VS暴虐竜グロンベルグ
竜退治なんて!なんて不謹慎なんだ!
姫は引き続き、その力について説明した。
「かの天使が竜を殺したときにつかった、
槍の一つと言われているわ、
この槍があれば理論的には、
ありとあらゆる竜が殺害可能になるの」
「へーそうなんだー、
で、なんでお前さんらが、
竜を殺さなかったんだ?」
「それは、
神の祝福を受けた人の子にしか、
これを使いこなせないからよ」
そう言うと姫は槍を盗賊に託した。
「祝福を受けた人の子っておれじゃないの?」
勇者は心外である。
「人の子ならだれでもいいのよ、
どちらかというと器用な人に使ってもらいたいわ」
「まあ順当だわな」
盗賊は槍を身構えると器用に両手で操ってみせた。
「それで、どうやってあのマグマたぎるような、
間欠泉噴き出す、暴虐竜グロンベルグに近づくの?」
「わたしとあなたと僧侶で多重結界を張れば、
もう怖いものなしよ、楽勝のクエストね」
「!?」
「どうした盗賊!?」
「あれをみろあれを!」
暴虐竜グロンベルグが眠っている前にある祭壇に、
駆け出した一組のローブの魔族たちがいた!
「大魔王派の連中ね!」
「一体、何が目的で!」
「!?まさか!!」
サルシャ姫が察するや否や、
魔族たちは詠唱を始め、リーダーの男がこう言った。
「おお!我らが暴虐竜グロンベルグ!
我らの命と引き換えに!
今こそその眠りから目覚め、
人類を! そして裏切り者に血の制裁を!」
!爆発!
「くそっ!どうかしてやがる!!」
魔族一組の自爆はグロンベルグの息を荒くさせるに充分の、
効力があったのか、
グロロロロロロロロロ!!!
「目覚めやがったっていうのか!?」
暴虐竜グロンベルグは大きな鳴き声と共に、
すっくと身を起こして、あたりに、
噴煙がごとく息を噴き出した!!!
グロロロロロロロロロロー!!!!
「多重結界!」
魔法使いと僧侶とサルシャ姫による、
多重結界がはられると、
こちらに気付いたグロンベルグの炎が一行を襲った!
「ぐっこのパワー!!
これが旧王都を焼き尽くしたっていう炎の力なのか!」
結界の力で炎は遮られるものの、
その熱と轟音は辺りを覆い、
グロンベルグはシルエットでしかとらえられない!
「何度も防げないわ!
それにここでグロンベルグを逃がせば、
何もかもお終いよ! 決着をつけるのよ!」
「おうっ!!」
掛け声とともに飛びこんだ一行は、
結界の障壁の力も利用して、軽く浮遊しながら、
ステップを踏み、そのステップをグロンベルグが焼き尽くしを、
繰り返しながら、グロンベルグののど元まで近づいた!
「今よ!」
「せいやあ!」
盗賊の手から一本の槍の突きが放たれて!
がっ!
グロンベルグの尾がこれをはじき返した!
「ぐおああー!!!」
「盗賊!」
多重結界の薄まったところで攻撃を仕掛けた盗賊には、
ひとたまりもなく、派手に吹き飛んだ!
「勇者! 槍を取りに行くわよ!」
「でも、炎が! きゃっ!」
圧倒的な炎の量を誇るグロンベルグの息は確実に、
勇者一行を焼きにかかる! しかし!
「槍なら投げてよこすぜ! ほらよ!!!」
盗賊が最期の力を振り絞って槍をこちらに投げてきた!
「勇者!」「勇者!」「勇者!」
「受け取ったぜ!盗賊!
喰らいな!暴虐竜グロンベルグ!
オレの!槍をぉぉぉぉぉ!!!!」
勇者の力は示され、その前につきだされた槍によって、
グロンベルグの喉元から溢れんばかりの血潮が噴き出し、
そして大きなうろこの隙間から炎がいくつも走ると、
グロンベルグの炎は体内へと逆流を始め、
胴体部分で炸裂した!
「やったぜ!」
暴虐竜グロンベルグはこうして勇者一行の手によって屠られた。
遂に倒してしまった、とほほ!




