文の魔王の封印
四大魔王
文武両道!
サルシャ姫は魔族の歴史を修正するにあたって、
最重要な事項を書きだしていた。
「ぷるぷる、サルシャ姫様、
勇者様とご一緒なさらなくて、
よかったのですか?」
姫は一度、勇者と共に凱旋したのみで、
その後は魔王領に留まり、今は執務室で、
魔王領の采配を一身に役割果たしている。
「それも悪くは無いけれど、
勇者達の冒険は勇者達が決めることでしょうし、
私が、あれこれ言うのももうこれで終りよ」
「ところでサルシャ様、
さっきから読んでいるその本は?」
「これは、お父様の罪を抜粋してまとめたものよ、
人間に対する罪、魔族に対する罪、
そしてこれから与えられる罰に関しても」
「えっ!?
魔王様を裁かれるので!?」
「ええ、いくわよ、スライム」
「ぷるぷるぷる」
サルシャ姫とスライムは、魔王の間へとゆくと、
一人になってもらった文の魔王の前へ歩み出した。
「サルシャか」
「遅くなりました、
けどもう大体ご存じだと思いますが」
「――――――そうだな」
文の魔王の罪はすでに魔王一人では償いきれない、
とてつもない大きさを持っていた、
また、国家間のパワーバランスで考えても、
単純に処刑して収まる状態でも無かった。
「お父様は封印されます、
これは魔族の明日の為です」
「サルシャ様!?」
「よい、スライムよ、
わしにも分かっていたことだ、
では参ろうか、封印の地へ」
裁けない罪でも未来なら捌けるように、
なっているかもしれない、
まったく法の歪んだ解釈だが、
それでもサルシャにとっては、
「ええ、お父様、参りましょう」
文の魔王は特に拘束されること無く、
サルシャ姫と共に、封印の地へ向かう、
馬車に入り、しばらく一緒に話した。
「お父様は最近何か読まれたので?」
「ああ、読みすぎで眼鏡を換えたくらいだ」
「そう、そうですか、いつか私も、眼鏡が
必要になる時が来そうですわ」
「そう遠くない時期にか?
ふむ?秘書を雇ってはどうだ?」
「そうですわね」
親子水入らずで話すのはいつぶりだろうか?
「お父様はどうして戦うことしか出来なかったのかしら?」
「わたしとて魔王の端くれ、大魔王様の考えが否定されるまで、
人間とは無限に湧き出す神のしもべだと考えていたからな、
ようするに被造物であり、
壊しても良いと勘違いをしてたのだよ」
「女神とお会いになって、考えが変わられたの?」
「あの頃もまだ、女神も祈りを聞き届ける存在だとしか、
考えてなかったな、サルシャが育ってからは、
だいぶ、考え方も変わっていったが」
「お母様を選んだのは?」
「お前の母を娶り妻としたのは、
人間との争いにあきてきたからだ、
人間側の使者に応じて、
人間の巫女である彼女と結ばれたのは、
どこか幸せな時間でもあったが」
「そうですのね、
私が魔族と人間のハーフであることは、
表向きには隠されてますけど」
「そろそろ、時間かな?」
「お父様」
「なんだ?」
「お父様が小説をお読みになったきっかけって
なんですの?」
「・・・それはだな」
二人は、封印の地に降りたって、
その前で会話を進める。
「一通の手紙、
紙飛行機がワシの前に、
舞い降りた事によってじゃ」
「紙飛行機が?」
「これじゃ」
文の魔王は、大事そうに一枚の、
折り目がいくつもついた手紙をとりだした。
「これが」
「では、封印の地へ封印されにいくかな」
「封印の期間は一万年後、
どんな未来が待ってるかはわかりませんが、
ひとえに平和な世界にすることを誓いますわ」
「強く育ったものだな、サルシャよ」
魔王の手がやさしくサルシャのほほを撫でると、
「ではな」
魔王は封印の地に入り、封印された。
こうして、
全ての魔王が、
現世より去ったのだった。




