宿敵、勇者軍団!現る!
勇者達は持前のスキルで、
ここまでやりくりしてきたプロフェッショナル。
何のプロフェッショナルかって?
魔王退治さ!
勇者達は、仲間の盗賊のお得意、侵入スキルで、
モンスターに全く出会うこと無く、
魔王城に到達し、
その中の魔王の間までパワーを温存して、
たどり着くことが出来ました。
「王様はさんざん、魔王は強いと煽っていたが、
なんのことはない、緊張感ゼロの城だったぜ!」
勇者は自分が盗賊のおかげで侵入できたことを、
まったく意に介さず、自らの働きを誇ってみせました。
すると魔法使いと僧侶は、
「そんなことよりあのうずたかく本で作られた玉座こそ、
魔王の玉座に相違なく、座して本を読んでるのが魔王なのでは!?」
「そうよ!あのいかにもいかつい顔してラノベを読みふけっているのが、
魔王に相違なく、確実に倒すべき魔王なのよ!」
魔王は勇者達があらわれたことも意に介さず本を読み、
感想文をしたため、これを宛名と住所を書いた封筒に込めて、
丁寧に小説をしまい、またとりだして読みだす事を繰り返していた。
「大胆不敵なやつだ!この勇者を前にして、
何を読みつづけられるというのか!
成敗してくれん!」
「待つのよ!勇者!」
「どうしたの魔法使い?」
「きっとこれは絶好の機会!
あの感想文と小説の山!
何か思いつかない!?」
「おれは盗賊だが、ああいう詰み方はよくない、
しいて言うなら火をつけるのには最適だな」
「!!」
勇者達は納得した。
そうだそうだ燃やしてしまおう、と、
ひそひそと話し始めたのだ。
そうなると早かった、
勇者達は共謀して、
魔王の間にある本棚という本棚を倒し、
あらゆる本を地面にぶちまけた上に、
盗賊の持っていたポリタンクの中の灯油を辺り一面にぶちまけて、
魔法使いは詠唱を始めると。
「ファイアーボール!」
火の玉が本の山の上で弾けて、燃え始めた。
「やったぜ!凄い火の勢いだ!
って野郎まだ本を読ん出やがるぜ!
このまま焼け死んじまいな!」
「勇者! ここは一旦退きましょう!
魔王は勝手に焼け死ぬはずよ!」
と僧侶に言われたとおりに、
勇者一行は、魔王城を後にした。
残された魔王は・・・・・・
「む、この小説はなかなか書き出しが魅力的ではないか、
さっそく感想を書いて送ってやろう、
む、紙が無いぞ、というよりすぐ燃えて無くなってしまう、
おい、だれか、手紙用の紙を持て、
これでは我の感想を、感動を伝えることが出来んではないか」
「魔王様―!!!!!」
「部下か、なにやらぼやけて見えにくいな?
む? 何を持っている? ホース?
こちらに水を掛けるというのか!!!!
やめんか! 本が濡れる!」
「それどころじゃないですー!!!!」
魔王の部下たちは魔王が本の山で今まさに燃え盛っているのを見て、
大慌て、一方の魔王は意にも解さず本を読み漁ろうとしていた。
「くっ老眼が進みすぎたのか?
前がちらついて読めんぞ、
これでは感想文さえ書けんではないか!
レビューをつけねばいかんのだ!」
「魔王様―!!!!」
魔王の配下たちのこえが虚しくこだまする、
いまや本の山だった場所は火の山、
魔王の命は危うい煙の中に包まれて、
本の山で作った玉座は完全に収まることのない火で包まれていた。
「読めん、読めんぞ、煙が目に染みる!
あっワシが燃えてるから本が読めんのか!
というよりも燃える本とは!
人間め、なんという本を作り出すのだ!
これは感想文をしたためなければなるまい!」
「魔王様―!!!!!」
魔王は完全に小説投稿サイトと、
炎に呑まれてしまっていた。
「姫様―!!サルシャ姫様―!!」
「どうしたの騒々しい!?」
魔王の娘である姫がこのことを知ったのは、
出火から大分たった後の事であった。
燃えゆくもの、気付くもの、
色んなものを乗せて、
地球は廻っている。