大魔王討伐の為の足掛かり
魔王の娘が大魔王を倒すのは、
本当にいいことなのだろうか?
一行は一晩の宿になんとかたどり着いて、
魔族領での作戦会議を始めた。
「まず魔界への門を確保しなければならないわ
その門を得る方法は、我が魔王軍四天王が知っている」
四天王の名はそれぞれ、
カラバルバ、
ロカンカン
ジゼルファ、
ジャンドヒ、
どれも最強と名高い才覚誇る四天王だ。
「でも四天王も簡単には教えてくれないでしょうね」
「そうね、魔法使い、彼らは自分より強いものでなければ、
絶対に認めないでしょうね、そのためには」
「より強いものを倒して、首をあげればいいんじゃないか?」
「御明察、勇者」
盗賊が持っている魔族領の地図をサルシャ姫が覗きこむと、
指差してみせた。
「そこに何があるんだ?」
「魔王軍の秘密兵器にして、
一度戦いはじめたら手を付けられない、
最強の竜、グロンベルグの根城よ!」
「グロンベルグ!?」
勇者は恐れおののいた。
「私、知ってるわ、そいつは、
旧王都を焼き尽くした厄災の一つにして、
未だ誰も傷をつけたものがいない、
暴虐竜グロンベルグ!」
「実在したのね!
伝説の一つだと思っていたわ」
僧侶は目をむいたまま皆を見回した。
「そんなやつと戦えっていうのかよ!」
盗賊は大ぶりなリアクションで話を確認する。
「俺たちに出来るわけが」
「安心して、
策はあるわ」
サルシャ姫は語る。
「どうして今の今まで、
暴虐竜が目覚めずにいたのか?
理由は簡単、彼は眠りにつくほどの、
捧げものの数々に満足しているからよ」
「捧げもの?」
「竜が好きなものと言えば決まっている、
黄金に宝石、そしてお酒、
度数の飛びきり高いアルコールが、
かの暴虐竜を眠りにつけている限り、
この戦いは一方的なものに出来るのよ!」
勇者一行はうなった、
「それなら勇者の剣で倒せそうだな!」
「ただ、暴虐竜グロンベルグを倒して、その首をあげただけでは、
四天王は満足しないでしょうね」
「まだ他にやんなきゃならないのか?!」
気が抜けてしまって落胆する一行は、ちぇっと舌打ちをうつ感じである。
「死霊使い、
リッチのマサシンドから知恵の宝珠を奪わなければ」
「また大層そうな輩が出てきたな、
その知恵の宝珠とマサシンドってのは、
どれだけ値打ちのあるものなんだ?」
盗賊は地図をテーブルに広げると姫に促した。
「やつは砂漠のオアシスに住んでいるわ、
従えた死霊の数、十万人、
魔王軍の中でも一、二を争う名軍師よ」
「賢そうな奴は苦手なんだよな」
と勇者、
「でも大丈夫、
奴は闇の属性を持っているから、
懐に入ってしまえば勇者の剣と、
僧侶の大祝福で有利に事が運べるわ」
「とにかく、その二体と戦ってやればいいんだな?
そいつら罪は充分に抱えてそうだし、
俺たちが処刑するには申し分ない訳だろ?」
「ええ、今まで誰も罰することが出来ないから、
現在の座を手に入れた存在達よ、
彼らを倒したことによって、
私たちの地位はもっと確かなものになるはず、
そうなれば、大魔王だって放ってはおかないでしょうね」
「向こうから来てくれればこっちのもんだぜ」
勇者は鞘に入ったままの剣を構えると自慢げに見せた。
「じゃあ今晩はこれでお開きね、
明日から忙しいわよ」
「おー!!!!」
勇者一行は遅い晩ご飯を取って、
その一夜の英気を養った。
次の敵は暴虐竜グロンベルグと、
リッチのマサシンドである。
暴虐竜と死霊使いリッチ、
どちらも強敵のようだが?




