道の魔王の支配力
おっと?!
「ふふふ、すべてこの小説の通りになるのだ、ふふふ
小説の通りになる、小説の通りになる、はずが、何故だ?」
道の魔王は勇者達の猛攻によって倒された。
「なぜ! わたしが! 負ける!?
勝利の小説が描かれたというのに!
勇者達を倒す小説が!
大魔王さえすべて始末する小説が描かれたっていうのに!
何故だ―――――――――!!!!!!」
「何言ってんだあの魔王?」
「サルシャ姫の能力の話かしら?」
「でもどうしてサルシャ姫を操れなかったんでしょうか?」
「あの姫さんのことだ、どうせろくでもないことだろう」
「ぐっ勇者どもも、無傷!
どれ一つをとっても小説の通りに行かないではないか!
これはどういうことなのだ!?」
「理由が知りたいのかしら?」
「さ、サルシャ姫!」
魔力を失い、完全に魔王としての格が砕けた今、
サルシャ姫にしていた支配の魔法も完全に解けたようだ。
「念のため、私の解呪の魔法を!」
「ん、ありがとう僧侶、で、
知りたいの知りたくないの?
道の魔王?」
「くっ教えてくれ!」
「わたしは先に小説で書いていたのよ、
わたしが支配の魔法にかけられた場合、
この能力は発動しない、ってね」
「なっなんだと!?」
「おかげで貴重な情報を知れたわ、
各魔王の弱点をね、大魔王のことは、
さすがに割愛したみたいだけど、
まあ、ペラペラペラペラと、
長々と話してくれたわね」
「あ、ありえないー!!!
この私がそんなことで敗れるなど!」
「油断し過ぎだぜおっさん!」
勇者はもはや魔王としての覇気も何も微塵も感じられない、
道の魔王に対して言い放った。
「ばっ馬鹿な!?」
「わざわざ、無防備に魔王の間まで通してくれた時は、
何事かと思ったけど、なるほど、こんな小説を、
サルシャ姫に書かせていたわけね」
魔法使いと僧侶はサルシャ姫が書かされた小説を吟味した。
「うわー私たちが罪もない人々を殺すだなんて!」
「なによりも、この小説、大魔王のところ、
気が抜けすぎてるぜ? さすがにてめえの上司が怒るとこだろ」
「ぐっぐおおおおおおおお!」
道の魔王は最期の力を振り絞って、自らの恥を、
自らに与えられた恥辱を晴らすべく、
勇者達に突進していった!
「お前たちが! あんな話をしていなければー!!!!!」
「成敗!」
勇者の剣がひらめくとき、魔王の首が飛び、
その命は果てた!
「なんのことは無い魔王だったな、なあ姫様?」
勇者は、サルシャ姫のほうに向きなおる。
「皆さま、よく、ここまで戦い抜いたものです、
ちらとでも疑わなかったのですか?
私が書いた小説によって操られているのかもと?」
「まあ、操られちまってたらその時だし」
「それに、現に人殺しは免れたわけだしね」
「まあお姫様のことは、すこし不安でしたが!」
「姫さんのこと許したわけじゃねーけどな」
「皆様……ありがとう」
サルシャ姫は勇者がタイミングよく助けに来てくれたことに、
心の底から感謝した。
何より自由がきかない中で、勇者を、
魔族を人々を虐殺してしまう小説を書いてしまったことに、
心労を募らせていたのだ。
「あっ」
「姫様泣いてるー」
「泣かないでください」
「まったく世話が焼ける」
有難う、ただ有難うのみが、
勇者達とサルシャ姫の絆を確かめさせた。
なにもかも、
思い通りとは、
行きませんでしたね。




