サルシャの超能力
燃えてしまったものは、
仕方がないとして、
果たして?
「なんてことなの」
サルシャ姫は燃えカスとなった魔王の間を見て嘆いた。
「サルシャ様、ぷるぷる」
スライムは悲しんだ。
魔王城は静けさに包まれていた、
文の魔王は自らの本に火をつけられて燃え盛り、
その炎で今や瀕死の重傷となっていた。
「お父様」
「魔王さま」
「おお、サルシャか」
包帯グルグル巻きの魔王は口を開くと。
「我は小説が読めぬのが何よりつらい」
(お父様、まだ小説が読みたいだなんて)
サルシャ姫は何よりも、
自分の書いた小説の通りに、
父である魔王が燃えてしまったことに、
罪の意識を感じていた。
(わたしが小説家になりたいだなんて言ったから)
サルシャ姫ははやくも小説家の夢を、
諦めかけていた、
だって誰が想像できるだろうか?
少し突飛な展開を書いただけでも、
それが現実となり、不幸が降りかかるのだと、
サルシャ姫の魔力がそれを成し遂げてしまうのかどうかはわからない、
どちらにしてもこの呪いともいえる力をどうにか、
封じ込めなければ。
「サルシャ様、お気をしっかり持ってくださいねぷるぷる」
「スライム・・・・・・そうね、そうよ!」
サルシャは筆を取ると、静かにまた何かを執筆し始めた。
そこには元気になった魔王と、
付け火をしたことで有罪となった勇者達が投獄された、
様子が書かれていた。
「これでよし、と」
サルシャの未来予知にも似たその能力は発揮された。
「どうして、どうして俺たちが有罪なんだよ!?」
「そうよわたしたちは魔王を討伐しようとしただけなのに!!」
「そうよ!付け火じゃないわ!戦いに付け火もなにもないのに!」
「絶対におかしい!魔王に痛手を負わせた俺たちが
英雄でなくて泥棒扱いだなんて!!!!!!!!」
勇者達は数々の盗みを働いた罪に加え、
文の魔王で知られる魔王は、
あらゆる作家賞を総なめにする作家が、
卵だったころにいち早く、
貴重な感想を届けた第一人者としてその名を知られていた故に、
魔王を倒すことは各国にとって罪となったのだ。
「そんなの本を読まなきゃわかるわけがないじゃないか!」
永らく冒険の旅に出まくっていた勇者たちは、
文学界のことに精通していない故に、
その微妙なパワーバランスを理解していなかった。
魔族に本が売れない時代が長続きしてる理由は、
ひとえにその識字率の低さにあったが、
文の魔王が本を読むことを始めたことで、
魔王城を中心として、本を読む文化が一気に花開き、
文の魔王を中心とした読書週間が、
魔族界における文学文芸シェアを押し上げ、
上級魔族の間でも人間界の本が取り扱われるようになった故に。
文の魔王は国の王から表彰されるほどの存在だったのだ、
あれだけ凶暴だった魔王が小説の力で矯正された、
人間の文化を認めたことで一気に平和賞を与えられるほどの、
賢王として名高くなっていたのだ。
当の本人は小説の感想を書きたかっただけだけれど。
「くそっ皆、魔王のヤツに騙されてるんだー!!!」
辺りに勇者達の叫びがこだまする、
彼らは引き起こした数々の罪から、
牢屋に投獄され、
その罪を償うことになった。
「さてと、うまくいったわね」
サルシャ姫は自らの書いたシナリオどおりに、
事が運ぶのをみると安堵した、
「でもこれからどうしましょうか?
小説を書くのやめちゃおうかしら?」
「えっ
サルシャ様のお話はとっても面白いのに
ぷるぷる」
スライムはすっかり小説の虜になっていた。
「とりあえず突きとめないといけないことがあるわ、
明日、お父様に頼んで、お許しをいただかないと」
「サルシャ様?」
サルシャは静かに作業台から離れると、
「お休みになられるので?
おやすみなさいサルシャ様」
寝室に入り、静かに一日を終えた。
サルシャの行く道に、
幸多きことを。