記憶の限界
誰かの脳は、
誰かの脳につながっている。
考えが働かない、
記憶の限界を迎えつつある。
考えが追いつかない、
僕はもうこの先を紡ぐことは出来ない、
急激に弱りだし、サインを出す脳、
突発的に自己が自我が果てなく底を尽き、
何かに隷属しなければ生きていけない記憶の限界、
先に進めない状況に、改めて記憶をおさらいする。
勇者達は、戦い続けてついに両の魔王を倒し、
そしてその後、人間牧場を解放し、
人間達を無事に自らが耕作する場所を割り当てられ、
魔界においての人間の位置づけが変わりつつあったのだ。
多くの魔族はこれに脅威を感じた、
いままで仲間内での政争や謀殺にかまけていた魔族は、
完全に腐敗しつくしており、圧倒的権限を持っている大魔王でさえ、
異世界に続く巨大なゲート建設に全力を注いで、
今や、この魔界をまともに統治できているものは少ない。
武の魔王は勇者の存在を疎ましく思い、
魔族の為に戦うことを全魔族の前に宣言し、
これを念波に乗せて全魔族に叫んだ。
当然、サルシャ姫の耳にも入った。
「我! 武の魔王は! 勇者に宣戦布告する!
もう一刻の猶予も勇者には与えぬ!
我が軍、我が領土、我が民!
総力をもってして、勇者を撃滅する!」
人間に向けては、
「人間どもよ!
今からでも遅くない! 我に従い!
我が軍門に下れ! さもなくば死あるのみ!」
レジスタンスは、
「今が抵抗の機会だ、
武の魔王の城まで、
案内します!」
「わかった! 急いでいこう!」
勇者達は更なる旅路に向かった。
精神に堪える旅路である。
魔族によるレジスタンスに対する攻撃は増して増え、
加わった人間のメンバーが魔族に傷つけられることもしばしあり、
僧侶が治療してまわるものの、とても追いつくものではない、
これほどまでに追いつめられたレジスタンスを見たのは初めてである。
「一刻も早く! 武の魔王を倒さなければ!」
勇者達の足取りは早い、武の魔王の城に向けて、
レジスタンスが案内してくれた地下通路と、
魔法使いが操る大怪鳥を使って、
あっという間にたどり着いた。
なおも武の魔王の攻勢は続く、
しかし本拠である武の魔王の城についてしまえば、
あとはやることは1つである。
「俺に任せな」
盗賊は武の魔王の宝物殿を探索すると、
即座に流星の双剣を手に入れ、
勇者パーティーと合流した。
「待たせたな」
「盗賊、あとは武の魔王と戦うのみだな!」
「やるじゃない! これで確実ね!」
「あの、ちょっと不安です」
「大丈夫よ、あの記述どおりなら勝てるわ」
勇者達は相変わらず順調に戦い抜いている、
これも道の魔王の残した情報があったからである。
かなり卑怯な気もするが、それは魔界、
手を選んでいては勝利は遠のいてしまう、
ただ、単調な戦いの運びに、
いやがおうにも記憶が弱っていく。
記憶の限界が近づいてくる。
何のために戦ってきたのだろうか?
「それは魔族の歴史を修正するため」
長の月、人間無限論をとなえる大魔王の支配下、
であった魔族たちは、完全に、人間を資源と考え、
その浅ましい行いに人々は怒りに震えていた。
今、その歴史が修正され、人間の歴史が、
始まろうとしている、この魔界でも、
そして人間界でもである。
それは確実なのに、
「サルシャ姫、考え事? いくわよ!」
魔法使いにうながされ、
サルシャ姫は我に返った。
勇者達さえ保つのに手一杯、
更に弱っていく文筆、
この先に待ち受けるのは?
断筆か?




