ゾヌーぶらり砂漠旅~四天王の手紙を添えて~
四天王の実力は未知数ですけど、
暴虐竜あっさりしてましたね。
魔王軍によって暴虐竜グロンベルグの解体が行われ、
その巨躯を誇った竜はたちまちのうちに該当部位に分けられ、
大きな馬車に引かれて行って、
四天王のいる魔王城へと納められた。
それぞれの四天王は言葉を発した。
カラバルバは、
「なるほど、確かにグロンベルグは討ち取られたか」
と、
ロカンカンは、
「だが奴は四天王に入りそこなった、ただの暴虐竜よ」
と、
ジゼルファは、
「こやつを倒しただけで、
四天王に匹敵するなど考えないことだな」
と、
ジャンドヒは、
「姫様はどこまでも甘いお方だ、
爪が甘い、たかが竜退治ではないか」
と、
それぞれ一言述べると、
四天王の間に戻った。
「あいつら、こっちの苦労も知らないで、
好き勝手言ってくれたものね!」
魔族のものが記した手紙でこの一連のやりとりを知った、
サルシャ姫は手紙を折りたたんで、しまった。
「破り捨てないんだな」
「当然よ、言質はちゃんと残しておくべきものよ!」
「感心、感心、姫様はものがわかってらっしゃるのね」
「何よ魔法使い、その言い方は!」
魔法使いに食ってかかるサルシャ姫だったが、
「まあまあお二人とも仲良くいきましょうよ、ね?」
僧侶に諌められ、二人は互いに背を向けた。
「で、次のヤツな、なんだっけ?
名前は?」
盗賊に訊ねられ、
勇者は言う、
「たしか、死霊使いで」
魔法使いは言う、
「リッチで」
僧侶は言う、
「マサシンド!」
盗賊はそうだった、あーそうだったという形相で、
「そうそう!リッチのマサシンドだよ!
確か知恵の宝珠を持ってるって言う!」
「あらあら、人間にしては大した記憶力じゃない、
褒めてあげるわ、ほほほほほ」
「何よ?」
魔法使いとサルシャ姫の怒りがぶり返さないうちに、
勇者一行は歩みを進める。
砂漠を渡る生き物、ゾッヌに乗って。
「へーこの動物、ゾッヌっていうんだー」
感心してみる魔法使い。
「ゾッヌって言いにくいな」
「ゾヌーでいいんじゃない?」
「それ採用! ゾヌーって呼びましょう!」
「やれやれゾヌーとやらは乗り心地が最高だね」
勇者、魔法使い、僧侶、盗賊は口ぐちに、
新しい旅の仲間、ゾヌーの群れのことを話すが、
「皆の衆! ゾッヌは由緒正しき血統の生きものよ!
砂漠の民はみなこのゾッヌを乗りこなしてこそ、
一人前と呼ばれるんですのよ!」
「だからゾヌーっで良いってば、熱いんだから、
何回も言わせないでよ」
魔法使いは目深にかぶった帽子をパタパタさせて、
「許しませんわ!
ゾッヌはゾッヌと歴史が定めているのですから!」
歴史に人一倍うるさい、サルシャ姫から目をそむけた。
「なんですの?! その態度は!」
「はいはいお二人さん、お熱くなるのは夜にしてくれよ、
真昼間からおっぱじめるのはよくないよ」
「盗賊さん、やらしい」
僧侶はこの砂漠の熱のせいか赤くなって、
「で、このゾヌーでどこまで歩くんだい?」
勇者は相変わらず呑気だ。
「だからゾッヌですって言ってるでしょ!?」
実を言うと勇者パーティーには同行しているスライムがいるのだが、
なかなかアツさのせいで、壷の中から出れないでいるのだ。
また従者もゾヌーの群れを従えてついてきているので、
さながら大キャラバンといったところでゾヌーの行商人みたい。
「ゾッヌですわ!」
「ゾヌーよ!」
こんなことで、砂漠の敵、
リッチのマサシンドに勝てるのだろうか?
遠いオアシスの宮殿で、
水晶を眺める影が一つあった。
「ククク、サルシャ姫は来なさったか」
他ならぬ、リッチのマサシンド、
果たしてかの敵の実力やいかに?
続くよ。
遥かな冒険はまだ始まったばかりなのか?
困っちゃうなあ、もう。




