なんてあるのか?
ましてや、死者の幽霊なんているのかもあやしい。ま、俺には縁のないことだけど。
「なにぶつぶつ言ってんのよ。きもいんだけど。」
栗野ゆきは寝転がっ状態で俺に向かって言った。
「あ?うるせーよ。てかそんなとこで寝ると焼けるぞ。」
すると栗野ゆきは、勢いよく起き上った。同時にストレートの茶髪が風になびいた。何か言おうとしたがやめたみたいだ。その代り鋭い視線と「地獄へ落ちろ」という意味を込めた親指を下にしたサインが俺にむけられた。そして栗野ゆきは、再び寝転がった。
「そういえばあんた美術の時説教受けてたでしょ?あのあと先生戻ってきたのにあんたどこ行ってたの?」
「別に。暇だったから教室で絵とにらめっこしてた。」
「意味わかんないんだけど。てゆーかあんたの言う暇な時間に皆がしてたデッサンなんだけど、あんた終ってないから夏休みまでにしないと宿題になるらしいわよ。」
「まじかよ!だっる!」
俺は絵を描くのが大の苦手だ。だから夏休みにするのは本当に嫌だった。
「ま、私にはぜーーんぜん関係ないけど。」
はーー。デッサンね。。
「まー教えてくれてあんがとよ。そういや、美術室っていつも開いてるの?」
「開いてるわけないじゃない。誰かに入られでもしたらどうすんのよ。」
「別にとられちゃいけねーもんとかあんの?」
「そりゃあるわよ。絵画とか。いろいろ・・・。」
あーあれか。いや、でもあの教室は使ってないんじゃ・・・。俺の頭のなかにあの絵と壁の文字がよぎった。
「そういえばよ・・。いや、いいや。てかそれなら美術室の鍵貸してよ。確かお前美術部だよな。」
何を隠そう栗野ゆきは美術部部長であり、見たことはないが絵の実力は表彰されるほどすごいらしい。人は見た目で判断するなとは良く言ったものだ。
「いやっていったら?」
このアマ。めんどくせえやつだな。
「わかったよ。明日の昼飯で手をうって。」
「さっすが拓也。そういうところは使えるのよねーー。」
にっこりほほ笑んだ栗野ゆきは上半身を起こしてポケットから鍵を取り出した。
「なくさないでよ。今日も部活あるんだから」
「わかったわかった。なくさねーよ」
栗野ゆきは上から鍵を投げて俺に渡した。
「じゃあ、またな」
「てかあんた。さっき何か言おうとしなかった?」
俺は別にあのことは聞いてもよかったのになぜか聞けなかった。
「いや。また今度にするわ。じゃ」
そして俺は鍵をポケットにしまい、屋上をあとにした。
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